『Interview with Seth:A Tip for the Bookworm 』

雑誌社の依頼が入った。
一度インタヴュウをしたことのあるオレなら、と乞われて承諾した。
出発まで1週間、普通ならオレは引き受けない。引き受けたのはインタビュウする人物が、“彼だから”だ。

ロンドンにあるサヴォイのスウィートがインタビュウのために抑えられた。
ケチな雑誌社にしては破格の扱いだ。それはオレのペイにはあまり響かないが、酷く納得した。インタビュウされるのが“彼ならば”と。

手配していたカメラマンが急病で都合が悪くなり、泣く泣く療養休暇を申請した彼の代わりに「いまなら空いてる」と笑って言った親友を引き連れていくことにした。親友も普段は雑誌社のためにこういう仕事はしない。それもこれも相手が“彼だからこそ”だ。

彼、“世界で最も美しい人間”ランキングの常連であるダンサァ。ミューズの申し子、跳躍の貴公子、誰もが夢見る理想の王子様……セト・ブロゥ。彼は“最高”を引き寄せるオーラの持ち主だ。
“プリンス”という称号はあながち言いすぎでもない。世が世ならば、確かにその血筋はフランス貴族に繋がる。ルイ13世が生きていたならば、彼の完璧さに平伏しただろう。その造形的な美しさのみならず、圧倒的な演技力に対しても。
最近では円熟味を増してきて。誰もがはっとする程の色気を、その眼差し一つ、指先の動き一つに乗せることが出来たりしている。
パトロンであり、彼の“運命”と言わしめられた恋人の命令が厳しいのか、稀にしかゴシップ・マガジンなどに載せられない彼の“プライヴェート・ショット”を見ても、華やかさが増したのは一目瞭然だ。
持って生まれた造形が美しいのは“神からの贈り物”であるが、それを歪ませずに開花させるのは並大抵のことではない。どんなに美しい種類の薔薇であっても、育てられ方次第では歪んだ花になるのは当たり前のことなのだ。ましてや彼は人であるのだから、育てられ方だけではなく育ち方も屈折する因子になる。

そういった人の歪みを即座に見破るメディスンマンの弟である親友は、けれど彼のことをこう評した――――怖い位に透明な人だ、と。
『ただ綺麗だけれど中身が歪んでいる人は、ぱっとみた瞬間、力ずくで引っ張られる感じがする。泥沼に引き摺りこまれるような』
カメラを弄りながらリカルド・クァスラが言った言葉を思い出す。
『けれど彼は違うんだ。引っ張られる感じなんかちっともしない。寧ろ、気付いたら取り込まれているカンジがする。そしてその感覚はちっとも嫌じゃない。綺麗な水面や水晶を覗いた時の感じと似ている。どこまでも光りを跳ね返して倍増するような深さに、圧倒されるんだ』
実はセトの弟とのほうが親しいリカルドは、手を休めてふんわりと笑った。
『ちなみに弟のキャットのほうは日溜り。そこに居るだけで、空気が暖かい』
しばらく会っていないというセトの弟を思い出したのだろう、リカルドが柔らかな眼差しのまま見上げてきた。
『彼も透明なんだけどな、気持ちよく晴れた初夏の朝のような透明度の持ち主なんだ』
なるほど、と思う。そこに介在している感情を抜きにしても、セトのほうが引力が強い、というわけだ。

実際セトに会った他の人間にも話しを聞いてみれば。セトと目が会った瞬間、ぼうっとなってしまうのだという。
『決して悪い意味じゃないんだ』
そう釈明される。
『ただ、こう――――シンジラレナイくらいに大きなカラットのダイヤモンドが目の前に在ったら、その眩さにどんなに身構えていたとしても立ち眩みするだろう、一瞬。そんな感じだね』

舞台美術監督のアントワンは、実の一人息子について簡潔にこう述べた。
『希少な宝物』
それがアントワンにとっての見解なのか、氏が思うところのセトの社会的存在価値なのかは解らなかったが。
その見解について異見を唱える人間はいないだろう。セトの多くを知る人にとっても、ゴシップのネタ程度にしか知らない人にとっても、“セト・ブロゥ”のような人間がそうそう世の中に居るとは思っていないだろう。

色々な業界の裏を覗き込んでは引っ掻き回していく職業を生業としているベックマンは、けれど。“プリンス・セト”について本当に悪し様に言う人間と出会ったことがない。
『見かけによらず相当なじゃじゃ馬』
『面白半分に手を出すと引っかかれる』
『生半可な気持ちで付き合おうとすると噛み付かれる』
後ろめたいことを働いて返り討ちに合い、その上で逆恨みしていると明らかに解る以外の悪評はせいぜいその程度だ。

