Munter

「さっきのヒトって……カーラ?」
 くすくすと笑いながら、さらさらとウォレンのパーツを洗いこんでいく。
 身体を少しずつ落としていきながら、スポンジを拾いなおすのも面倒で、そのままソープを手にとって足を辿り降りていく。
「カーラって言うんだ、」
 少し揺れた声に、ちら、と視線を撥ね上げる。
「おまえと似てるね?顔の雰囲気」
「アレ、オレのねーちゃん」
「わぉ」
 ふにゃりと笑って、柔らかなブッシュの隣に口付ける。
「ビジンだろー?」
 息を呑んで笑ったウォレンの、爪先のほうまで手を伸ばしていく。
 片足ずつ丁寧に洗っていき、最後に、トン、と濡れたウォレンの中心部に口付けてから、身体を起こした。
「ん、」
 返事なのか喘ぎなのかわからない返事が戻ってきて、ふにゃりとトッドが笑った。
 ぺろ、と唇を舐めたウォレンに、ぴん、と思い付いて、トン、と心臓の上にキスをした。
「けどキスすんならカーラに訊けよ?」
「えええー?いつもかー?じゃあいい、面倒くせえ」
 柔らかい声が言ってくるのに、ふにゃりと笑う。
「じゃあカーラには頬にキスな?」
 両側から挟んでキスしたら、カーラ喜ぶかなあ、と呟いてみる。
「頬?つまんねぇって」
 目許で笑ったウォレンに、そうかなあ、と首を傾げれば、さらりと頬に触れられた。カーラ、から連想して、朝一番に言われたことを不意に思い出した。

「な。朝ご飯、食いに出ちまおう?」
「昼じゃん、」
「そ?」
 に、とウォレンが笑っていた。
「朝はもう喰ったもん」
 アハハハハ、とトッドが笑った。
「美味かったよ」
 あっけらかんと言い放ったウォレンが、トン、と唇に口付けてきたのに、する、と腰を引き寄せた。
「ウォレンのミルクも、美味かった」
 あむ、と柔らかく唇を啄ばんで、ふにゃりと笑う。きら、と目を煌かせたウォレンに、なに、と首を傾ける。
「照れてンのはオプションであんたの勝ち、」
 そう言って、にぃいい、と笑ったのに、くすくすと笑った。
「あのままシちまいたかったもん、」
 告げられて、すいん、と濡れたままの中心部を押し当てた。
「ファックするほう?されるほう?」
 きらきらと煌くブルゥアイズに、くう、と目を細める。一層きらめきを増したウォレンの双眸に首を傾げれば、に、とウォレンが笑った。
「あのときは、するほう」
「今日、座って歌う、って言ったけどさ。でもオレまだ立ってるよ?」
 足りてる?と目を覗きこむ。
「だって一回しかしてねぇもん」
 甘えた風に言ったウォレンに、くすりと笑う。
「今日でサ、フェスは暫くオヤスミだから。続き、スル?」
「どっちの、」
「どっちでも。気分が乗ったほう」
 甘い声に、同じくらいトーンを甘くして、口付ける距離で囁きを返す。
「お誘い?」
「ん。だって一緒に来るんだろ?」
 首を少し傾げたウォレンに、同じように首を傾ける。
「うん」
 あっさりと言ったウォレンが、さらに言葉を続けた。
「ぜーんぜん、問題ないぜ」
「だったらさ、したい方がしたいことをしようよ。今夜だったら、思いっきり好きなだけファックできるぜ?」
 ふにゃりとカオを綻ばせてウォレンに告げる。
「歌った後に、」
「そう。きっとオレ、また足りなくなるから」
 くう、と首を傾けたウォレンに、こくん、とトッドが頷く。
「それだったら、」
「んん?」
「おれ、喰われっぱなしな予感がスル」
 する、と濡れた指が頬から耳まで撫でていき、くぅ、とウォレンが唇を吊り上げていた。
「かもね?でもウォレンがシたかったら、いつでもいいよ」
 ぺろ、とウォレンの唇を舐める。
「そ?けどチャンスはいつでもあるだろ、」
「ん。ウォレンが一緒にいる間だけ、いくらでも」
 とん、と啄ばみ返されて、トッドが頷いた。

