■ 明け方の空 ■



















11月11日。

何故か前日の夜から、夜を徹してのバカ騒ぎ。

「12時になれば一番の年長さんだなぁ」なんてルフィが笑いながら言っていた。
ウソップは、何も用意できなかったのがよっぽど悔しいらしく、
次の港で材料買って、何か作る、と意気込んでいる。
ナミは特に何も言ってなかった。
ただ、何時に無く上機嫌でいつものように俺と呑みくらべをしては笑っていた。
ビビはやたらと折り目正しく律儀に「これからもよろしくお願いします」と変な挨拶をしていた。
よろしくも何も、同じ船に乗ってるんだから当然だろと思うものの、
何か妙な気迫に押されて何も言えなかった。



サンジとは、まだ話してない。



あいつは料理だのなんだのに忙しそうに走り回ってたから。
時々目が合うと、嘘みたいに上機嫌に笑ってみせていたからきっと機嫌は良かったんだろう。



それでも、やっぱり何か物足りないと思ってしまうのは悪い事だろうか。



やっと皆が船室に引き上げた今になっても、俺は灯りの燈ったキッチンから目が離せないで居る。








今にも夜が明けんとする空は、その場に漂う空気すらも換えてしまうようだ。

水平線の向こうから漏れ来る光。
それが空を蒼く変え、白々とした道を作る。

もう、何度となく見たはずの景色。
誕生日だからって特に変わったことの無い景色。

今誰かが生まれようと、昔誰かが生まれていても、こうして変わらず光は訪れる。

誰かが死んでも、誰かを亡くしても。
きっと変わらず時間は流れていくんだろう。

今までと同じように、少しも変わらずに。

一年後の今も、十年後の今も。


こうして始まる一日に、見惚れるのはきっと変わらないんだろう。





「ゾロ」





そして願わくば。





「……誕生日、おめでとう」






この声が、変わらぬ朝と共に。

これからも傍に在りますように。







「生まれてきてくれて、ありがとう」







ただ、願う。











































END.


静かに明けていく空。
…いいなぁ。




BACK