実際にベックマンも会ってみれば、持った印象は『気さくな好青年』だ。ざっくばらんで朗らか、多少好戦的な面も持ち合わせているものの、根っこでは好意的で非常に愛情深い。真面目な努力家で、常に一歩先を見詰めている向上主義、そして冷めた目を持つリアリストでもある。新しいものを開拓する冒険心を持ち合わせているけれども、リスクとメリットを常に頭のどこかで考慮しているタイプだ。
端整なビスクドールめいた顔に似合わず口調が荒っぽいのも、ある程度計算された上で身に付けられたファサードなのだろうとベックマンは思っている。オトナの分別と自己主張をバランス良く使い分ける、実は相当気性も荒ければ押しも強い人間。

『セトはなあ、一度やるって決めたら本当にやり遂げるまで、絶対に引かないんだ。しかも周りの手を借りようなんて思わない、全部自分でやらないと気が済まないヤツだ』
アントワンが笑ってベックマンに告げたこと。
『あれはじゃじゃ馬なんて可愛いもんじゃあねぇぞ。独りであることも、ケンカすることも恐れない豹みたいなもんだ。機嫌がいい時には付き合いやすいが、一度損ねると名前の通り、嵐みたいに荒れまくる』
母親そっくりだ、と笑ったアントワンも、相当“気分屋”で“完璧主義”で“エキセントリック”な人間だ―――平たく言えば“芸術家気質”。
『小さい頃からそうでいらしたんですか?』
そうベックマンが聞けば、はは、とアントワンが笑った。
『セトが小さい頃は舞台にかかりっきりだったから、気付いた頃にはもう喋れるようになっていて。その頃にはこしゃまっくれた頑固なチビに育っていたよ。しかもいつも怒ったような顔をしていた。レンブラントが描いたケルビムより愛らしい顔立ちをしていたからなあ、いつもちやほやされていたんだが、それが多分気に入らなかったんだろう』

にっこりと笑う笑顔がレディエントなセトの表情を思い出す。
『いつも怒って?』
『あぁ。いっつも不機嫌でむくれた顔をしていたよ。それがにっこり笑顔になったのは、3歳過ぎた後からだな。そのほうがメリットが多いって気付いたんだろ。にっこり笑顔の後の怒りの大爆発のほうが威力があるってこともな』
オトナの中で育ったから妙に賢しいコドモだったなぁ、と呟いたアントワンが、ちらりとベックマンを見てまた笑った。
『甘やかし上手なばっかりで甘え下手なあのコが、ああやってコーザくんにはゴロゴロ猫のように懐いているのを見るのは実は新鮮なのだよ?』
帰ってきたらオマエもあのバカタレに甘えてあげなさい、と言われて笑った。
『シャンクスは貴方には“猫のように懐いて”いますよね』
『オレなんかに懐いてどうするんだかなあ、あれも』
呆れた口調で笑ったアントワンの双眸には、柔らかな愛情が静かに浮かんでいた。セトのことを語っていたときと同じ眼差し。


 * * *

サヴォイのラウンジでリカルドと向き合って座っていると、奇妙に人目を集める。
知り合いは知り合いでも“仕事”だから、と黒のスーツを着ているオレと。
ロンドンでは少しばかり浮いて見える、グレイのデニムに白いシャツ、昔ルート66を流していた時に着ていた黒のレザージャケットにブーツとサングラスのリカルドでは、どんな知り合いなのかが一見では解らないせいだろう。
長い黒髪を後ろでさっぱりと結っているリカルドは、やはりアリゾナの渇いた空気の中が一番似合うは仕方のないことだが、ロンドンの高級ホテルのラウンジに居れば、やはり精悍な顔立ちと背筋の良さが隠しきれず。これから撮影に挑むモデルのように見えなくもない。

ちらちら、とこちらに時折流されていた視線が、ふっと一瞬で消えた。
それから、ざわ、と空気が騒ぐのを肌で感じる―――“彼”のお出まし。
スタスタとテンポ良く歩いてくる彼は、今日は白いタートルネックに茶色のスウェードのジャケット、青のデニムに茶色のスリップオンを合わせていた。少し長い見事なプラチナブロンドは緩く背中で結われており、ジャケットと合わせたのか、茶色のスウェードのリボンがひらりひらりと空間を泳いでいた。目許にはシルヴァフレームの濃いグレイのサングラス。けれど上機嫌なのが解る―――肩辺りが僅かに跳ねているカンジがする。

ちらりとリカルドに目線をやると、“外”では滅多に笑顔にならないヤツが、少しばかり緊張した面持ちのまま、僅かに口端を引き上げていた。
リカルドはウサギチャン―――“弟”のことでセトに電話口とはいえ噛み付かれたことのあるレアなヤツだ。仲良しになったいまでも、多少は背筋が伸びる、と前に笑っていた。

