*64*

とろとろと甘えた声で告げてきたルーシャンのお願い≠ノ、パトリックは片眉を跳ね上げた。
「内側が内出血してタイヘンになるぞ、オマエ?」
ふる、と首を横に振ったルーシャンに、くく、と笑う。
「オマエを喰いすぎないよう、最初にオマエを喰った時から気にしててやったのに。オマエってヤツは」
あむ、と唇を啄ばんで、笑った。ゆる、と下肢を揺らしたルーシャンに、カシ、と熱く火照った下唇を咬んだ。
「っふ、ぁ」
甘い高まった声が間近で零され、パトリックは喉奥で笑いながらルーシャンの首筋を吸い上げた。
「そういうカワイイ声を出したら、イけちまうじゃねえの」
別に急がなくてもこの先ずっとオマエはオレに満たされちまうのにナ、とからかうように告げ。
「ァ、ッあ、」
そう甘い声を零し、きゅ、と爪を立ててきたルーシャンの内側をゆっくりと屹立を引き出しにかかった。
いまにも達しそうに喘ぎ、引き止めて絡みつく内側を、またゆっくりと押し入れていく。
「は、ぁああ、」
押し上げられて零れ出た声の甘さに、パトリックはまた柔らかくルーシャンの首筋を食んだ。浮いた背中に手を差し入れて、腰を引き寄せる。
「とろとろ意識がぶっ飛ぶまでシてるか、ルゥルゥ?」
「く、ンゥ、ん、」
こく、と頷いたルーシャンが、滴りそうに甘い声で言う。
「パァット、」
とろとろと屹立からも奥からも零れ出ていく蜜に低く笑って、ゆっくりとルーシャンの首筋に歯を立てた。肌を犬歯でピアスしながら、ゆるゆると律動を繰り返す。
「んぁアあ……っ」

「ルーシャン、仔猫チャン」
とろ、と舌先で穿った痕を舐め上げながら、緩く内側を擦り付け。  きゅ、ときつく内壁に締め付けられて、熱い息を首筋に落とした。震える身体を引き寄せ、腰を浮かせて、ゆるりと甘く腰を動かす。
「しょーがねえよな、愛してンだし」
相変らず内側は冴えてひんやりとしているけれども。今、この瞬間は酷く穏やか≠セ。快楽が齎す焦燥感とは別にして。
きっと一生自分はこの仔猫を手放したりはできないんだろう、と静かに今宵何度目かにして思って、またパトリックは薄く笑った。
世界と引き換えになんかできない、自分も家業も捨てることなんかできない。
だけれど。この仔猫を懐に入れておくことだけなら、なんとかできるかもしれない、と。
きゅう、とルーシャンが首に腕を回してきて、噛み付くように口付けを交わす。
とろとろと優しいリズムでルーシャンを追い上げながら、パトリックは柔らかく口端を吊り上げた。ルーシャンがそれで幸せだというのなら、ずっと自分の内側に匿っていってしまおう、と。
蕩けそうに潤んだブルゥアイズが見詰めてくるのを見詰め返し、引き上げられた脚が腰に絡んでくるのを抱き寄せて、ぐちゅりと奥を突き上げた。
こく、と喉が震えたルーシャンの舌を構わず絡め取りながら、パトリックは笑った。
必死に抱きしめてくるこのコは、自分に恋しているらしい。
パトリックがルーシャンに恋をしているとは考えられなかったけれども ―――――間違いなく、愛してはいる。
ディールがフェアだとはいえないけれども、フェア・ディールなんてそもそも滅多に存在しないものだし。ルーシャンをコイビトにもアイジンにも  伴侶にもしてやれないけれども、一生甘やかしてはやれる。愛情を注ぎこめるだけ注ぎ込んで、大事≠ノしてやれる。
自分が持っているモノは何一つルーシャンのために捨ててなんかしてやれないけれども。沢山を与えることができる。
とろん、と口付けを解いて、に、とパトリックが笑った。
「一生甘やかしてやるから、オマエは勝手にオレの隣で笑って幸せになっちまってナ、ルーシャン」
甘い息を零したルーシャンを、抱きしめながら突き上げた。
「んん…っ」
甘い声が肯定であることはとっくに知って、パトリックが喉奥で笑った。
「パァット、パトリック、」
きゅ、と爪を立てながら囁いてきたルーシャンのヒップをぎり、と掴み上げながら、パトリックが告げた。
「もしこの人生の後でもオレと一緒に居たいってンなら、自分で神にでも悪魔にでも交渉しな、ルゥ。そんなもんがあるってンなら、一緒に連れてってやるからナ」
あーあ、オレも甘やかしだね、と脳内で自分を笑って、パトリックがリズムを少しばかり早めた。
このコがイってる時は、果たしてどっちと会ってンのかね、と他人事のように思って、きゅう、と笑ったルーシャンを突き上げた。

――――――まあどっちでも問題ないか。どうせこのコはオレだけのものだし。
甘く鳴いたルーシャンを見下ろして、ぺろりと唇を濡れた舌で濡らして、パトリックは柔らかく目を細めた。
―――――どっちかがもしチョッカイ出しに来ていたならば、蹴散らしにいくか。神だろうと、悪魔だろうと、どうせオレには勝てない。
なにせ、ルーシャンがオレを選んでンだからナ。






FIN




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