The Kiss Of Life



舳先で、海を眺めていた。

夜の明ける前いつもそうしているように。



海流の所為で、とうに陸についているハズの航路が大幅にずれ
海の真中なのが、いかにも自分らしい。

 
薄色にかわり始める空。



いつもとなにも変わらないのに、それでもたった一つのきょう。


波音に眼を閉じかけ


ゆっくりと人の近づく気配に、再び眼を開く


森を抜けるトラであるとか、密林に潜むヒョウであるとか
そういったイメージが、つい浮かんでくる気配。




「、よ」

「ああ、」



自然と、横に並ばれた。こんなことが、奇跡ではないというなら。


「眠れねぇの?めずらしいな」

「まあな」

「もうすぐ、夜があけるぜ」

「ああ、」



す、と海の際に光がさし



ああ、みろよ、といいかけたとき



何かが、自分の頬に触れたのを感じた。あまりにもやさしい感触で
一瞬それが何であるのかわからず。



手だ、と気づいたときには


腕のなかにいた



視線のさきに、色の変わり始める空がうつる。






しあわせかもしれない、






ふいに気持ちがあふれて、なんだか無性にわらいだしたくなった。





「なに、どうした」

「わからねえ」

一層、抱き込まれる。

「ンだよコラ」

言葉とはウラハラに両腕をまわし相手の短かい髪に手を差し入れて
もっと近づけるようにして。



「海や空ならいい、」

「ん?」

「それなら、いい」

続けられる声はまじかに聞こえるけれど

「てめえが最初に目にしても。けどな、」

ゆっくりと、回されていた腕がとかれていくのを少しばかり不満に思う自分がいる。




「俺が最初におまえを見たかったんだよ、だれより」
きょう、と声がつづく。




自分はいま、どんなカオしてるんだろう。
こいつ、いまなんて言って・・・・・・
だめだ、おれ、泣きそうだ。




サンジ、と小さくつぶやかれ。

かすかに、ほんとうにかすかに、波の音に消えそうな、それでも

てめえにやるよ、



聞こえた。




柄の小さくなる音で、意識が尖る。
みると、白鞘の刀がわずかにその刀身を陽に閃かせており。


「ゾ、ロてめ、なに・・・」



刀身に、す、と親指を走らせる。



「―――な」

言いかけた自分は、眼で黙らされ。



美しいとさえ思える細い傷口から
濃い緋色が線をつくり、じんわりとひろがっていった。



驚きに半ば開けられたサンジの唇にその指はゆっくりとあてられ。



唇をなぞるように朱を添わせる。



あたたかいそれは、まるで




いのち





サンジは言葉をわすれ、唇をたどる指の感触を
なにかに耐えるように微かに眉をよせるゾロを、みていた。



そして



唇がかさねられた。ただ、軽く押しあてるように。




いま、自分をみつめてくるヒトミに浮かぶ色。
一生、おぼえていたい、そうおもった。

もし、離れる事があっても、再び逢うことが叶わなくても、それでも
この色さえ覚えていられたなら、自分はこの男を想い続ける、
そう思った。



いまのキスの意味は

おまえ、俺に教えてくれねえの?




「なにを、誓った?」

「・・・いや、考えてた」

だまって、答えを待つ。






「何に、感謝すれば良いのか」



「カミってのがいるなら、それにでも良い、」




ゆっくりと紡がれることば。




「おまえの在ること、逢えたことそういった全部を。たとえ、」






ふ、と言葉が途切れた。









「――――――死ぬのが恐くなっても」













ゾロ。









「多分もう、二度とは云わねえから、」






「それでも、離れたくねえと思うんだよ」









ゾロ。










アイシテル、なんて言葉は舌足らずだ。

れでも    

アイシテイル、としかいえずに。





「離れねぇよ、」

唇を重ねる。

「てめえの魂を喰っちまいてえ」

物騒なセリフに唇のハシだけで小さくゾロはわらい。

「いいぜ、やる」

また、重なる。





なぜ微笑がうまれるのか

なぜ心が近づくのか

君のいる世界こそが愛しい

「きょう」のあること





キスをする

いのちの





君のくれたキスはまるで

いのちのキス。




# # # 

お誕生日、おめでとう。
And Special Thanks to Sade Adu for inspiring me.
“Kiss Of Life.”

Wanna cerebrate more with me?