立ち上がれば、くう、とセトが口端を引き上げていった。
「ハロ、ロンドンへようこそ。もうすぐジェンが来るから―――ああ、キタキタ。お待たせしました」
する、と差し出した手に手を滑り込まされ、軽く握りながら片腕を回しあう。
「ベン、元気そうでよかった」
「そちらこそ、セト。いつに増しても綺麗ですね」
「アリガト」

する、と離れていったセトが、今度は同じようにリカルドにも挨拶をしていた。
「リカァルド。オマエからはあっちのニオイがする」
「浮いてるかな?」
「ナンセンス!よく似合ってるよ」
「よかった」
ぎゅう、と固く腕を回してハグ終了。

「ジェン。この二人だけだから問題ないよ。遊びに行ってくる?」
フリータイム・イン・ランドゥン、とアクセントを多少強めて言ったセトに、ボディガードでマネージャのジェンが頷いた。
「終わったら電話頂戴、セト」
「もちろん。気をつけて楽しんでおいで」
「セトもね。また後で―――ベックマンさん、クァスラさんも。こっち、メイク道具が入ってます。もし必要なら」
リカルドにメイクボックスを引渡し。くぅ、と笑みを刻んでからホテルを後にした彼女の背中を見守るまでもなく、すい、とセトが視線を跳ね上げてくる。
「オレ、ここのスウィート以外入ったことがないんだけど」
「今日もそこです。アナタには最上を差し出したくなる何かがあるんです」
にっこりと笑えば、ぷ、とセトが軽く笑った。
「じゃあ行こう。ここで待っててくれたんでしょう?」
「もちろん。カメラのセッティングも済んでます」
「オーキィドーク。さくっと行こう」

緊張気味に視線を投げかけてくるホテル・スタッフたちにセトは律儀に笑みを投げていって。エレヴェータであっという間にトップフロアに到着した。
「アンファン・テリブルは元気?」
静かに問われたことに、リカルドと軽く視線を交わした。
「二人でセトに会うって言ったら、アントワンのところに駆け込まれました」
「いまブロードウェイで仕事してるしょう?じゃあ彼もニューヨークなんだ」
「アントワンにはお世話になりっぱなしです」
軽く会釈をすれば、いいのいいの、とセトが笑った。
「アントワンを構ってくれてて寧ろ嬉しいカンジ。オマエたちにはチョット悪いけど」
「終わったら迎えに行きます」
「リカルドも?」

ドアを開けている間に、すい、とセトが斜め後ろにいたリカルドを振り返った。
「オレはついでだから、このままイギリス内を巡ろうかと思って」
「んー、それもいいかもね。カントリィ?サバーブ?それともアーバン?」
「カントリィを」
「なら是非道々ティルームで、スコーンとクロッティッド・クリームと紅茶を試していきなね」
「オイシソウ」
にか、と笑ったリカルドに、くぅ、とセトも柔らかく笑う。

「あんまり仕事って気がしないなぁ…この間よりは仲良くなれたせいかな?」
にゃは、と笑ってサングラスを下ろし。ぱ、と室内を一巡してから、にっこりと笑った。
「今日はラウンジでトークではなくて、ベッドルーム?」
「本日のテーマが“セト・ブロゥのお気に入りの本ベスト・スリー”ですからねえ」
「そんなトークテーマのためにココ?随分奮発したねえ?」
くくっと笑ってセトがメインベッドルームに足を運ぶ。
「セトにリラックスしてもらって、寛いだ表情を写真に収めて。その写真で売り上げ部数を伸ばそうっていう出版社の魂胆です」
「オーマイ。オレなんかで売っていいの、ソレ。いま売れ筋の女優さんとかのほうが喜ばれないか?」

くっくと笑うセトに、カメラのセッティングをしていたリカルドがにっこりと笑った。
「セトのほうが断然綺麗だ」
「そう?リカルドがそう言うんであれば―――もう横になっちゃっていいの?」
視線が合わせられたので、首を縦に振る。
「先に3冊教えてください。そうしたら近くの本屋で買ってきますので」
「それって最低3ポーズは必要、ってことだよね」
「お茶なども用意してもらいますが」
「じゃあ本が届いたらホット・ココアをスキンミルクで。ほんのり甘く、でお願いして」
「了解しました。いまは何か?」
「ガス抜きのミネラル・ウォータを。できれば温いほうがいい」
「解りました。リカルド、オマエは?」

視線をにこにことセトを見詰めていたリカルドに向ければ、ふにゃりと笑って紅茶、と言った。
「あとミネラル・ウォータも」
「ガス抜きだな?オーケイ―――じゃあセト?3冊の名前を。できれば多岐に渡るジャンルから選別してもらえると嬉しいな」
「さすがプロ。あんまり適当な仕事ってのも?」
「この3人でやるにはあんまりにチープな仕事だけどね」
に、と笑えば、セトがくすくすと笑った。
「仕事の内容も確認しないで、オマエラが揃ってやってくる、っていうからヨロコンデ引き受けちった、オレ」
「セトにそう言って貰えると光栄だ」
リカルドがにかっと笑って頷いた。
「オレたちもセトと仕事だからって、ペイ・レイズも申請せずに引き受けた」

