* 27*
―――1年後―――
朝、返却期日がギリギリになった資料を返しに大学の図書館まで出かけたときには回っていなかったスプリンクラーがアプローチのグリーンの其処此処で虹を作って煌いているのにヴァンがサングラス越しに眼を細めた。
新しい家に越してきて、ちょうど半年ばかりが過ぎていた。
ホテルのレジデンスフロアにあった部屋から、ショーンが知人を通じて探してもらった、とアタリマエのように言って、ぽん、とデスクの上に乗せられた書類に挟んであった写真と住所にヴァンが、へ?と驚いてショーンを見上げていたのは一緒に暮らすようになってから一ヶ月ほどが過ぎた頃だった。
ハリウッドヒルズ?と言って、ヴァンは笑っていたのだけれども。実際に此処に移ったのは春先だった。
スタジオを作らせたり内装に手を入れたり、プールをもう少し深くしてもらったり、ほとんどリノヴェーション同様のことをしたわけだから、それでも工期は早いのかもしれなかった。
あのホテルの部屋も、実際は好きだったんだけどな、とこっそりとヴァンは思っていた。なにしろ、いろいろな“ハジメテ”が引き起こされた場所だったし、と。
アプローチをそのまま通り抜け、ガレージに屋根のないオレンジ色のランチアを入れて、隣のスペースが空いているのにヴァンがちらりと眼もとで微笑んだ。
「いっそがしいの、ショーン」
おれ、あんたの顔もう三日みてねぇよー、と呟いてみる。声は、たくさん聞かせてもらえてるけどさ、と。
「わかっちゃいるけど……やっぱ寂しいよな」
ふぅ、と息をひとつ短く吐いてからナヴィシートに放り込んだカバンを引き上げて家へと戻る。
ワーカホリックだ、とショーンが自分のことを言っていたのはなにも誇張でもなんでもなくて、本当のことだった。
そのことは、別にいいんだ、とヴァンは思っていた。
おれはショーンの作る音がスキだし、なによりショーンが夢中になってしているんだから、と。
何度か、以前も頃合を見計らってスタジオにショーンにナイショで遊びにいったりもしたけれども。それはここまで“佳境”にあるときにしたことはなかったし。
朝、電話で話したときも、明らかに徹夜明けだとわかるくらい、タバコとコーヒーで掠れた声だったことも思い出す。
「きょうも多分無理なんだろうな、」
戻れないだろうなあ、と呟き。寝室に着替えに行く。
窓から入りこむ午後の陽射しはまだ酷く強くて、ふ、と。ここがロスなんだなと思い至らせた。9月とはいっても、いつもここは暑いし。
さっき眼にした小さい虹の輪っかが思い浮かぶ。
プールに飛び込むよりは、それを作って気分を紛らわせる方が魅力的に思えた。
「要は、あんたがいないから寂しいんだよ」
そうこっそり言葉にし、左手にいつもしているリングのひとつに唇で触れてみる。
贈られたときには酷くビックリして、思わず泣きそうになったソレに。
さらりと着ていたTシャツだけを首から抜いて、ハーフパンツはそのままにバックヤードに出る。
肩に、夏の日差しがあたってヴァンがにこりとした。
「水遊びには丁度いっか、」
庭を横切って、ガレージまで進んでいき、ホースを引っ張り出しながら咥えたタバコに片手で火をつける。
そのまま芝の真ん中まで、水が通り始めて重くなってきたホースをハナウタを歌いながらずるずるとひっぱっていき。ホースの先を指で押さえながら、勢い良く水流が飛沫になって散っていくのに、機嫌よく口元を引き上げていた。
さあっ、とミドリの上を水滴がちっていき、木の根元にあたり跳ね返り。
「あ、虹できた」
ヴァンの機嫌はすっかり直っていた。
これだけ寂しいってことは、もっと愛してるってことと同じことなんだろうし、ショーンといるときがそれだけ楽しいってことだよな、と。
*28*
「あ、マジで帰るんすか、ショーンさん」
目を丸めたアシスタント・エンジニアのデリックに言われて、ショーンはくうっと目を細めた。
