Cannine、あるいはおそらく陽の目を見ない妄想プロット。
そもそもの発端は。
イタコ1号が10月に妄想してどうしても書きたくて書いてしまった小説のイントロ。
このなかの自堕落辞めホストサンジを、「チンピラ」が嫌いだ嫌いだ言っていることから始まったのです。
ああ、うん、そんなに嫌いなら出さないから、ウン、とかいろいろ言っていたのは
チンピラと元気きゅんの番外劇場で前出した通りなのですが。
実はね…??
こんな自堕落死にたがりオトコでも、拾ってくれる、と言い張るコがいたんですわ。
まずは、そもそものイメージからどーぞー。
2003年10月10日 金曜日
要注意:ただのイメージ放出
「あなた、なにしてるの」
突然に声を掛けられた。
「ウン、ネコ撮ってるンだよ」
「ふぅん…写真家サン?」
ネコを撮っていると、女の子から声をかけられるとが多い、そんなことに気づいてから4日目、いかにもいかがわしい界隈に
似合わず、まっすぐにカワイイ娘からまた話し掛けられた。
バイト先の怪しい興信所からの外注、このあたりでいなくなった迷子のネコ探しなんだよ、なんてことは別に答えることも
ないから。レンズを覗きながらいつもの返事。
「ウン、まあね」
「そお、」
おれの撮った白猫は停められっぱなしの車のボンネットでだらり、と伸びたままだった。まだ動きそうもない気配に目をやって。なんとなく前かがみ気味だった身体を起こした。
きらっとクリスタルのラインストーンが光る迷彩カラーのペディキュアがウェッジソールのサンダルからきれいに顔をだしているのがまず目に入ってきた。それから多分ぎりぎりで爪の先が間に入り込めるかどうか疑問な具合に腿にどうにか張り付いているらしいデニムのマイクロミニからまっすぐに伸びた足と。ディオールだか何だかのTシャツから挑発的に張り出した薄いテキスタイルに守られたバスト、首からちらっとのぞいた紐の色はカーキだった。要は、とんでもなくうまく身体の出来上がったかわいい子だったわけだ。こんなところになにも立たなくても、十分男連中から貢がれるんだろうにね?
ただまぁ、女の子にはいろいろと事情が付き物なことくらい、おれも知ってるけど。片手でそこいらの男共の月収だか特別賞与分だかをちょいっと日割りで稼いで。賑やかでアタマが空っぽなだけのバカ、―――フン、おれもしばらくお仲間だったけどさ、そういうのに注ぎ込んでみたり、とかね。事情はフクザツだ、多分。
「アタマか体のどこかが灰色のネコ、きみ知らない?」
ちょうど、そういうネコがいれば撮りたいんだけどな、と。雇い主からのいい加減な、おまけにまた聞きのネコの特徴。
「灰色のコ?」
少しだけ、女の子の目線が空の真ん中に泳いだ。
「そう」
「んー、ごめん。みたことないなぁ、」
「あー、そう」
このあたりにいるって聞いたんだけどね、と返して挨拶程度の笑みを乗っける。これで前はリシャール・ヘネシーが一本入ったっけ。いまは、この子へのちょっとしたサーヴィス。
「アソコが灰色したヒトならたくさん知ってるけど」
にぃいいい、っと女の子がわらった。ア、かわいい。
シャッターボタンをおもわず、といった感じで押していた。
「―――撮った、」
かわいいよ、と付け足して。ほら、と液晶をみせる。
あら、ほんと。と女の子も覗き込んで。また、に、と唇を引き上げると名前を教えてくれた。
「ナミ。か−わいい女の子がそういうこと言う、」
くすくす、と笑う「ナミ」の肩口で髪が跳ねて、ガ―デニアの香りがすうと涼し気に立ち上った。ふい、と感動した。この女の子の実に巧い外し具合に。下品ぎりぎりのスタイルに、トワレはアクマデすっきり清楚で、高級。
「まだこのあたりで猫を探すの?」
「シゴトだからね」
「そう、」
きゅう、と唇が吊上がって、粒の小さい歯が少しばかり覗いた。まっしろ。
道の反対側を、せっかくの締まった脚をずるずる引き摺って歩く女の子とそのツレが通っていった。二人揃って剥き出しの肩が日差しを乗せているのが目に残る。女の子の肩には天使のタトゥ。
