たまに、拍手小話で書いていた高校生パラレルの断章。どんな話だったかな、と思われた際はこちらからどうぞ。




As far as I can see


エスカレーター式の一貫校なんてモノであるココの卒業式は2月末にあったりする。卒業式の後の何日か、妙にぽかんとしたとしても春先で浮かれた気配の残る何日かを過ごして、戻された答案やら追試やら補習の発表やら、自分には一切縁のナイことが滞りなく終われば終業式がやってきて春休み、な今までであったのが高校に上ってからソレにヒトツちょっとしたアクセントがついた。
幼馴染の惚れた相手の誕生日がその間に挟まったのだ。
屋上の定位置でフェンスにもたれかかって若気の至りの象徴をくゆらせてみる。ちりちり、と紙の焼けていく音が妙に、
「んー、センチメンタルってか?」
けら、と一人でわらった。
さっきまではトナリをさんざんからかっていたのだ。妙に、清々しくてぽっかり空いたスペースが落ち着かない。

『あのヨ、誕生日なンだから惚れてるとこの百や二百くらいさらっと出てくるだろ』
きっぱりと、メールなんてモンは面倒でキライだ、と言い切るアナログなヤツは
『あン?』
負けん気を起こして、キライなはずのケイタイメールを打っていた幼馴染が手を止めた。
『―――めんどくせえ』
『打つのがだろ』
『アタリマエ』
『じゃ、書け』
『―――う、』
にや、と。笑いを浮かべたのは自分だった。
面倒くさそうに、それでも手を突き出してきたのは幼馴染だった。
しょーがねえなー、とポケットからRHODIAのメモパッドを取り出すと投げ与える。
ついでにペンもだ。
何のカミサマがいつ降りてきてもいいように、ペンとメモはケイタイしてる。それこそ、自分だって2世代前並かもしれないが。やはり、キィを打つよりペン先に『カミサマ』連中は降りて来易いように思えるからだ。

ペンを片手に幼馴染が眉根を思い切り寄せていくのを面白がって眺めていたのはモノの3分ほどで、つい口を出した。
『おーい。マジで浮かばねえのか??おまえそれでダイジョウブ??』
『うっせェな、いま考えて……』
『だぁからー、考えるモンじゃねえだろってオレは言ってンだっての』
『眼だよ眼!』
半ば自棄めいて言ったゾロに、へえ?と笑う。
『眼だけー、』
『じゃあ右目もだ』
『どこの初等部だよおまえ』
『うるせ、』
『ああじゃあアレか?左目もいっとくか?』
『アタリマエだ』
『うーわ!』
大威張りで返されて。いっそ清々しいってな、おまえ!と笑い。

声の発展系で笑い声だの怒鳴り声だの(これも気に入ってるってンだからまったく恋愛ってのはオモシロイもんだ)寝惚けた声だの出てきたりもし。
そんなこんなで結局101まで書き出し、10枚ばかりメモを破り取ると幼馴染はあっさりといなくなったのだ。
『アトデナ』と言い残して。
あと、大体8時間後くらいに幼馴染とその惚れた相手と仲間とで集まって大騒ぎをするわけだ。いつも両親の留守がちな幼馴染の家で。

「―――お、」
ふわ、と唇に笑みが上る。
落した視線の先、ギリギリまで軽量化した洋モノの単車が門を出て行った。
当然、アイカタも乗っけているわけだ。
ここにいても、何かギャアギャアとやりあっているだろうってことがわかる、肩の具合で。
それが可笑しくて、くく、とまた笑う。

「お!!エーースーーーーー!!!!」
ばーん、と勢い良く背後で扉が開く音が響き。その音に負けずとすぐにまた同じ声が追いかけてきた。
「へーイ!アニキ!なんだよアニキだけか?!」
「おー、わぁるうござんしたネ、オレだけだっての!」
飛びついてきたオトウトの首を腕で挟みこみ、オトウトのカノジョに眼をあわせる。
「ひさびさにコドクってヤツに浸かってたのにナ?」
そして、けらけらとオトウトとそのガールフレンドが笑い始めるのを眼の端に抑えたままで空に眼をやった。

果たしてあの101個のプレゼントの三分の一はオレからのなんだけどなァ、と。
あの、気が強いくせに妙に優しい『ダチ』は。コイビトからの言葉とトモダチからの言葉の差に一体いくつ気がつくだろうね?と思い。
感謝しやがれゾロめ、と幼馴染に向かって頭の中で舌を出した。
以前、ジョウダンめかして言ったように。
自分は性質の悪いことに片思いが好きなのだ、要は。
「つか、しょーがねえよな。ずっとつるんでンだしな」
さらっとこの結論をだしたのはもう何年も前のハナシだ。

「やー、今日はすっげイイ天気だよなあ、」
そう言ってみた自分に。ハ?とオトウトは首を傾け。けれど。
「おーう、だってサンジの誕生日だもんな!」
と、これまたナゾめいて大威張りで答えてきた。
そして、さしあたってそれに反対する材料は、手持ちゼロなのだ、なにしろ。
惚れてる相手が惚れてるニンゲンの誕生日が、『カミサマ』からエコヒイキされたって何の問題もナイ。



















――――As far as I can see---------