「なぁ、トーッド、」
「んーん?」
 柔らかなウォレンの声に、トッドも同じだけ柔らかな声で返す。
「いいかげん、のぼせる……、」
 はふ、と息を吐いたウォレンに、ふにゃ、とトッドが笑った。
「赤くてかわいいよ?」
 する、と身体を離して最後に湯をざっと浴びる。
 ファック・ユー、と。歌うように言っていたウォレンに、ふにゃりと笑いかけて、ぷるぷると首を横に振って水気を飛ばした。
「ウォレンとファックすんの、スキだよ」
「ふぅん、“歌”も?」
「うン」
 壁にくってりと寄りかかっているウォレンに、シャワーブースの外からタオルを取って、それをひょいと手渡す。
 それを手にとってカオを埋めていたのにちらりと視線を遣ってから、トッドも自分を乾かしにかかる。
 ずる、と少し身体を下に滑らせたウォレンに、ひょい、と手を差し伸べる。
「ウォーレン、あっちいって乾かそう。どうせホテルだしさー」
「んんん、」
 怒られない怒られない、と笑って手を引っ張る。くったりと寄りかかってきたウォレンに、くすくすと笑いながら、よいせよいせ、とバスルームの外まで引きずり出す。
「家じゃダメなんだ、」
「家だとカーラが怒る。一緒に住んでる、っていうか。部屋、オレが借りてるからさ?」
 あ、ぐらぐらする、と眉根をきゅうっと寄せてコドモみたいな顔を作ったウォレンを、一先ずベッドに座らせた。
「ウォレン、平気?」
「んん、」

 こくん、と頷いたウォレンが、何かに気付いたふうに訊いてきた。
「―――――あ、家って、おまえどこに住んでンの、」
「あ、そっか。フェスでこっち来てるだけだしな」
「んん、」
 こくん、とまた頷いたウォレンに自分の住んでいる町の名前と住所を教える。
「今度からウォレンの住所もそこにしないとね」
「だれもおれに連絡取りたいヤツなんていないよ」
 歌うように言ったウォレンの側に戻って、とさん、と隣に座り込み。きゅう、と目を細めてウォレンを覗き込んだ。
「だったら尚更一緒でいいじゃん。変更しちまいなよう」
 なん?と笑っていたブルゥアイズに告げる。
「一緒に居たいだけ、ウチのコになればいいじゃん?」
 あはは、とウォレンが笑っていた。
「いいよ、」
 笑いすぎて目尻に浮いた涙を指先で拭っていきながら、ウォレンが言った。
「そ?いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」
 ふてん、とウォレンの肩に顎を預けて、むぅ、とトッドが唸る。
「ヘイ、」
「んー?」
 笑ったウォレンに、ちらっと視線を投げる。
「イエスって意味だったのに」
 声が拗ねたのに、ぱあ、とトッドが表情を明らめる。
「なぁんだよ、だったらそう言えよ、ウォーレッ」
 ぎゅう、と抱き締めて、ぐりぐりと鼻先を首元に埋める。
「うぁ、くすぐって…ぇっ」
 甘くなったようなウォレンの声に、トッドがくすくすと笑った。
「あ、でもさー。先のことはいいとしてさ?今日、どうするー?フロアに居る?」
 は、と息を吐き。うん?と見上げてきたウォレンに、トッドが首を傾げる。
「あぁ、あんたの普通の“歌”そういえばオレ、マジに聞いてなかったし」
 にこお、と笑ったウォレンに、ふにゃ、とトッドも笑う。
「好きになってよ」
「でもさ、」
「んー?」
 ぐい、と額を押し付けてきたウォレンの濡れた髪を指で梳く。
「あんたの顔と声は覚えてたろ?昨夜だって」
「ン」
 ふにゃりと笑って、こくんと頷く。そして、なでなで、とウォレンの髪を撫でた。
「なんか、嬉しいね」
「だから聴いたらたぶん好きになるかもな」
 とろん、と柔らかく甘い声に、同じ位にふにゃりと笑ってトッドが頷いた。
「好きになれ」




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