*48*

腕の中の存在を抱きしめているのがスキだと思った。口付けを求めて手指をきつく背中に縋らせ、甘い声を漏らすルーシャンを。
細い腰に手を回して、柔らかな金色の髪が擽るように触れてくるのも気に入っていた。
なによりも、潤んだ双眸で見上げてくるブルゥアイズが。
ルーシャンの何が特別かは解らない。ただ側にこのコの存在があっても疎ましくならない、というのが最大のポイントなのか。
ルーシャンが万が一ビジネスに巻き込まれでもしたら、きっと自分は怒り狂うだろう、という認識だけはできていた。血も凍るほどに冷たく意識を冴えさせて、皆殺しを決意するくらいのことを自分はするだろう、と。

口付けでは足りないとばかりに、身体を摺り寄せてきていたルーシャンを連れて屋敷に戻った。抱き上げて車から真っ直ぐルーシャンの部屋に向かえば、ドアを開けたウィンストンが目で僅かに笑っていたのが解った。背後でロイが諦めた風に溜息を吐いていたのも。
ベッドにルーシャンを下ろして、首に辛うじてかかっていたストールを手荒に引いて解いた。
ルーシャンの腕が解かれないまま、留めてあったジャケットのボタンを外し。無理やり首根っこ辺りを引いてジャケットを脱がせた。タイも勢い良く引いて、短く息を零していたルーシャンから外す。
「ルーシャン、バスに入るとか言い出すなよ」
からかいながら忙しくシャツのボタンを弾いていく。ざ、と左右に開いてまた腕を伸ばし上げてきていたルーシャンから剥ぎ取るように脱がせた。
余裕なさげに息を吐いたルーシャンの背中をリネンに着かせて。片足ずつあげさせて、黒い革靴を脱がせていく。靴下も引き抜いて放り出してから、ベルトをアンバックルし。唇をきゅっと噛んだルーシャンに構わず、下着ごと脱がせて、ボトムスを放り投げた。
「仔猫チャン」
両手を伸ばして、ぐしゃりとルーシャンの乱れた髪をさらに乱した。
「ん、…っ」
揺れるブルゥアイズが見上げてきながら、どうにか同意とわかる返事を寄越してきた。リネンに身体を沈ませるように、噛み付くようにまた唇を合わせる。
この焦燥感に似た荒々しさがどこから涌いて出るのか、自分のことながら不思議になって。口付けながらパトリックが薄く笑った。
腕が直ぐに背中に回され、着たままだったジャケットの生地を甘く掴んでくる。
レストランからの帰りに何度もそうしたように、深く舌を絡ませあいながら、口中に唾液を落としていく。何度もルーシャンの喉が上下していくのが解る。
着たままのジャケットを軽く引かれて、
「……ン、っぅ」
そう甘く強請られることに不思議と気分が高揚する。
する、と首にまだ引っ掛けたままだった深紅とシルヴァーグレイのツートーンのストールを引き落とした。ペンだの手帳だのが入ったままのジャケットを脱いで、ごと、とフロアに脱ぎ捨てる。
甘くルーシャンの舌に歯を立てながら、ゴールドのタイをゆっくりと引き抜いた。背中から首筋まで掌が辿り上ってくるのに笑ってきつく舌を吸い上げながら、ゆっくりと黒いシャツのボタンを外していく。
熱い手指が軽くシャツを引っ張っていくのに笑って、さらりとルーシャンの心臓の上を撫で上げた。
「んぅ、」
甘い声が響き。少し浮かされるようだったシャツを脱ぎ捨て、眼の下でひくりと小さく跳ね上がった腰に笑って口付けを解いた。

「随分と煽られてるナ」
ぺろりと濡れた唇を舐め上げてから、ベルトをアンバックルして引き抜いた。ゆら、と現れたブルゥアイズを覗き込みながら、にかりと笑う。
「うん、」
小さな声が応えてくるのに喉奥で笑って、あむ、と唇を啄ばんだ。
「何をしてほしい、ルーシャン?」
きゅ、と裸の背中に爪を立てられて、パトリックは目を細めた。
「言ってみな」
じっとルーシャンの潤んだブルゥアイズが見上げてくる。
「きもちよくなってほしい」
きゅう、と抱きしめてくる腕が強いのに優しくて、くくっとパトリックは笑った。
「オマエのことだから、もっとすげえこと言ってくるのかと思ってた」
「あんたに、うんときもちよくなってほしい、」
言い募るルーシャンの額に額を合わせた。
「オマエ、ヘンなヤツだったんだナ」
とん、と濡れた唇に口付けて、さらりとルーシャンの頬を片手で包んだ。
「なんだよ、それ」
甘ったれた口調が訴えてくるのに、する、と首筋を撫で下ろしながら口端を引き上げた。
「気分はすげえいいけどな、今」
そのままさらりと胸元まで撫で下ろしていく。
「身体に、ココが追いついた、おれ」
そう言ってルーシャンがパトリックのこめかみをとんとんと指でタップした。
「だから、喰っちまってよ、骨とか残さないで」
とろ、と甘い声に笑って、く、と小さな尖りを指先で押しつぶした。

