Velvet Goldmine
もらうばかりでいることも気づかずに、自分からは与えることを思い付きもしない男 。
欲することをしないでも、手を差し伸べれば必ず受け止められていた男
恋愛の熱情とは皆無でも、女経験ばかり持て余す男。
恋愛と情事を混同して、女性経験ばかり増やしていた男 。
年上の女からの情を何とも思わずにたっぷりと注がれていたことが容易に想像できる、 天然の「タラシ」。無自覚の雄の色香。自分の熱情にばかり夢中で、他をみることの
なかった瞳。
「女」の存在を無条件に愛する、優しくて我侭な美しい男は余裕を持て余す女の恰好の嗜好品。
手間暇をかけて凋落する側とされる側の入れ替わる遊びに夢中で、いつのまにかの
手練手管。目的を置き去りに手段ばかり上達したどうしようもないカラダ。
唇が重なれば抱擁で返す男 唇が重なれば睦言をささやく男 。
心は、どこまでも自分だけのものの、 はずだった。
どこまでも接点の無いはずの二人が、向き合ってしまったのだから。
玉石の翆と海の碧。
そして。全霊をかけて欲するのは、相手の総て。気が付けば。
瞳の追うのは、あの姿だけ。
術を失くし、戸惑うカラダ。
恋情の初期症状もただの困惑と痛み。
それでも追わずにはいられずに
近寄らずにはいられずに
もし、唇を重ねれば腕は力を失くし
もし、唇を重ねれば言葉は宙に浮くだろう
それでも手に入れたいと、初めて欲するキモチ。
ただ、あなただけを
そんな、祈りにも似た痛み
ミカン畑にいるナミからは、甲板の様子が良くわかる。
いまも、お互いの視線が逢っても緊張を張り詰めてすれ違い、サンジが見えなく なるとゾロは壁にもたれ身体を弛緩させている。視線はさっきまで甲板にいた姿を追うように空に投げられ。
サンジは多分いまごろキッチンで、ぼんやり煙草をふかしているに違いなく。
それは彼女がこのところよく目にする姿で。
「愛情をもらうばかりだった同士がであうと、どうなるのかしら」
溜め息と一緒に自然と言葉がこぼれた。
「あのな、もらいなれてる同士は逆にいいんだぞ」
ミカンの枝の上、思い掛けないところから返事がかえってきた。
「ル・・・!」
「受け取り方を知っているってことは、与え方も一緒に学んでるってことだ。 自分で気が付かなくってもな」 「ルフィ・・・?」
なんか、とんでもないことを聞いてしまったような、とナミは困惑する。
「マキノがむかし、おしえてくれた」
がささっとナミの横に降りてくる。このあたりはさすが、小猿並み。
「だからな、"あせらずゆっくりと育てれば良い"んだ」
受け売りなのね、と少し笑顔が浮かぶ。
「だから、あげてる同士よりいいんだ。あげてるほうはな、あげるばっかりで、 貰い方がわからないんだってさ。だからだめなんだぞ!」
「そうなの?」
「ああ。マキノはいっつも、あたしはソンな性分なのよって笑って言ってた」
「そう、」
ナミはこのマキノ、という女性に近しみを覚えて、ちょっとルフィに笑いかけた。
「あんた、大人のグチ聞いてあげてたんだ?」
「そうなのか?」
首が180度に傾斜する。
「でもな、ナミ!」
ぱああっと陽が差したような笑み。それは一直線にナミに向けられ。
「俺はもらうのがうまいぞ!だからおまえは安心してていーんだ!!」
「え?」
「おまえはあげるばっかりだろー」
ぴょんと、船長は立ち上がり。
「それに余計な心配すんなよ。あいつら仲よくなるって」
「・・・え?」
「俺が保証するっ!なにしろ俺の仲間だからなっ!!」
ばん、と胸を叩いて船首へと文字通り跳んでいき。 ぎゃあーと多分多大な迷惑を被ったウソップの悲鳴が上がる。
にぎやかな声が風に乗って流れてくる。
ゾロは視線を空から船首の方へ、そしてゆっくりとキッチンへ移し。
それは、あるかなきかの笑みの影
ちらりとよぎらせ、目を閉じた
「あせらずゆっくり、か」
ナミは船首の方を見やり。
「みんな、初恋みたいなモンだもんね」
ここまでくるのに、いっぱしのことはしてきたつもりでおりましたとも。
だから、うまくいきますように、なんて甘ったれた願い事はしない。 想いは通じることを、やっと信じかけてきたんだから。 だから、きっと。
抱きあって笑いあえる時に、今日のせつなさを思いだしてみない?
このベルベットみたいなやさしい気持を。
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あらーでばってますよ、船長ちょっと賢いね? 未満な感じで。ただのルナミ好き発覚、ってばれてるか。
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