「それってオレがアンドリュウのミューズだから?」
にぃ、と口端を引き上げたセトに、リカルドがくすっと笑う。
「セトが魅力的だからだ。アンタみたいにハレーションを起こさせる人間を他に知らない」
「オレに影はない、リカルド?」
少しだけ目を細めたセトに、リカルドが首を横に振る。
「影は誰にでもある。ただアンタはプラスのほうが多い」
「そっか」
ふにゃ、とセトが笑って。リカルドが小さく微笑んだ。
「その笑い方、サンジも同じ」
「そりゃあオレはアイツの兄貴だし?ああ、そういえば。最近あのコたちに会った?」
首を傾げたセトに、リカルドが首をまた横に振った。
「最近会ったのは、コーザとジャックだ」
「ふぅん――――今度会ったらきっとびっくりするよ、リカルド、オマエ」
にぃ、とセトが口角を吊り上げた。
「あのコ、すんげえセクシィに育った」
「コーザもそう言ってた。“セクシィにゃんこ”だっけか?」
「ああ、そういえばジャックもサンジと面識あるもんナ…まあいい。今度遊んであげてナ」
にっこりとセトが保護者の顔で笑った。
“コーザ”という名前が出た瞬間、きらっと眼が光ったのが嘘のように穏やかな眼差しだ。

「じゃあええと。3冊名前出したら、それを届けてもらっている間にお茶飲んでメイクして、って段取り?」
セトが訊いて来たので、頷いて返す。
「メイクはリカルドにしてもらうといい。セミプロだから」
「ふぅん?オーライ、じゃあ本ね…3冊かぁ…」

セトが本の名前を挙げ。それを書き留め、ルームサーヴィスをオーダーしている間に近くの本屋に買いに行くことにした。ホテル内を移動している間に、3冊あるのか在庫をチェックしてもらい。結果二軒に受け取りに行くことになった。


 * * *

部屋に戻るとメイクを終えたセトが、ルームサーヴィスで届けられた品物を挟んで談笑しているところだった。
会うその一瞬は緊張する、とリカルドは言っていたけれども。二人の仲は打ち解けているし、セトの朗らかな性格も手伝ってか、人前ではあまり笑顔を見せないリカルドがにこにことしていた。
オレに気付いたリカルドが先に視線を投げかけてき。次いでセトが、おかーえり、と声をかけてきたから笑った。
「確かにこれから一仕事、っていう雰囲気でもないな」
そう言えば、くすくすとセトが笑いを零した。
「まあリラックスはこれ以上になくしているからね。いいんじゃない?」

きれいに化粧が薄く乗せられているセトを見詰める。
こくん、とセトが首を横に傾けた。
「ん?」
「いや、素直に綺麗だな、と」
「アリガト」
にっこりとセトが笑った。
「でもそれってリカルドのお陰かもよ?」
「いい腕前だろう?」
「なんでそこでオマエが威張る?――――まあびっくりするくらい上手だったけど」
くすくすと笑って、セトがリカルドを振り返る。
「ベイビィがオマエに気を許すのがよく解るよ。あの気難しいアイツもね」
そう言われ。立ち上がってカメラの準備をしていたリカルドが、照れた風にふにゃりと顔を崩した。

「さあ、ベン。このまま始めてしまう?それともオマエ、一息吐くか?」
笑顔のままセトに訊かれ、このまま始めよう、と返事を返す。
買ってきた本を袋から出し、順番を決めていく。
最初にセトが手に取ったのは、紙細工が仕込まれた子供向けの絵本だった。Sam McBratney作、Anita Jeram作画の、優しい色合いの薄い本。
カセットレコーダを用意し、立ち上げたままのコンピュータに自動音声変換機がきちんと繋がっているのを確かめてから、ベッドに腰掛けて斜めに身体を落として本を開いたセトに向き直る。
フラッシュが光りシャッター音が響いて、既にリカルドが撮影を始めたのを知る。

「その本を選ばれたのは意外でした」
そう言えば、本の細工を引っ張って笑ったセトが、小さく頷いた。
「オレにね、小さな弟と妹が出来たんだ。オレのコドモタチって言ってもおかしくないくらい年が離れていて―――彼らのために、って見つけた本だった。一目ぼれだったんだよ?」
ふわりと微笑んだセトは、ミューズの申し子というよりは大天使ガブリエルのような美しさを纏っていて。リカルドがすかさずその瞬間を切り取っていったのを聞いた。
「タイトルからして素敵じゃない?“Guess How Much I Love You”、どんなにきみがすきだかあててごらん、って。小さいウサギが大きなウサギに、好きで好きでしょうがないことを一生懸命伝えようとしてあの手この手で頑張って。でも伝え切れなくて、最後には眠っちゃう。それを大きなウサギが抱き締めるんだ―――あの月に行って帰ってくるくらい、キミのことが好きだよ、って。この話しをウチのケルビムたちにする度に、オレが微笑んでしまう。こんなに優しい本は他に見たことがないよ」