「明日もくるならあたしも探してあげようか、今日はだめね、先約があるから」
「いいよ、じゃあ明日」
名前も聞いてこない女の子の助手?ま、いいか。
ナミがひらひらと日差しの中を真っ直ぐに歩いていくのを眼で少し追って、忘れた。また、猫様の捜索だ。
けれど次の日になってみれば、同じ場所に今度はチューブトップに鹿皮のマイクロミニ、なんてスタイルでナミが待ち構えていて、わらった。
「そのスタイルで裏道でも歩くんだ、」
「そうよ。ブロックの間でも、家の壁の隙間でも」
く、と上げた顎のラインがきれいに流れて、少しばかり眺めた。
自販機で買った水片手に、猫探しだかカワイイデートだかをした。3日ばかり。
「ねえ、他の猫はあんなにいるのにね」
にっこりとわらって、じゃあまたあしたね、と揺らいだ熱気のアスファルトの真ん中をまたいなくなる後姿を見たっきり、4日目に助手は現れなかった。悪くない3日だったな、と思って、また忘れた。灰色猫は依然としてこの界隈に現れず。
道を隔てた向こう側、高級住宅エリアへもカオをだすか、と思っていた矢先に。それが来た。
タバコ片手に冷気の中から外へ戻ったとき、眼の前にいたのは。どんなバカでも、ぱっとみただけで「ああ、やばい」と思う類の人間で。
何がやばいって、眼が異様。
眼光ってやつが鋭すぎ、だらけた昼下がりがイキナリ戦場だかになりでもしたか、って。
それも少年兵なんてかわいいテロリストじゃないね、こいつがもしそうだとしても。
おれはここに存在しないよ、だから放っておいてな。
無表情とちょっとした通りすがりの中間、そんなモノを「着込んで」歩いていこうとしたなら。よりによって、そいつがおれに近付いてきた。訳も無く、ひや、と背中の中心が冷たくなった。アラートサイン。目線を脇へ投げてそのままやりすごすはずが―――
「おい、」
うーわあ、なんだよ
「こいつ、知ってるかおまえ」
ひら、とプリントアウトされた光沢紙がぎらり、と日差しの中で原色を覗かせた。反射で見る。
「――――ナミ、」
……しまった、
そこに映ってたのは、3日前までのおれのかーわいい助手。おれもしってる女子高の制服姿。あー、絵に描いたみたいな捜索用写真。ははは。
「知ってるんだな、」
眼オトコが言った。ただの確認。
「うん、カオは」
「ナミはどこだよ」
「あぁ、それがなに?このこ、あんたのとこの女の子だったんだ?」
―――プッシャーにもヒモにも見えないけどねぇ、こいつ?
返事に実に驚いた。―――ハ!こういうオトコに肉親がいるってこと自体が驚きだ。
「他をあたれば?おれはナミのケイタイもなにもしらないよ」
「おれだって知らない。ただ、」
なんだかおれは自分が斬られそうな気がしてきた。「切る」じゃない、「斬る」の方。物騒なニーサンだな。それも眼光だけで。
「最後におまえといるのをみられたっきりなんだよ、」
夏はいろいろあるからね、3―4日戻らなくても―――そんなことを口が勝手に並べ始めかけたときに。
眼ヂカラ男が小さなパウチを取り出した。
ぴしり、とした固めのビニール。
きらきらとなにかが光っているのに、薄汚い染みが透明な内側に張り付いてた。なんだ?
やつがすいと腕をおれのハナサキに突きつけた。動きも動く気配も空気が揺らぐのも何もナシ、いきなりぱかっと空気が割れておれの目の前にパック。
ちかり、とまた汚れた細長い爪が――――
ツメ?
本物のネイル、スカルプチュアじゃない、なぜなら根元に剥がされた繊維がくっついてる。みただけで、ちょうど両手分くらいの折り重なりが薄茶色くなにかが掠れたパケの底で重なり合ってた。
クリアべ―スにエアブラシ、ドット柄がカワイイね、とおれが褒めたのは4日前。おんなじだね、
―――ナミ。
茹だったアスファルトの向こう側に、歩いていったと思ったのに。
こういう、イメージを垂れ流ししたんです。そうしたらね…???
じゃ、続きどおぞー。
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