「何が何でも帰るっつったろーが。いまの時間までに終わってなかったら、アレの責任だって」
ブースの中に入っていた比較的仲のいい大御所の一人を指差す。むう、とデレックが口を尖らせた。
「えええ。去年の首寸前事件の頃から、ショーンさんってば、すっごい有言実行派なんスけどぉ」
「知るか」
いい、と歯をむき出せば、ブースの中で休憩を取っていたアランがぶんぶんと手を振っていた。
『マジでオレ置いていくの、ショーン?』
ブースとモニタリング・コンパートメントを繋ぐスピーカから、柔らかな声が響いてきた。
「ド阿呆。オレは今からきっかり10時間、死んだものと思え」
『ええええ、横暴!!』
ブウウウ、とサムズダウンをしたアランに、中指を突き立てる。
「オレの居ない十時間の間に頭冷やして撮れる状態にしとけ」
『マジですか』
「マジだよ。このままダラダラやってたって終わらないだろうが!シャワー浴びて寝て来い」
横暴、アーティストの敵、薄情者、と笑って言い募るアランの首を掻っ切る仕草をして、財布と携帯と車の鍵をデニムのポケットに詰め込む。
横で座っていたデレックが、ピュウ、と口笛を吹いた。
「わお、本当に帰る」
「しつこいな、デリック。オマエはここで待機だ。アレが十時間以内に撮れるようだったら、オマエが撮っておけ」
「わ、いいの?」
「その代わりチェックして使い物にならなかったら左遷するからな」
「ぎゃああっ」
仰け反って死んだフリをしたデリックに笑って、ひらりと手を振ってスタジオを出る。
エントランスで長年の友人のカインに捕まった。
「あ、なあショーン、もう終わったんだ?早いじゃん?メシ行かない?」
「いかない」
警備員に帰る旨を告げれば、あらフラレチャッタ、とカインが笑った。
「なんで?」
「抜け出したんだよ」
「あはは!そりゃまたナンデ?」
きらりと目を光らせたカインは、現在ショーンがヴァンと一緒に住んでいることを知っている数少ないニンゲンだ。ヴァンがショーンの特別であるということを知っているのも。
「一周年なんだよ」
「あら。ハニィちゃんとの?」
「そ。だから引き止めてンな」
ポケットから車の鍵を取り出しながら歩き出したショーンに、カインは笑いながら手を振った。
「ショーンがそんなに素敵なダーリンだとは知らなかったよ」
アニバーサリィなんてクソクラエとか言ってたくせに、と笑い声が追いかけてきたのに、ひらりと手を振った。
「相手による」
「いやぁあああん、ショーンが素敵ダーリンになっちゃったあ!!」
げらげらと笑って言ったカインに、ハ、と笑ってパーキングに向かいながら携帯電話を取り出す。サングラスを掛けながら、ジュエラへの短縮番号を押した。
「スパロゥです。いまから引き取りに行きますんで――――ハイ、10分もしたら着くかと。よろしく」
オーダしておいたジュエルを引き取りに行く旨を伝えてから、車に乗り込み、もう一回短縮番号を押す―――――今度はヴァンへだ。
「………出ねぇ」
エンジンがかかってクーラーが効き出したところで、コール音が留守電に変わり、通話を切った。携帯電話の日付を眺めて今日が土曜日であることを確認し、片眉を跳ね上げる。
「……シャワーでも入ってンのかね?」
電話を助手席に放り出して、左右を確認してから車を走り出させる。
そして電話しておいたジュエラに寄り、待たされることなく品物を確認してラッピングをしてもらい。もう一度ヴァンに電話をしようか一瞬だけ迷ってから、結局はコールせずに車を走らせた。
昼の陽射しがまだ眩しい中、奇妙に気分がそわそわとする。
1周年という日を家で過ごすために仕事を詰めた結果、3日もヴァンの顔を見ていないことになる。
シングルの頃には、何日スタジオで缶詰になっていようと気にしなかったものだけれども――――――ヴァンが、寂しがりやだから。その分、気になる。