する、とセトが両手を伸ばす。
「こんなにもキミのことがスキ、って小さなウサギが精一杯両腕を伸ばすのに。大きなウサギはリーチがその何倍も長くって、小さなウサギは敵わない。その度に小さなウサギは知恵を絞って、もっともっとスキなんだよ、って伝えようとする――――言葉には出来ない位に愛しているけれども、それをどうにかして示そうって頑張る小さいウサギがオレは大好きなんだ。きっと嬉しいけれど相当悔しかっただろうね、愛し合っているからにはやっぱり対等でありたいと願うものじゃない」
酷く幸せそうに表情を蕩けさせたセトに静かに頷く――――思い描いているのが恋人のことだろうと、その表情から知って。

「このウサギたちが親子なのか、友達なのか、恋人なのかは解らないけど――――愛情の深さを形にしようとするのは難しいよね。でも疑う余地も無いくらいに愛し合ってるって双方で理解していることは、本当に幸せなことだよね。どんな関係でもね」
さらん、と落ちた髪を掻き上げて、セトが本を閉じた。

「こんなカンジでいいの?」
「ああ。後で全部にサインしてもらって、読者プレゼントにさせてもらう」
「買うって言った時にそんな気がしたよ。ここの編集者、なかなか知恵が回るねえ?」
差し出された本を引き受け、次の本を渡した。
Philippa Pearce著の児童書だ。
セトがその表紙を眺めてから、すい、とベッドの足のほうに頭を向けて腹ばいになった。
足は後ろで組んで、宙に浮かせている――――子供のようなポーズ。

本を半ばで開いて、適当な所のページを読んでいる。
そのわくわくとした表情と子供が本に夢中になっているような絵を、勿論リカルドが逃すはずもない。
“Tom’s Midnight Garden”と題名の書かれた面表紙越しにセトの顔が映り込むようにアングルを変えて、リカルドがシャッターを切る。

「その本は児童書ですよね。なぜその本を選ばれました?」
「この本はね、12でアメリカから渡英してきた時に、学校で出された本だった。バレエスクールに通っていても、基礎的な勉強はきっちりやるからね。授業で読んだ本の一つだ」
ぱら、とセトがページを纏めて捲る。
「ロンドンに居て地下鉄に乗れば。そこがロンドンが空爆された時に何千人という市民の命を救った場所だということを、時々思い出す。深く掘られた、レンガで強度を補強された横穴―――防空壕の変わりだね。そこがまだ普通に使われているってことが凄いと思う。もちろん、新しく開設されたラインとか駅とかもあって、補強もされていれば模様替えだってされているから、どこででも感じることではないけどさ」
最も滅多に地下鉄に乗ることもないんだけどね、と小さくセトが笑う。

「戦時中、疎開で祖父の所に移り住んだトムという少年の物語でしたよね」
補足する意味で言えば、ハハ、とセトが笑った。
「さぁすがベン・バラード。博識だねえ!」
「先程ちらっと確認しましたから」
「そうか。うん、ありがとう―――そう。トムと戦争の話し。オレはトムの見てた風景にすごく感銘を受けたんだ。ほら、オレは12までアメリカに居たからね?生まれてから暫くはパリに住んでたけど。物心着いた頃には、ね。だからさ、初めて“イギリス人”ってものの見方を習ったのはこの本だったわけだ。トムはトムでもトム・ソーヤとかと全然違うところが楽しかったなァ」
「マーク・トゥエインの本ですね。確かに性格が随分と違いますよね。背景や風景は勿論、考え方までも」
「ウン。あの頃は早く馴染もうと頑張っていた頃だったから、トムの考え方や物事の捉え方とかを読み取れたのはよかったよ。言語的な言い回しとかもね」
「イギリス英語とアメリカ英語は同じではないですから、最初は戸惑われたことと思います――――いまではアクセントも流暢なイギリス人のそれですが」
「こっちで暮らしてるほうが長いしねえ。家族も親友も、オレがイギリスのアクセントで喋り出した時は吃驚していたよ。あとはブロンテ姉妹の本とかも読んだけれど――――イギリス人の厳格さってすごいよね、って思うよ」

ぱたん、とペーパバックを閉じて、セトが姿勢を起こした。
「じゃあ勉強繋がりでシェークスピアに移ろうか」
「解りました―――どうぞ」
ペーパバックを、セトの手の中にあったものと取り替える。
「あ、よかった。コンプリート・シェイクスピアの、分厚いハードカヴァが手渡されるかと思ってた」
「セトの自宅にあるのはそちらで?」
「それと、線引きとかがしてあるペーパバックもある。ハードカヴァの方は綺麗なまま置いてあるけどね」