「朝には違うオマエになってるだろうよ、仔猫チャン」
一瞬泣きそうな顔をしたルーシャンに笑って、ちゅ、と甘く唇を啄ばんだ。
「コラ、そこは泣くとこじゃねえだろ」
「“いま”しか要らなくても、いいよ」
潤んだブルゥアイズのまま、ルーシャンがコトバを継ぐ。
「おれのこと、」
きゅ、と尖った胸の飾りを指先で摘んだ。
「口にする願いには気をつけな、仔猫チャン」
吐息を上ずらせたルーシャンに、くすんと笑った。きゅう、と眉根を寄せたルーシャンの耳元に唇を移動させる。
「“明日”を望んで生きろよ、折角なんだからさ、オマエ」
きゅ、きゅ、と小さな尖りを指先で押し揉みながら、かぷ、と耳朶を食んだ。ふる、と首を小さく横に振ったルーシャンの耳に舌先を潜り込ませた。
「強情ネコ」
囁いて、ふっと息を吹きかける。
「ふ、ぁ…ッ」
首を竦めて、びくりと身体を跳ねさせたルーシャンにくくっと笑い。背中に回されていた腕をぐっと引いて、まだボトムを履いたままの自分の下腹部に押し当てさせた。す、と潤んだ目が見つめてくるのに、目を細める。
「気持ちよくしてくれ、ルーシャン」
する、とルーシャンの手が容を確かめるように辿っていき。それからパトリックのボトムを寛がせていく。する、と下着ごとルーシャンがパトリックのボトムを下ろしていき。そのまま身体まで落としていくのにパトリックは低く笑った。
「それ、したいのか、ルーシャン?」
「きらい…?」
金色の髪をさらりと撫でる。
「嫌いな男なんていねぇだろうがよ」
くっと見上げてきたルーシャンに、片頬で笑いかけた。ぱち、と瞬いたルーシャンがまた顔を下ろしていこうとするのに、またパトリックが笑って。それからするりとルーシャンの頤を捕まえた。
「んん、」
「けど今はオマエの顔を見たい。手だけでやってみな」
ネコの顎下を撫でるように、指先でくるくるとルーシャンの頤を撫でれば、すう、と視線が合わせられた。
とろ、とルーシャンが自分の指先を舌で舐め上げていくのを見詰めながら、足に引っかかっていた生地をベッドサイドに落としきる。濡れたルーシャンの手指が落とされていき、軽く絡んでくるのに柔らかく微笑んだ。熱い息を零したルーシャンの頭に口付ける。
「ん、…っ」
撫で下ろされる感触に、甘く呻いたルーシャンを見詰めたままぺろりと舌で唇を濡らす。

「仔猫チャン」
笑って、軽く腰を揺らして手に押し付けた。
「デリケートだな、タッチが」
きゅ、と軽く扱かれて、くくっと笑う。
「オマエが今考えてること、声にして言ってみな?」
「熱くて、重い」
とろりと掠れて甘い声が、素直にコトバを告いでくるのに目を細めて見下ろす。
「あんたの血もわかる」
く、と逆撫でられて、パトリックはくっくと笑った。
「熱い、流れてる、」
きゅ、と扱かれて、ふ、と重くなる腰にパトリックは深い息を吐いた。とくん、と灼熱が生まれて、一回りルーシャンの手の中で大きくなる。
「はやく、ほしい…、」
腰に響くような声で告げてきたのにまた笑って、ぐ、とルーシャンの手の中に屹立を擦りつけた。もう僅か、遠慮を無くし始めた指先が絡んで体積を包み込むようにし。
「あんたに、奥まで拓かされるのも……苦しくて、熱くて――――――」
淫蕩に蕩けたルーシャンの声が、甘くコトバを綴る。く、と先端を押し撫でるようにし、僅かに濡れた先端のぬめりを広げていく。
「でも……どろどろに溶けそうなのに、あんただけがおれの中で暴れてんのも――――すきだ、」
とろ、と蕩けたブルゥアイズが見上げてくるのに笑った。
「それじゃあ仔猫チャン。コイツがオマエの中に入れるようにしなきゃなんねえこと、解るナ?」
さら、とルーシャンの髪を撫で下ろす。きゅ、きゅ、と絞り上げながら見上げてきたルーシャンと視線が絡み。こくん、と頷きが返された。

