前説@カフェ
「ベイビイズが不毛の大地を進む前にだな、」
ふ、と天然チェリイ・ブロンドも悩ましく額に落ちかかるお方が口を開いた。
あーあ、また何か言ってるよこのヒトは、と黒アタマのギャルソンその1が肩を竦めつつデミタスカップをテーブルに置いてからついでに自分もするん、とイスに落ち着いた。
「お!解説だな?」
あっけらかん笑顔でシルバー・トレイを放り出しひょんひょんやってきたのはギャルソンその2で。
「そうそう、ご親切にもおれがかァんたんに!本編前に事情説明をしてやろうってわけ」
にぃ、とオーナー様が仰った。
「ま、”コレ”より前に展開されてたヤツァ、要は“オズの魔法使い”的世界なわけだな」
「ソレ。―――全然、説明になってないし」
はああ、と黒アタマが溜め息を吐いた。
「フフン。いまからだろうが、アホウ」
「……怪しいモンだな、」
にかぁ、ともう閉店なのでギャルソンその2、薄い色のグラス越しの目が細められた。
「ああ、多いに怪しいぜ」
「おら、ギャルソン共。聞かねぇとバイト料やらねぇぞ」
「「はい。」」
「いいか?で、まあ偽オズの国には!そりやァ大層見てくれが可愛らしい大魔法使いにして王子サマがいたんだな、」
「ふんふん」これはギャルソンその2。
「---ああ、確かにカワイイよねぇ、うん」これは同じくその1。
「その国へ、ウチの誑し給仕男その3が嵐で飛ばされちまったんだな、なァにしろ偽オズの“ドロシー”だからよ」
「「わっはっはっはっは!!」」
「もちろん、“トト”も連れてな」
にかり、とオーナー。
「で、まあ。無事かどうかは知らねぇが2人して出会っちまったら御終いだったわけだな、うん」
「一目あったその日から!」これはギャルソンその2。
「うっかり惚れちまったって?バッカだねええ2人とも!」にこにこにことギャルソンその1。
「キャストはー、まあ今回の話に関係あるとこだけな、ほら、おまえ説明しろ」
びし、とギャルソンその1をオーナサマが指差す。
「おれが?!」
「おう、おれは喉が痛い」
くいくいそこでシャンパンの入ったグラス飲んでるし……
「ほら、はやくしな」にぃ、とオーナー様。
「元ヤクザでキ印の暇人かつ道楽カフェオーナがー、」
「おら、ガキ」
げし、とオーナ様がギャルソンその1の足を思い切り蹴った。
「いだ!!」
「キ印たァなんだ、てめェ」
元ヤクザってことに異存はこの方もどうなんでしょう?
「いいンだよ、そりゃ別に。縁切った実家の家業ってこたァ事実」
「「(マフィアじゃん……)」」
これはギャルソン共の心の声であります。
「―――へーへー。雇い主様がこのイカレタひとで」
「心やさしー雇い主じゃねえの」
けらけら。とシャンクス様はとりあわない。
「看板ギャルソンがー、おれと、」
エースがひょいと自分を指差し。
「コレと、」
すい、と砂色頭を指差す。
「うっかり留学中なンだよ、石油の国から」
こらこら、そこの砂アタマ。げらけらと大口あけて笑うな、実は大金持ちサマなんだから。
「偽オズの国に飛ばされたのが誑し給仕のゾロ、でその飼い犬はトト」
無敵の子犬、これにはルフィがキャスティングされております。
「かーわいい王子様ってのが、」
「そうそう、大魔法使いがサンジ、」
「アレはかーわいいねェ」
オーナ様はにこやかである。
「お話はー。」
「省略。オズの魔法使いでも読んでくれ」
「うっわ、すッげえ不親切な解説者!」
あたりまえだろ、とオーナー様がにんまりとなさり、お続けになる。
そして当方の、通常掲示板のスレッドナンバー1000から1600くらいまでにお話は掲載されております。
お暇があったらドウゾ。
「結局めでたく両思いになるわけだねぇ、これが」
「ハハ!さすが御伽噺だからねぇ、」
にかり、とギャルソンその1。
「とはいえ、いまのとここっちと偽オズの国で遠距離恋愛中なンだよな」
「「よく遊びにきてるけどな」」
ギャルソン共の声が重なる。
「で、これは?」
よくぞ聞いたね、ギャルソンその2。たまにはいいこと言うじゃないか。
「はっはっは!!ベイビイ、聞いて笑えよ?テーマは“もしも王子様がニンゲン界に生まれてたら?”だ!」
「「うあははははははははははは!!!!」」
「フフン。お話はだな、無事。イカレギャルソンが大魔法使い様を誑し込んでおおあま遠恋生活突入直後から始まるわけだな」
「オーナー、そんな身も蓋もない言い方でさぁ、」
げらげらげら、と黒頭のギャルソンは大喜び。
「じゃ、そろそろハジマリハジマリって?」
一緒になって、その2も大笑いしているし。
「そういうわけなんだよ、ベイビイズ。お楽しみあれ」
にぃ、と笑うのはオーナー様だ。
「まー、その。なんつの?お気ラクにどうぞ」
ははは、と笑い崩れてその1。
「どうせバッカ話だろぉ?」
ひゃはははは、とその2。
「オマエにゃ、だれも言われたくねぇだろうがよ」
ぱしりと砂色頭を黒頭が叩き。
「どの口がそういうこと言うかねぇ?」
にぃ、と上機嫌な笑みを浮かべたオーナー様は哀れ砂色アタマのギャルソンの口もとを捻り上げ。
ぎゃあぎゃあと上がる抗議の声はまぁ、いつものことでありました。
では、はじまりはじまりー。
本編へ。
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