Say Thousand!


「千のつくもの!」
ばばん!とラウンジの扉が開いた。 こんなこといきなり言い出すのはこの船では決まっている。
「は?」
「だから!“千”のつくもの言ってみろ!」
「いったいなに言い出すんだか、このクソキャプテンは。俺は忙しいんだからよてめえと違って。 勝手にやってろ、オラ」
ひらひらと、と手を振るが。
「サーンジー」
「うっとーしいっつうの!ヤロウがなつくなっ」
「もう。ルフィやめてよ。怒ってるじゃないサンジくん」
ナミがみかねて声をかけるけど。実はサンジが自分用の 時の紅茶を淹れているからだったりする。

: 「なーあぁー。せーんー。さーんじぃぃー」
「じぃぃ言うなッ!!っとにうぜぇなてめえは!!千枚にオロスぞ?!」
「おおお」
ぱっと離れ。
「なるほどな!」
ぽん、と手を打ったりして。
「あんた、なにがやりたいの?」
「つぎはナミだ!」
「ウソップ、あんたやんなさいよ」
「おあ?!」
襟くびを捕まえられて、テーブルに引き戻された。
「俺ァ逃げてたんじゃねえぞ!!」
「はいはい」

「じゃおまえでもいいや」
にこにこ顔の船長。
「千がつきゃいいのか?」
「ん」
「そんなのおまえ、千枚通しだろ、千切りに、」
「オイ、それ言うなら千六本もあるぞ」
いきなりサンジ参加、即離脱。
「あぁーとそれから千人針、」
「あんたいったいいつの人間よ?」
「うるせ。えーと、千人針に・・・・」
「千一夜物語」とナミ。
「おお。それもあったな、えーと・・・」

キィ、と扉が開き。 ゾロが入ってきた。 サンジと目が合い。 横にやってくる。 思いがけず盛り上がってる一角をみやり
「なにやってんだ?あいつら」
「んー?さぁ。わかんね。千がどうとか。」
「なんだそりゃ」
「さあね。酒?」
「ああ」
「んじゃ、おまえもあっちいって座ってろ。どうせもうすぐ 3 時だし」
ナミの前にカップが最初に置かれ、それぞれが定位置に落ち着く。 ゾロの前には赤ワインの注がれたゴブレットが最後に。
「でも、ありそうでないわね、千のつくものって」
クッキーをつまみながらナミが言った。


「改めて言われるとでてこねえんだな、これが」
「そうだろ!!」
「なんでおまえが威張るんだよ」
「・・・り」
「あ?」
ぼそ、と言われたその単語に。
ひくっとサンジの口角が引きつったのをナミは見逃さなかった。

テーブルに空のゴブレットを置いたまま、ごちそーさん、とひら、と手を動かして
ゾロは外に出て行き。
「なあいまゾロなんて言ったんだ?」
「ああ、千人斬りっていいやがったんだよ、」
あのクソバカエロ剣士、小さく呟きサンジが席を立ち。

「それ新しい技か何かか?」
「いやそうじゃねーだろって」
つっこみ入れるも心なしかウソップ赤面。
不敵なにやり笑いを浮かべ、ナミは細身の背中を見送る。


「で?てめえはソレ目指してんのか?クソ剣士」
刀の柄でサンジの蹴りを受け止めたまま、ゾロはしれ、と返し。
「アホくせえ。数えんのなんかとっくにヤメタ」
とん、と軽く足を押し戻す。
「余裕ぶっこいてやがんな?」
「雑魚入れたって5、600だろ、せいぜい」
ん・・・?話、微妙にズれてねえ?サンジはちょいと瞬き。

「おまえそれ」
「千人斬ってやっと一人前、ってことだろ」
「いや、ある意味そうだけどよ、おい」
こいつってやっぱバカだったのか?マジか?天然?サンジの思考はそっちに飛んで。
「だからって何でてめえのケリくらわなきゃなんねーんだよ、まったく」
微妙にからかうようなヒカリがゾロの眼に浮かんでいるのをうっかり見落とす。



「それに他のと、んなにやってる暇ねえよ」
すれちがい様の一言。



きょうの勝負はゾロの勝ち。



I can be a fool for your love, babe.
Kiss me thousand times, give me thousand hugs, you're all I long for.