ヘッドボードに背中を預けるようにして、セトがベッドに足を立てて座る。
大柄の猫が優雅に寛いでいる姿と連想して、ベックマンは小さく口端を引き上げた。
「数あるシェークスピアから、またなぜ“Romeo and Juliet”なんです?」
「んー、これはね。バレエにもなっているし、シェークスピアの作品の中では取っ掛かり易い作品だからかな。ドラマティックな構成も見事だし、悲劇の顛末としては秀逸じゃない?FarceとTragedyがいかに紙一重かっていうのも解るしね」
「ご自分の経験では、こういうドラマティックな恋愛の経験はありますか?」
く、とベックマンが口端を引き上げたのに、くすくすとセトが笑った。リカルドがぱちくりと目を瞬いてから、静かに笑みに口角を吊り上げ、シャッターを切った。
セトが一息を置いてから、答えを返す。
「我を忘れるくらいに誰かと恋愛するっていう経験は、幸運なことにあるけど。それは決して禁じられた恋愛ではないし。もしこういった状況に自分が在れば――――そうだね、命を賭けることを怯んだりはしたくないよね。足掻かなかったことを後悔したくはない……例え、その結末が死で終わったとしても、ね」

にっこりと笑ったセトに、静かにベックマンが頷いた。
「恋愛はどんなに穏やかであれ、当人たちにとってはドラマティックなものですからね」
ベックマンの言葉に、くすくすとセトが笑った。
「相当にロマンティックだね、オマエも」
くぅ、と口端を引き上げて、それを返事にする。

「それじゃあ、三冊に関する話が終わったところで、読書全般についてお聞きしましょう――――普段はあまり本は読まれない?」
ベックマンが問いかけると、セトは僅かに首を傾けた。
「どうだろうね。飛行機とかの移動時間に、時々ペーパバックを読むけれど。自宅に居る時はあまり読まないかもしれない。バレエに物語があったりしたら、それを読み込むし、解説とかも読む。著名な振付師の本やインタビューも読む。でもそれだけだね」
ベックマンが静かに頷く。
「ミステリィやスリラー、ホラーやファンタジィなどは?」
「ミステリィとスリラーはジェンのオススメを時々飛行機の中で読むけどね。ホラーやファンタジィは今も昔もあまり読まないなァ……トールキンも途中で投げ出したし、キングとかはもう全然。エンデは確か最後まで読んだけど、あまり覚えてないな。グリム兄弟とかフェアリーティルは幼い頃に少し読んだけど、それくらいだね」
なるほど、と相槌を打って、姿勢を胡坐に変えたセトに微笑んだ。

「ではサイエンス・フィクションなどはどうでしょう?」
「SFも読まないなぁ……科学の発展とか、“もしも”話しに興味が無いのかもしれない。壮大な宇宙ファンタジィとかタイムトラベルとか……うん、興味が涌かないなあ。今後バレエにそういう演目が出来たら考えるけど、今のところは手を伸ばして読みたいとかは思わない。そういった映画にも興味ないしね」
セトの説明に頷いて、話しを変えた。
「では歴史をベースにした物語とかはどうでしょう?マリー・アントワネットの生涯やロマノフ家のもの等様々ありますが」
ベックマンの質問に、セトが笑って首を横に振った。
「それにも興味がないな。もちろん、素敵なものもあるんだろうけど。ついでに言うと自伝も読まない。周りに功績を評価されて、その評価こそに意味があると思ってるから。それが偉人のでも、セレブレティのでもね」
「では将来自伝を書かれることは?」
「AutobiographyもBiographyも断るよ。バレエ関連だけに終始していたら考えるかもしれないけれど、プライヴェートなことは隠しておきたい。踊っている風景の写真集に解説をつけるくらいならやるけど……でもそれは引退してから手を付けるべきことだと思う。バレエダンサとしての軌跡は残しておくのに吝かではないけど、個人としてのオレのことは、全く曝したくないな」

出版業界に対して牽制しているのかもしれないな、とベックマンは思いながらもにっこりと笑った。
「編集長が残念がると思いますよ」
ふふ、と小悪魔のように妖艶に、セトが小さく笑った。
「残念がられてもちっとも困らないよ、オレは」
「セトはご自分の中の優先順位がはっきりとしている方ですよね」
「そう――――最近、ちょっと順位変動があったけど」