「たっぷりと舐めてやるから、こっちにケツ上げてきな」
さあ、とルーシャンの目が見開かれる。
「んん?どうした仔猫チャン?」
「どうしても……?」
揺れる声で告げてくるルーシャンの頬が染まっているのに、に、と笑いかけた。
「もちろん」
さらに、かああ、と顔を赤くさせたルーシャンの目元に、トン、と口付けた。
「できるだろ、仔猫チャン?」
「顔、みててくれないの、」
きゅ、と熱をやんわりと押さえ込んだルーシャンの手の中で灼熱が跳ねる。
「オマエのエロい顔みてたらシたくなったンだよ」
こく、と息を呑んだルーシャンの手の中に、また屹立を擦り付ける。
「気持ちよくさせてくれンだろ?」
また顔を赤らめたルーシャンが、身体を震わせながら身体の位置をそうっと変えていく。その間中、ルーシャンの火照った肌を掌で辿り、優しく撫で上げていく。
「ん、ッ」
甘く喘いだルーシャンの肌を軽く指で押し撫でて、両手で屹立を握りこんできたのに、また軽く腰を揺らした。
「オマエ、下だと大変だから、足開いて顔跨いで、腰落としてこい」
「―――――――な、」
戸惑っている声を上げたルーシャンの足をさらりと撫で上げて、顔横にある膝にトンと口付けた。
「繰り返すか?」
ふる、と首を振ったルーシャンが、ゆっくりと身体を引き起こしていき。リネンに背中をつけたパトリックの横で、緊張して足を開いていく。
「顔踏むなよな?」
き、と屹立に爪を立てられて、びくりとパトリックが腰を揺らした。
「…ッ、」
一つパトリックが息を呑む間に、ルーシャンが顔を跨いで腰を下ろしてき。そうしながらゆっくりと灼熱を口に含んでいっていた。

目の前のルーシャンの屹立からもうすでにとろりと透明の雫が垂れそうになっているのをまず舌先で捕まえ、ちゅる、とルーシャンが啜り上げてくるのに合わせてぺろりと舐め上げた。
舌先が、とろ、と根元を舐め上げ、それからまた含んでいく間にルーシャンの腰がびくっと揺れる。ちゅく、と甘くルーシャンの屹立の先端を吸い上げてから口を離し。ルーシャンの腰に手を置いて、腰を低く落とさせていく。
「ん、ぅ」
少し焦った声に構わずに、目の前の精嚢をはむっと食んでから、手の感触に腰を強張らせたルーシャンの尻をぱしんと一つ叩いて、開くことを覚えた襞に舌先をそっと添わせた。
「んン、ン…ッ」
パトリックの体積を口に収めたままルーシャンが低く呻き、びくりと身体を揺らしていた。羞恥心からか、浮き上がろうと無意識に力の入るルーシャンの腰を掌で押さえつけながら、舌先で突付くように蠢く襞を弄っていく。
パトリックの屹立に絡む舌先が覚束無くなってくるのに構わず、ルーシャンの屹立を空いた片手でそうっと包み込みながら、くにくにと襞を舌先で擽っていく。
「――――――っふ、ゥ」
喘いだルーシャンの腿が緊張しているのに笑って、少し頭を上げて、ぐっと舌先を綻び始めた入り口に差し込んだ。
「あ、ア…っ」
屹立がルーシャンの口から零れ出て。甘い声が空間を満たした。
きゅう、と腿に熱い手指が縋ってくるのに笑って、蠢く襞を唇で覆って甘くちゅぷっと吸い上げる。
「ぁ、ア、やぁ、」
首を横に激しく振りながら、パトリックに手指で縋りつきながらそれでも腰を浮かせかけたルーシャンの身体を押さえ込んで、ちゅう、ときつく吸い上げてからパトリックが笑った。
「ここ、すげえ餓えてるカンジがする」
「ぁ、っあ…、」
てろ、と舌先で襞を舐め上げ、ぐる、と薄く開いた内側を濡れた肉で辿る。かたかたと身体を震わせ始めたルーシャンの尻を腰を押さえていた手で撫で下ろしながら、
「やぁ…ッ」
そう甘い声を上げて肩を揺らがせたルーシャンの襞をてろりと舌先で舐った。