気になったら直ぐに電話するようにしていたけれども―――――今朝の話しぶりでは、随分と寂しいゲージがHIGHのほうに傾いていたように思える。
連れ帰って、あの子を初めて抱いてから1年が経ったのだということに、気付きもせず―――――ただ、会えないことを寂しがっていた。できるだけ、それを押し隠そうとはしていたけれども。
晴天のロサンジェルスにあの子を連れてきたことを、いまは後悔していない。
ただ、ハリウッドヒルズに家を買おうとした時に、広すぎるから寂しい、と言われたことだけが気になっていた。
ヴァンが寂しくないように、叔父に一緒に住まないかと申し出たこともあったけれども。叔父は眉毛をひょいと引き上げ、
『パトリック、私の精神の平穏のためにもあのあまったれモンスタァと暮らさせないでくれ』
そう言って、に、と笑っていた。
『キミがなんとかしなさい』
そう言い足して。
広い家でなく、狭い家でならヴァンが寂しくないかといえばそうとも言い切れなかった。
アパートのような場所で他人の介入があるところは、たとえ都市部が同性愛に寛容とはいえ、避けたかった―――――そもそもショーンには近所づきあいをする気もなかったし、できればヴァンにもして欲しくなかった。
『アンタがそんなに心配性だとは知らなかったわ』
そう笑ったのは、高校時代のバンドメンバーの一人のガールフレンドで、珍しくショーンにとってはただの友達であるエレインだ。
インテリア・コーディネータで、ショーンの家を探すのを手伝ってくれた彼女は、今住んでいる家のリノヴェートも手伝ってくれた上に、家具のセレクトまでしてくれた。
『むしろ、アンタみたいなロクデナシだから、心配性になるのかもね?世の中、どんなにヒドイ連中が溢れているか、知っているわけだし?』
ヴァンも懐いているエレインは、そう言って今の家を完璧に仕立ててくれた。
ホーム・セキュリティがしっかりしていて、近くにはこの区域一体で共同で出資し纏めて地域を管理する管理人が在住する、なんていうオマケ付きで。
交通の多い道路を外れて、住宅街のほうに車を走らせる。
ハリウッドヒルズの端に立つ自宅のゲートをリモコンで開けて、フロントに車を走りいれる。
すい、と虹が庭にかかっているのが見えて、ふ、と見遣ればヴァンが水遣りをしていた。上半身は裸で、下はぶかっとしたハーフパンツだ。おまけに素足。足首には、革の編みこみのアンクレットが回されていて、ショーンはくぅっと笑った。
ガレージの前で車を停めて、携帯電話と小さな箱をデニムのポケットに詰め込み、車を降りる。
あ、と車に気付いたようだったヴァンが、ホースを手に持ったままくるりと振り返って笑った。金色の髪に眩しい陽光が反射して、まるでハロウのようだ。
ぱ、とヴァンがホースを放り出して、小走りで前庭を横切ってきた。その飛び跳ね方がまるでウサギのようで、ショーンは笑った。
ホースからは水が烈しく吐き出され、芝の上で飛び跳ねていた。
間近まで来たヴァンが、ひょい、と顔を覗きこんできて、にこにこと笑った。
「“ダンナさんダンナさん”、カーウォッシュいかがデスカー」
わざとアクセントをつけた喋り方に、く、とショーンは笑った。耳の上からタバコが飛び出しているのを見て、また笑う。
そして両手を広げて、ハニィ、と呼びかけた。
「車じゃなくて、付き合え」
顎で家の方を示す。
「あ、じゃ水トメナイトネ、ワタシ無駄しないヨ」
妙なアクセントを、ぎゅう、とショーンの腕に抱きこまれながらヴァンが笑って披露した。
「いーい心がけだ、ところでオマエ、そのアクセントなんだよ?」
ヴァンを抱き締めたまま、芝生を横切ってホースに繋がったタップのある方に歩いていく。
「メキシコのコドモのマネだよ?」
きゅ、と目元で笑っていたヴァンの頭に、トン、とキスをした。
「オレのハニィバニィはメキシカンだったのか?」
「Naaaaaaaaa」
笑ったヴァンの頭を軽く指で突いてから、タップを止める。
「で、今日はどんな一日だった?」
