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 Super Duper Love
 
 
 
 なにもない月曜日の朝。
 部屋には一人きり。
 開け放した窓の外、クリアで真っ青な空を飛ぶジェットエンジンの甲高い音が聴こえる。
 
 街のザワメキ、クラクション。
 エンジン音、トラック、車、バイク、トレーラ。
 風音―――目を開ける。
 今日もいい天気だ。
 
 だらん、とソファから半分落ちるような格好のまま、空を見上げる。
 普段はぼやけた世界でも、あの青だけはなぜかクリアだ。
 今日は優しい色、太陽は力強い、―――ぞろミタイダ。
 
 側に居て笑ってくれる、抱き締めてくれる、愛してくれる―――ゾロが太陽で、降り注ぐのはフレアのように激しくて眩しい愛情。
 だって途方もない暗黒のような空間を照らしてしまえるんだよ……?
 誰にともなく呟く。
 惑星を照らして、その光りの反射すらも暗闇を突き抜ける―――なんて、エネルギィ。
 
 くすくす、と。意味もなく笑いが零れる―――オカシイナ、酔っ払ってないのにネ?
 
 まだ昨夜に愛された名残が、身体のあちこちで主張している―――溜め込まれた熱。
 それがじんわりと体中に広がって、一日中包んでくれる。
 
 オカシイネ―――イッテキマス、ってキスを貰ったのはたった1時間くらい前のことなのに、もうサミシイヨ……?
 
 太陽を見上げる―――あの炎の色だと思う、抱かれている最中にゾロの中に見つけるのは。
 身体を突き抜けるフレイム・バースト、焼かれる、あの色に染まって、目が眩んで、熱に溺れて、溢れて………。
 
 降伏する、何度でも―――幸福になる、何度でも。
 
 ハ、と。
 息が零れる。
 心臓、ペースを上げて―――思い出す、指先の動き、甘い口付け、力強い抱擁、齎される灼熱、降り注ぐ言葉の欠片、真っ直ぐに見詰めてくる緑の双眸……。
 ピクンと指先が勝手に跳ねた―――う、わ。
 
 ぞく、と。
 背筋を走り抜けた衝撃の強さに、思わず息を呑む。
 残された熱が、それこそフレアのように吹き上がってきたみたいだ。
 
 トクトクと早いペースで、心臓がリズムを刻む。
 身動きが取れずにいる―――こんなに甘ったるく身体があるから、動かし方を思い出せない。
 「……ンん、」
 
 ―――イキナリ。
 音が溢れた―――エ?
 ドラム・ビート、ギター、ベース……それから、ゾロの声。
 
 「あ、」
 遅い時間にセットされた目覚まし代わりのステレオから音が溢れていく。
 回しっぱなしだったチャンネル、ラジオ、前にトークでゾロたちが出るからって合わせたままだった……。
 
 習い覚えたリズム、ビート、音、歌声―――目を瞑る。
 歌詞、耳元でも落とされたコトバ、ゾロのソールのカケラ、届く、染み込んで―――内側で蕩ける。
 音が色を帯びる、容を取る、ステレオから溢れる、捕まえて齧れそう、手を伸ばす、捕まえる前に満たされる、行き渡る、埋められる、溢れて―――。
 
 「―――っ、」
 
 ゾロが放ったエネルギィは。側に居ない時も直ぐに届く場所にある。
 優しくて、力強い。
 甘くて、容赦が無い。
 徹底的に浴びせられる―――また降伏する、愛情に。その真っ直ぐな強さに。
 それはなんて完璧な降伏で、なんて甘美な幸福なんだろう。
 
 うっとりと笑う、見上げた先には甘い青と明確な太陽。
 ―――アレに愛されてるんだ。
 真っ直ぐに手を伸ばしても、捕まえられないあのエネルギィの塊に。
 ―――愛されている、愛している、愛し合っている。
 
 He is my lover man―――and I’m so proud to be his only lover.
 最高の愛情の独り占め、抱き締めることが出来る自分であるのがウレシイ。
 
 体勢を崩して半ば寝そべりながら、腕を伸ばす―――リーチの先には小さなラウンドテーブルに乗っかった電話。
 ミーティングならオフにしている筈。スタジオでセッション中なら繋がらない。
 繋がったら幸運だと思って―――セルに電話をかける。
 
 繋がらなかったら別にイイ。
 ただ一言いいたいだけなんだし―――機械的なヴォイスが区切れるのを待つ。
 
 ―――ゾロ?あのね。
 溜め息のような吐息を零してから音にする―――灼熱に蕩けたチョコレートみたいな声だ。
 
 「……アナタを愛してるヨ、」
 
 それだけをメッセージに残して、通話を切った。
 ゾロに会いに行きたいけれども、蕩けきった身体は言うことをききそうにないよ……?
 
 くすくすと勝手に零れ落ちる笑いを空気に溶かしながら、うつ伏せになって青空を見上げた。
 羽があったら、このまま飛んでいくのにネ。
 「………どうしよう?」
 本気で悩んではいないけれども。
 
 ラジオでオンナノコがソウルフルに歌っている。
 
 『―――Your love is super, oh baby
 I’m trying to tell you
 Your love is super duper―――』
 
 甘く優しいノートが消え失せて。
 優しい青空には力強い太陽だけが残った―――目を瞑っても、そこに在り続けるエネルギィの塊。
 
 知らず知らずの内に笑みが口端に浮かぶ―――すぐ側にいなくても愛されてるの、解るよ…?
 Because your love is super duper―――最高の愛を、いつもアナタがくれるから。
 What more can I ask for?―――他に欲しいモノなんてナイヨ。
 
 「………早く帰ってこないカナ、」
 空に溶けてしまえそう。
 指先で太陽の輪郭をなぞった―――ゾロのソールのほうがきっと熱いね……?
 
 さっき聞いた歌のリフレインが頭に戻ってくる。
 “―――Yeah, I’m diggin’ on you”
 くすっと笑って目を閉じた。
 “―――そうだよ、アナタに夢中なんだ”
 
 “‘Cause your love is super duper.“
 
 
 
 
 
 ♪FIN♪
 
 
 
 Josh Stone聴いてたら、書きたくなった幸せぽにゃな小話。
 まぁったく、ぽにゃったらぞろのあにぞっこんなんだからぁ、と思わず裏拳でツッコミ入れたくなるようだったらオーケイv(何が<笑)
 ↑
 武藤嬢のコメントに、私は平伏しました。だって……!!ぽにゃ!!ハニィちゃんなのは知ってたけどー!!!
 うわああ、ゾロノアめ、愛されてんじゃねえかあ!とげしげしげし、とあのイカレガキの後ろ頭を連打したい>こら。
 
 
 
 
 
 
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