One day of the hound * チンピラの海賊的日常(2)
『Confession』


思い切りサンジを抱いちまった後ってのは、最初は妙にこっ恥ずかしいモノだった。
うう、ああと辛そうに、けれどどこか頬を染めているようなサンジに悪態交じりに、ああしてくれ、こうしてくれ、と言われ。
それに、ハイハイ、と素直に従って、けれどすぅっとサンジが眠った瞬間、その寝顔を見詰めることが、なんだかこう……。
なんていったって、それまでに抱いてきたのは。思い切り抱ききる前に『ストップ』と優しく告げてくることのできるオンナたちか、もしくは崩れたまま独り残してきても文句も言わないオンナたちばかりだったからで。

それが、愛情の吐露の結果というか、若いオスの本懐を遂げた結果というか。
くてん、となっちまったサンジを見詰めているうちに。
サンジが浮かべたエロい顔だとか、耳にこびり付くような甘い嬌声だとか、そんなモンがバンバン自動再生されちまって、頭が勝手に浮かれて。
それがまたこそばゆかったわけだ。初めてまともに「恋人」と向き合った結果の、嬉し恥ずかしな境地ってヤツ、と言い換えてもいい。

最初は恐る恐る、くてんとなったサンジの世話を焼いていたけれども。
今ではだいたいどの辺りまでやってやればヤツが恥ずかしがらず、かつ「いつものサンジ」らしく在れるかが解る。
時々やりすぎて、照れて拗ねられたりもするわけだが、それもまた許容範囲のうちだからちっともかまわない。
横にだらりとなってじっと見詰めていれば、そのうち横目でちらりと確認されて。そのままでいれば、あーだのうーだの唸った後に、またサンジからなにかを言ってくるのが解っているからだ。
ま、こういう時にサンジが洩らす悪態てのは、妙に笑って流せちまうモンばっかりだしナ。
にゃがにゃが言ってやがるのは、あー……やっぱ可愛いダロ。

けどまあソレはサンジの意識がばしっと戻ってからのことで。
時折、ぼんやりと意識を戻したサンジが境界にいることがある。
そういう時のサンジには、ヘタに言葉を交わさないほうがイイ。
とろん、とした眼差しのまま見詰めてくる蒼の目許に口付けて、瞼を閉ざさせて。
すり、と猫か幼子よろしく頭を摺り寄せてきた金色を抱きこんで、口付けて。
眠っちまえ、と低く静かに呟いてやり、あとは抱き締めるダケだ。
そうすると、すぅ、と寝息が聴こえて、またサンジが眠りに戻ったのが解る。

そういうのが起こる時っていうのは、大体、リネンの替えや水や果物などを調達しにいって。眠っているサンジから、ちっとばかし離れすぎた時に現れる状況だ。
船に乗ってるときは大体さくんと抱くだけだから、そもそも意識を飛ばすほどにセックスに溺れることはない。
だからそういうのはほとんどが二人きりで宿屋で泊まっている時に起こる事象だ。

そして。
そういった状態に自分が時々在ることを、サンジ自身が自覚しているとは思えない。
そういう風に在ったことを、オレもバラさないし、な。
――――――妙にまっさらなカオをしたサンジを見ているのも、実は嫌いじゃない。
そんな状態のまま、ヤツが帰ってこれなくなったとしても。オレはきっと同じようにサンジのことを愛するんだろうなぁ、と、そんな覚悟を改めて持つだけのこと。
結局オレはサンジに惚れて惚れて惚れまくっちまってンだなァ、と何度も自覚したことをまた再認識するだけのこと。
だからといって、そのカオを見たいがために、サンジを思いっきり抱くわけじゃあなくて……まぁオレだけが知ってるカオをサンジがオレだけに見せていることは、嬉しくないわけじゃあないが。
ただま、最悪その状態でスタックしちまっても、オレはサンジを引き受ける覚悟はいつでも持ってるってだけのことだ。
きっとそうなっちまったら、生き方を変えることになるだろうけど――――後悔はしないだろうな。

けどま、そういうサンジよりは、悪態を吐き捲るマシンガン・トーカーで、足癖の悪い、小憎たらしく、元気で可愛いバカなサンジの方が何倍も好きなのは当たり前ってことで。
今日も今日とてガンガンに悪態を吐かれながら、じゃれあいとマジ喧嘩の中間を実行しつつ、ちょっとした瞬間を狙ってキスを仕掛けたりとかしつつ、人生を謳歌していたりする。
―――――いい人生だって、思ってるぜ。




(*ちんぴらモノローグ。オレサマ度100%で愛情たっぷり>笑。こいつ、本当にいつ死んでも本望だよナ、という生き方をしていると思う。うん。でも粘って頑張るんだろうけどな!余裕があるようでないけど、精一杯男気見せて頑張ってるチンピラっつーことで。これからもよろしく>笑。でもサンジくんが初めての恋人ってわけじゃあ決してないけど<うしし)