今度は家のほうに歩き出しながら顔を覗き込めば。
「あんたに会えるとは思ってなかったからビックリした日」
とん、と伸び上がって口付けてきた子を笑って抱え込んで、まずは深いキスをする。
明るい日差しの下で、誰も気にせずにヴァンをこうして抱き締められることに、このロケーションの家を多少無理して買ってよかったと思う。
フツウの住宅街の前庭では、さすがにヴァンとディープキスをしたら地域一帯の顰蹙を買うだろう。ゲイ・フォビアのアンチ・ゲイどもになにをされるか解らないし。
とろりと甘い舌を堪能してから、リヴィングに面したガラス戸の方から家の中に入った。
陽光をしっかりと取り入れた明るい家の中でヴァンを見つめる。
「ただいま、ヴァン」
ふわ、とヴァンが微笑んでいた。その頬をさらりと撫でる。
「オカエリ」
むぎゅう、と強く抱き締められて、笑って強く細い身体を抱き返す。初めて抱いた時よりは少しがっしりとして背も伸びたけれども、ヴァンの身体はショーンによく添った。
少し身体を離して、トン、と額に口付けをし。まったくなにも気付いていないヴァンに、にこりと微笑みかけた。
「ヴァン、オマエの左手を伸ばして、バックポケットにあるものを取って欲しいんだけど」
きょとん、と見上げてきたブルゥアイズを心の底から愛していると何千回目かの確認をしてショーンはふわりと微笑んだ。
そして、ウン、と頷いて、ショーンを見上げながら手を伸ばしたヴァンの頬を柔らかく掌で包んだ。
「さて、ベイビィ、質問だ。今日は何の日だっけ?」
*29*
きょう?とヴァンが首をまた傾げた。
「そう、今日」
にっこりと微笑み返され、む、とヴァンが眉根を寄せた。
9月の二十日を過ぎていて。大学は新学期が始まって、ロスは相変わらず暑い。
去年の今頃は―――――――と、ここまで考えて、ン?とヴァンがまた眼を細めた。
ショーンが会いに来てくれたのは9月の半ばを過ぎた頃で……いま、身に着けているリングは全部ショーンがくれたものだったけれども、例えばロスに住むようになってすぐにまずヒトツ、半年が過ぎたころにもうヒトツと、ここに引っ越してきたときに―――あれ?
――――――――――あ。
さあ、とヴァンのブルゥアイズが見開かれ。くぅ、と笑みを深めたショーンをじっと見上げて、ヴァンがゆっくりと瞬きした。
「………ロスに来てから、もう丁度一年経ったんだ……?」
ひゃあ、とヴァンが小さく声を上げていた。
「今日で?」
「そう」
言葉と一緒に、まだ鮮明すぎるほどくっきりと残る“一年前”のことを細部まで勝手に思い出してしまい、ヴァンがまた瞬きしていた。
そして、目元に唇で触れられ。ふわりと甘い息が零れかけ。指先にあたる小さなボックスをバックポケットから引き出していた。小さいのに、適度な重みのある箱。
「ショーン、」
「んーん?」
「覚えててくれたんだ?」
目元が笑みを刻むショーンに呟く。
「一年たったなんてウソみたいだ、おれ全然―――――――」
「カインとエレインには笑われたんだがな?結果を言えば、忘れられない」
くう、と刻まれる笑みに見惚れていたなら、トン、と口付けられ。ヴァンが片腕をきゅ、と首に回していた。
腰で抱き締められたままでいることに、嬉しくなって勝手に表情が溶けっぱなしになっていることを自覚して。
「ものすごく、ウレシイ」
ぎゅう、と首元に額を埋めて、けれど顔が見たくてすぐに視線を跳ね上げていた。
笑顔にぶつかり、ショォン、と囁く。
「ギフト、開けてみて?」
唇に、トンとまたキスが落ちてきて、ふにゃりと笑みが勝手に浮かび。
「ウン」
くっついたまま、リボンを解き、小さな外箱を開けて四角い小さなボックスを取り出した。
重みと大きさから、きっとリングだナ?と予想しながら、わざと見上げ。ヴァンの眼がきらっと光を弾いていた。
「ありがとう、おれからもギフト贈らないとなあ…!」