今度はふにゃりと蕩けて甘えた笑みを浮かべたセトに口端を引き上げる。
「そうなんですか?」
「ウン。この間までは何があってもバレエ、だったんだけど。いつの間にか、恋人がそれ以上の存在になってるって気付いて」
「“ボレロ”の前後ですか?」
ベックマンが聞けば、くう、とセトが目を大きく見開いた。
「なにオマエ、観に来てたの」
にっこりと笑ってベックマンが頷く。
「丁度スペインに用があったもので」
「ああ、そう――――そうなんだよ、ウン。恋人のためならバレエを辞めてもいいかな、って思った。もちろんオレの恋人は、バレエダンサのオレのことも好きだって言ってくれてるから、そういう事態にはならないだろうけどね」

ふわふわと柔らかな笑みを浮かべたセトを見詰め、ベックマンは小さく微笑んだ。
「優先順位、という話しなのでそのままお聞きしますが。本はセトにとってはどれくらい重要なものですか?」
「うーん、そうだねえ……時々食べるご馳走、くらいかな。オレはほら、ダンサーだから。そんなにご馳走とか食べないし、実はあんまり食べたくなることもない。けど時々素敵なご馳走を食べれると気分が良くなるし、ちょっとした気分転換にいいってところが同じかな。あたりハズレが激しいのと、激しい好みがあるってところも一緒だと思うし」
にっこりと笑ったセトに、ベックマンもにっこりと笑みを返した。
「長時間お付き合いくださいましてありがとうございました。以上で終了です」
「はーい。お疲れ様」

ぐい、と伸びをして、足を崩したセトがぺたんとベッドに前のめりになった。
「うーん、頭使った」
ふにゃりと微笑んで見上げてきた表情がコケティッシュな猫めいていて。つい手を伸ばした頭を撫でたくなる衝動を堪える。
代わりにリカルドが真横にしゃがみ込んで、なにか頼みごとをしていた。
「いいヨ――――このまま伸びればいいんだよね?」
くすん、と笑ったセトが、する、と両脚を軽く伸ばして、ベッドカヴァに懐いて目を閉じた。
その様相が日向で眠る大きな猫のように見えて、ベックマンは小さく笑う。

ぱしゃん、とその絵が切り取られていって、リカルドがセトに、アリガトウ、と声を掛けていた。
ぱち、と目を開けたセトが、真っ直ぐに見上げて来て。ベックマンは首を傾げた。
子供のようにあどけない声で、セトが訊いていくる。
「なァ、ベン。……オレってそんなに面白い被写体かな?」
ふ、とベックマンは小さく微笑んだ。
「造作が美しいだけではなく、最近は富に表情が柔らかいからでしょう。引き込まれそうな魅力がありますよ」
「柔らかい、かぁ……あー…うん、そうかも。最近オデットとかオディールの気持ちも共感できちまうんだよなァ」

呟いたセトがすい、と起き。立ち上がって衣装を直し始めた。
「ハイ、メイク落とし。アルトゥロがハニーワックスとかで作ったヤツだから、肌にはいいよ。アフターケアはこっち。残りはセトにプレゼントするから、気に入ったら持って帰ってナ」
リカルドが小さな籐の籠に入ったセットをセトに渡していた。わお、と言ってセトが受け取る。
「何から何までアリガトウ。じゃあいま試してみるよ。アルトゥロってオトモダチか何か?」
セトが首を傾げたのに、リカルドが小さく微笑んで首を横に振った。
「兄貴」
「あ、そうなんだ?―――――そういやオマエ、弟ってカンジだもんな。ベンはどうなんだろう……よく出来た兄貴タイプ?」

すい、と視線を投げられ、小さく頷く。
「よく出来たかどうかは知らないがな」
「ふぅん。まあ色々あるよね――――じゃあちょっと失礼してくるよ」
セトがバスルームに消えていき。てきぱきと後片付けを始めたリカルドを一度見遣ってから、自分の物も片付けにかかる。
本だけはダイニングのテーブルに出しておいて、サインペンを横に置いておいた。
リカルドがポラロイドをその横に置き、小さく笑った。
「セトってすっごい優しいオトナだよな」
「ン?――――あぁ。ウサギチャンもあんなカンジなのか?」
「ウン?……少し違うかな。セトの方がもっと踏み込む位置を弁えてる。サンジはもっと感情的なんだ」

「リカルドのお兄さんの石鹸とローション、すっごい気持ちがイイ。喜んでもらっていくよ」
そう言いながら顔を洗い終わって出てきたセトが、ダイニングのテーブルに置いてあった本とカメラを見て笑った。
「証拠写真つき?しかもポラ?」
セトの問いにリカルドが答えた。
「日差しに曝しっぱなしだと消えるってところでセトが妥協してくれるかと思って」
「アハハ!お気遣いありがとう。3ショット?」
「そう。オーソドックスにサインしたページを開いてるところを三枚。いい?」
「いいよいいよ。一体誰が応募するんだろうねえ?」