「オレのが欲しくて、ひくひくしてンの?」
「は、ァ…っあ、アっ、」
困惑しているルーシャンに構わず、ぐぐ、と舌先を襞内に押し込んで、ぬくぬくと舌を揺らす。入り口付近だけに施される愛撫に焦れた内側が、舌に絡んでくるのに笑った。
「あ、アぁ…、ヤ、だめ、」
泣きそうなルーシャンの声に、パトリックは舌を差し込んだまま問う。
「なんで」
「きら、われる……っ」
ふにぁ、と泣き声を上げ、ほとほとと涙を零し始めたルーシャンの襞に、ちゅく、と甘い口付けを落とした。
「オレがしてンのに?」
ルーシャンの身体が緊張して震える。
「いきてェならいいぜ?ほら、飲んでやるよ」
つう、と蜜を零したルーシャンの屹立を手で掴んで口まで運び、ぬく、と先端を舌先で割った。
「あ、」
びく、と腰を跳ねさせたルーシャンのヒップから手をずらして、腰を押さえていた手の指を伸ばして、くるくると濡らしたばかりの入り口を指先で弄った。ふるふると首を横に振ったルーシャンに構わず、ちゅく、と熱を吸い上げながら、奥まで飲み込まれていく指が伝えてくる感触を味わう。
「あち、」
「た、りな…ァ、」
ひくう、とますます泣き出したルーシャンの内側をぬくぬくと指で辿りながら、屹立を吸い上げていく。
「も、…っと、濡らしてほし…」
ひぃん、と泣き出したルーシャンに、パトリックはふっと笑って。ルーシャンの背中を空いている手で抱き寄せてから、くるりと身体の位置を入れ替えた。
ぐぐ、と奥まで指が飲まれていき、ほとほとと涙を零しながら顔を真っ赤にしているルーシャンの上から身体を退かせた。ちゅ、と濡れそぼった熱に口付けてから、表情を歪ませたルーシャンの片足を引き上げさせて、膝がリネンに着くまで高く上げさせる。

「ここ、綻んでて真っ赤だな」
「っぁ、」
ぬく、と指で内側を弄くりながら、舌先で指を飲み込んでいる縁を辿った。
「直ぐに2本入るぜ?」
ぐぐ、と足が強張ったのに構わず、二本目の指を時間をかけて含ませていく。
「ん―――――――っ、ぅ、」
ぬく、と熱い襞が絡み付いてくるのに喉奥で笑いながら、ぐ、ぐ、と指を出し入れさせる。リネンをルーシャンの手が引き絞っていくのを見詰めながら、舌先を添わせて指の間から縁を舐め上げ、唾液を落とし込んでいく。
「ぁア、ア、っ…」
小さく悲鳴じみた声で鳴いたルーシャンが、腰まで震わせ更に誘うように入り口をひくつかせていた。背中を浮かせかけ、ぐっと反らせたルーシャンの尻に軽く歯を立てながら、指でぬちぬちと内側を辿る。
「キツいのが欲しいか?」
「ア、ッぃ、あ」
ほろ、と涙を零したルーシャンを見下ろしながら、膝裏にも口付けを落とす。ぬちゅ、と締め付けられる指が濡れた音を立てさせた。びくっと爪先まで震えたルーシャンを見下ろしながら、パトリックが喉奥で笑った。
「まだいらねぇか?」
「もぉ、…っと、」
泣きそうに揺れる声が強請ってくるのに、ぐい、と内側の一点を押し上げる。ひくう、と喉を鳴らして嗚咽ごと息を止めたルーシャンの震える体から指を引き抜いた。
「ヒ、ぁッ…」

びくりと身体を跳ねさせたルーシャンの腹にトンと口付け。ひくひくと蠢く入り口を横目に、にかりと笑いながら身体を起こし。自分の掌を舐め上げて、自身の屹立を軽く扱いて零れた体液を塗り広げた。熱い息を切れ切れに吐きつつ、潤んだ縋るような眼差しで見詰めてくるルーシャンに笑いかけた。
「両足、自分で持って広げナ」
きゅう、とルーシャンが一度目を閉じるのを、舌なめずりする狼のように間近で見下ろす。上から膝を持って、そろりと足を開いていったルーシャンをじっと見詰めて、にぃ、とパトリックが笑った。
「ソソるね、オマエ」
己の屹立を手で持って、ゆっくりと目を合わせてきたルーシャンから視線を外さないまま、拓いた入り口にゆっくりと先端を押し付ける。
「あんたが、した」




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