腰を掌でなぞられて、息が零れそうになりながら、それでもじっと見上げ。
「ショーン、これ、なんだろう、ピアスとか?」
にこ、と在り得ない予想を立ててみる。
「ダメって言うの解っているクセに」
言葉と一緒に耳朶を軽く齧られ、ぴくりと背中が跳ね。は、と小さくわらって息を逃がし、ヴァンがゆっくりとボックスを開けていき。ほってりとしたヴォリュームのある、ホワイトゴールドのリングを見つけてショーンを見上げていた。
どう?と眼が問いかけてくるのに、口許に唇で触れ、すげえすき、と返していた。
ウレシイ、と。けれども。ショーンから齎されるものは、何だってうれしいから優劣なんてつけられないけど、と言葉にせずにおく。
「ショーン、」
上手く言葉にきっと出来ないかもしれない、と思いながらそれでも呼びかける。
「んーん?」
「なぁ、」
首を傾げて、優しい眼差しで見下ろされ。どうしようもないくらい、幸福感でイッパイになる。
「これ、嵌めて?」
「もちろん」
左手は薬指も人差し指ももう決まったものが飾っているから、右手を差し出せば。
指輪以外のもの、箱やリボンやラッピングの切れ端といった諸々をテーブルに置いて、ショーンが向き直ってくるのをいまかいまかと待ち構え。
するりと、どこか重たいソレが中指に嵌っていくのをじいっと眼で追う。
何のずれもなくキレイに収まり、手が引き上げられ。指輪の上にキスが落とされるのに、くすぐったくなり。
「My love always(オレの最愛)」
告げられた言葉に、息が詰まるかと思う。
「ショーン?」
「アィ?」
声が揺れていなければいい、と願いながらヴァンがそうっと唇に上らせた。
「あのな…?」
きゅ、とショーンの手首に手指を回した。
「おれのこと―――受け入れてくれてありがと」
毎日、すげえ…うれしいんだ、と。真っ直ぐに見詰められるままに眼をそらさずに言葉にし。ふにゃ、と。照れ笑いを浮かべ。
「ショォン、あんた、やっぱりさ。すげえ、“やさしい”よ」
くしゃ、と項のあたりに伸びかかる髪を柔らかく掴まれ、またヴァンが笑みを上らせていた。
「ヴァアン、そういうこと言わない」
「ナンデ」
はむ、と唇を食まれ、重なったままに問い返す。
「仕事抜け出してきたの、あと9時間あるけど」
「じゃあ9時間ずっとシてて?」
ひゃは、とヴァンがわらって両腕で首からぶら下がるようにして抱きつき。けらけらと笑い始めていた。
「耐久はちょっと辛いなあ、」
投げ出していたままのアシをヴァンが、同じようにわらうショーンの腰あたりに引き上げ交差させていた。
「ベッドルーム?」
「んん、バスルーム」
「わあ!」
くっくとわらって、首筋に顔を埋めれば。嫌か?と声が落ちてき、ぺろりと舌を伸ばして肌をなぞり。
「あ、汗かいてる」
「夏だし」
「セックシィでいいね、おれショーンの匂いスキ」
あむ、とまた首筋に歯を軽く立てて、唇を添わせるようにしていた。
くくっとショーンが笑う、そのトーンが酷く耳にキモチいい、と。シンクの上に身体を預けるように乗せられ、足を一度揺らしながらヴァンが眼を細めていた。
さらりと、ハーフパンツのストリングスが引かれるのに、うわ、とまたわらえば。
「オレはオマエが好きだよ、」
「ほんと?って聞くのは馬鹿だよね」
好きだ、と告げられてそれだけで幸福になる。問答無用に、自分はこの人が好きだ、と。
「バカでも愛してるよ、オレのハニィベイビイ、ヴァン」
「アイシテル、けどベイビィって言うな」
どこまでも甘ったれた声で、ヴァンがわらって言い募っていたけれども。
でもバカなのは仕方ないよ、だってバカじゃなけりゃこんなに恋しないんだろ?と。そして。
「あんたにいつだって恋してて、あいしてるよ」
そのことには、ぜったい迷わない。
Verry Happy END
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