クスクスと笑ったセトが、さらん、と後ろで括っていた髪を解いた。
先端が柔らかくカールした髪が、肩にふわりと広がった。
「インタビューの間は括ってたから、ポラはちょっと趣向を変えようね」
「お気遣いありがとう、セト」
「これくらい――――オレのサイン本なんて欲しがる貴重な人たちのためにね」
ぱちん、とウィンクされて、くっくとベックマンは笑った―――なんて“チャーミング”な人だろう、と何度目かにして思う。

さらさら、とカヴァのところにサインと日付を書き、短いメッセージ――――“May you and your loved one’s life be wonderful(貴方と貴方の愛する方の人生が素晴らしくありますように)”―――――を添えたところで、リカルドが一枚ずつ丁寧に本をサインのところで開いて持ったセトを写していった。

浮かび上がった写真を三人でチェックしてから、インタビューをあっさりと終えた。
「セトはこれからどうなさるんですか?」
「ジェンと合流したらランチ食べて。夕方からレッスンなんだ、それまでは買い物にでも行こうかと思って。オマエらは?」
「特になにもありません。お時間があるのならばジェンさんもご一緒に4人でランチにしませんか?」
セトが目を煌かせて笑った。
「いいネ。場所はオレが決めても?」
「素敵ですね、お任せします。ただし会計は出版社に持たせますが」
「――――オ。じゃあチョットいいところにいこうか」
クスクスと笑ってセトが携帯電話を取り出す。

「ジェンと合流する場所を決めたら、ちょっとダーリンに連絡入れさせてナ」
「ええ、勿論」
ふわ、と艶やかに笑って、セトが携帯電話をフリップさせながらベッドルームの方に行っていた。
す、と総ての片づけを終えたリカルドが、隣に並んだ。
見遣ると、に、と口端を引き上げてくる。
「なんだよ」
「オマエもあのヒトの前だと、優しくなるな」
「そうか?」
「ああ。そういう魔法をウサギチャンも持ってた」
「―――――ナルホド。癒されるわけだ」
「ああ。胸が痛まなかっただろう?」

煙草を吸いたそうにペンを咥えたリカルドが、柔らかに目を細めた。
兄か弟か、という話をした時に、サラのことを思い出しはしても。確かに胸が痛まなかったことを思い出した―――――むしろさらりとしている。
「……西の王様が手放せなくなるわけだ」
そう言えば、リカルドが、く、と笑った。
「あのヒトにああいう風に愛されたら、誰だって手放せなくなるさ」

サインを入れてもらった本を一冊ずつ紙袋に入れて仕舞っていれば、お待たせ、と戻ってきたセトが小さく笑った。
「しまった、さっきのウサギの絵本の話し。言い忘れてたことがあるんだけど」
「どうしました?」
「うん。オレはね、ずっと大きなウサギであろうとしてきたんだけど、今の立場は小さなウサギなんだ」
「伝え切れなくて眠ってしまうちびうさぎですか」
「そうそう。でもちっちゃいうさぎで居ることも、なかなか素敵なんだ、って。言い忘れてた」

にっこりと笑って最高に甘い笑顔を浮かべたセトに、小さく笑った。
「今度恋人さんに読み聞かせてみるのもいいかもしれませんね。それで同じことを仰ってごらんなさい」
「んん?んー」
ふふ、と笑ったセトが、それをもう実行していたことに気付いた。
「結果がどうでしたか、なんて聞きませんヨ?」
「言わないヨ。でも今度、オマエもヤッテミロ。オレもオマエがでっかいウサギなのかちっこいウサギなのかは訊かないけどサ」
ぜったいちびウサギのほうが幸せだよナ、とそれはそれは朗らかにセトが笑った――――リカルドと顔を見合わせ、こっそりと呟く。今のが今日最大の惚気だよな、と。




FIN



(*前にもどっかでオススメしまくった記憶のあるサム・ブラットニィ作、アニータ・ジェラム挿絵の絵本、「どんなにきみがすきだかあててごらん」をダシにセトちゃんに惚気まくってもらいました…それがこの話しのメインポイント<オイ。雄のウサギ同士だと思って読むと鼻血モノな絵本です。出版社の回し者に自分から志願したいくらいに、可愛くて素敵な絵本を久しぶりに読んで、あまりのラブっぷりにセトちゃんに紹介してもらいたくなりました…<笑。セトちゃんの意識の中では、自分がちびうさぎ、わんこがでかうさぎ、らしいですが。わんこの意識ではどうなんでしょう…?疲れた時に癒してくれる絵本なので、興味を持たれた方は是非お買い求めくださいナ。英語版としかけ絵本もあります。大判とミニブックもあります…ぜひぜひ。でもって、セトちゃんがわんこに、「こっちオレ、でっかいのオマエ」とか、蕩ける笑顔で寄りかかって言ってるところでも想像してください<笑。弟妹はベビーベッドでお休み中なんだろうな……コロラドの実家でいちゃこくわんこと王子。素敵じゃなーい<ヲイ>