So in Love





「サンジ、」
そっと呼びかけても、もう瞼が引き攣るほどに眼を閉じてしまっている
相手にはきっと届きはしないだろうと、ゾロは真近でみつめるようにする。
睫まで金色なんだな、と。そんなことを考えた。




いま、このうすく空気だけを隔てた距離をサンジがどう受け止めているんだろうと
考えてみた。もう少し触れずにいたならば目を、開いてくれるかとも思う。
あの、射すような青は自分をいまならばどう映すのだろうかと。



呼びかける代わりに掌でその項を包み込むようにした。
さらさらと、金糸が手の甲を掠めていく。それだけで、自分の中に
名前の付けようの無いものが、身体中を巡る血液よりもたしかに
心臓のあたりに集まってくる。酷くやわらかくそれでいて乾いたような
浮かされたようなモノ。「衝動、」とは違う。「たぎる」というのでもない。
ただ、触れたいのだと。触れてみたいのだ、この目の前のものに。




唇を占有していたフィルターを自分の指が抜き去ったときにみせた
サンジの表情をゾロは思い出す。唇端を引き上げ、自信たっぷりに
わらってみせていた。それが。いま。ひどく必死に眼を閉じてしまっている。
触れた手に、ひくりと肩が揺れ。握り締めていた手が、自分のシャツの胸元に
かかるのを、ゾロは微かに笑みを刻んで受け止めた。



指先で、滑らかな皮膚の感触を確める。
ひたりと、僅かに冷たい。抱けば、温もりがうつるだろうか。
ゆっくりと、自分の熱と溶けあっていくようなその感覚。
もう一度名を呼び。



唇をよせる。どうせ、歯ァくいしばってんな、と。わかってはいたけれども。
じかに確め、こみ上げてきかけるのは、わらいと。それを上回るいとおしさ。
啄ばむようにふれ、羽根をはむようにかすめ、つつむようにかるく押しあて。
唇だけであじわう。誘いだすように舌先でも確める。
存在を主張する煙草の、南国のような甘い香料。
ゆっくりと綻び始めた唇は、やはり冷たい。
それでも押し合うように触れた舌は熱い。



「おまえ、複雑なヤツだな」
もっと深く触れ合うのにわずかに唇を離し、ゾロが言う。
「なんだ、そりゃ」
自分を取り戻し始めたサンジが漏れる息と一緒に言う。
ゾロの頬に両手を添わせ、引き寄せ。
わらいあって、とけあうまで、おもいきり。





キスをした




はじめての。









まっちん様よりいただいたイラストで、突発小話。
妄想ここに極まれリ??
ああ、たのしかったっ。まっちんさま、どうもありがとう!

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