Sky the Limit



「サンジ!テメェは俺と来い!」
太陽を背に、際立つシルエット。
石畳に響く声。きっと一生忘れない。



「あいつら、きちんと逃げたかなァ」
「たりめぇだ。あっちには逃げの天才がついてるからな」
見上げると、薄い唇に微かな笑み。
なんとなく足元に座ってるおれを、邪魔にもせずに。
期待してなかった返事が返ってきた。

わらっちまう。
二手に別れてテキを撒くつもりが、どうやらこっちだけにあちらさんは集中してきたらしい。
おれら目立ちすぎ?
レディが無事らしいのは無条件に嬉しいけど。
半分まで蹴散らして、キリがねえってんで海沿いの小屋に隠れたのがざっと1時間前。
出航まで、あと2時間。


「オイ、マジでヤバくねぇ?」
「ああ、マズイかもな」
あいかわらず、壁に寄りかかり目を閉じてた奴が口を開いた。
無キズ。化け物だね。

埃だらけの小窓から退屈しのぎに外を覗いたら。ああぁーーーお約束だ。
小屋の周りに、いつのまにか人の気配が充満してた。
クソ剣士。テメェとっくに気付いてやがったな。


「チョロチョロうざってー。まとめて片づける」
手には黒い布。
本気の眼。もう伝説になりかかってる「海賊狩り」の眼だ。


ちっくしょ。見惚れんな、おれ!
ずっと、目で追ってたけれど。多分、初めから。
インパクト強すぎなんだよ、テメェ。

「カッコつけやがってクソ・・・」
腕を捕まえられて、急に引かれた。

乾いた唇がかさなる。
奴の目が、至近キョリでニヤッとした。

重なった身体はすぐに離れ
「行くぞ、」
怒ったように言うと刀に手を掛けそのまま飛び出そうとする。

肩を掴んで体ごと振り向かせ、そのままぶつかるみたいに飛び込んで。
首に腕を廻して、おれから「キス」した。
舌で唇をなぞり、深く重ねようとした。
急に奴の手が髪に差し入れられるのを感じ、まさか、と思うのと同時に
抱きしめられた。

もう後は、夢中。息をつくのも勿体ない。
そんなことする暇あったらもっと奴を感じてたい。

「・・・ふ・・・ゾ・・・」
「うるせー」
上向かされて、また重なる。
溶ける、と思った。熱に。

唇が薄く離される。目を開けると、奴のまっすぐな目線とぶつかった。
抱きしめられる腕の力は変わらない。
不器用な奴。

だけど、眼をみただけで、いま何を言い掛けてるのかわかっちまう。
それくらい、おれはずっとおまえのこと見てたんだよ。おまえは?

だから

先に言った。


「つづきは後でな」


おれの、すげー好きな深ミドリの眼。
不敵で物騒なヒカリはそのままに、初めてみる静かな笑みが浮かぶ。

「ああ」

指の長い手が、おれの前髪に触れ、そのままかきあげる。
瞬間、眩しそうに眼が細められ、変わった。
そして。
「行くか、」と口にした。いいね、その光り。

安心するよ、どんなにお先真っ暗な状態でも。いつみても、カッコイイよな。
視線で殺す男だもんな、おまえ。


ドアの両脇に向かい合って立つ。
追手の数に不足無し、だな。

「死ぬなよ?」一口喫って、煙草を床に落とす。
「ハ!テメェこそな」
目線が交わる。

「「せぇーの!!」」


蹴破り、飛び出す。
迎える世界は。
蒼穹。潮風。走る。叫び、血の匂い、広い背中。
フッ飛べ。
いいねぇ、爽やかだヨ、---突破目前。

届く、言葉。「来い!」
あったりまえだろ。笑う。

腕、弧を描き。
手、つながる。走れ。




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基本的に、強いから死なない。でももしかしたらヤバイかなって意識はあるので
悔いのないようにって初キス、と激白。つーか目で堕とせ?きゃー。おばかさん!(あんたでしょ。)
ベタ惚れしてるし。お互い様。ただたんに、ハッピーエンドの「明日に向かって撃て」がしたかったのかな。
お初でおそまつ。ははは