ティティに、ぎゅうう、って抱きしめられて、ホールドアップ。
リカルドが笑いながら、ゾロに近づいてた。
「んんんん、キュートだわッ」
ヴィーダ、の声。耳元。
ぎゅむ、っと抱きしめられた。
少し低くて深い声。
「ベイビイ、ジュリエットよりファビュラス」
ジーンにも、ぎゅむってハグを貰った。

…祝福されてるみたい、オレ。
「「「なんてかわいいのかしら、ベイビイ」」」
……でもナンデ???
「…にゃあ…」
なにがどうなってるのか、わかんない。
「おい、魔女共。いい加減にしろよネコが泣き出すぞ」
ゾロの台詞に、リカルドが笑い出した。
ゾロははあ、と溜め息を吐いて。片手を上向けて肩の位置まで上げて、リカルドに同意を求めてた。

「キスならリカルドとしろ」
「…はぁ!?アンタなあ!!!」
くくく、って笑ってるゾロに。心底あっけにとられた顔のリカルド。
「埃塗れだから、ぐしゃぐしゃ撫で回すなよ?」
これはリトル・ベアの声。…笑ってるし。

「外見は特上だしな、構わないんじゃねェの、おまえ?」
ゾロの声に、リカルドがむぅ、って顔をした。
「…元を知らなくもないんだぞ、オレ」
「あぁ、ヴィーダか、」
に、ってゾロが笑って。リカルドが頷いていた。
「…元???」

ヴィーダを見上げる。
とても整った顔のヒト。
「あら。私は昔からきれいだっていってくれてたじゃない、リカァルド」
「キレイだよ、ヴィーダ。だが、それはそれ、これはこれ」
にこお、ってオレに笑いかけてくれたヴィーダに、リカルドが笑って言っていた。

「ウン、アナタ、キレイだね」
顔貌、ウン、キレイなヒトだね、ヴィーダ。
「あら。仔猫ちゃん、ジュリエッタ」
見上げて、笑ってみた。
きゅ、と頬にキスを貰った。
「とてもオトコノヒトには見えない」
頬にキスを返した。

「元、よ。元」
ティティがケラケラ笑って、付け足していた。
「…元?」
………どういう意味だろう?
「そうね、コドモは生めないけれど?残念ながら」
クスクスと笑ってるジーンに、笑いかけた。
「ああ、ゴメンナサイ。オンナノヒト、って定義、間違えてた、オレ」
不意に。
「離れろ、」
ゾロの声だ。
すいすい、ってティティとジーンの頭を、ゾロが押しやってた。
「サンジ、こいつらはビジンだが魔女だ。取り込まれるなよ?」
そして、に、って笑いかけられた。

「ジョーン、」
「なんだよ」
「ハニィ、かわいいわねぇ」
「あぁ、あんたより上だろ?ティティ」
「ひっどおおおおい!」
「うっわ、素直だな、ジョーン!!」
ティティの抗議する声に、ゲラゲラと笑うリカルドの声がオーヴァラップした。
「生憎とおれは面食いなんだよ」
「ベイビイもなんとか言って!」
「否定する余地が無い」
笑うリカルド。
「もおおおお!」

リトル・ベアの盛大な溜め息。
「アルトゥロ、アナタこんなかわいい知り合いがいるなんてひとっことも私に教えてくれないんだもの」
見上げたヴィーダにリトル・ベアが。
「大切なおとうと弟子なんだよ」
肩を竦めて言っていた。
「―――そうなの。物騒なロミオにあげちゃっていいの?」
「それはオレが決めることじゃない」
ヴィーダの目許が、笑みで和らいでいた。
「さすが、私の初恋の男よねぇ」
歌うように言ったヴィーダの髪を、さらりとリトル・ベアが撫でて言った。
「己の力量を弁えることが、第1のステップだからな」
「アルトゥロは弁えすぎ」
ゲラゲラとリカルドが笑っていた。

「相変わらずね、」
「オマエも相変わらずのようで嬉しいよ、ヴィーダ」
頬にキスを貰って、さらりと返すリトル・ベア。
「あー、悪い。そこの往年の夫婦モドキ、」
ゾロが声をかけて、リトル・ベアが眉を跳ね上げた。
リカルドに至っては、お腹を抱えて笑っていた。
"フウフモドキ。"
…しっくり合ってることは、合ってるよねえ?
「なんだそこの仔犬?」
「おれは真剣に熱が出てきた。クスリでもくれないか、魔女共にやられた」

…あ!!そうだ!!
ゾロの熱!!!
「なんなら、あんたのお祈りでもいいけどな」
そう言ったゾロに近寄る。
ぐい、って頭を引き寄せて、額を合わせる。
「…ホントだ」
タイヘンだ!
折角下がりかけてたのに!!!

「…即効性のあるもののほうがいいだろう。こっちへ来て、少し休め」
きゃあああああ、ってティティが叫んでる声の合間を塗って、聴こえてきたリトル・ベアの声。
「ジョーン、ダーリン!!愛されてるわねえ!」
キャラキャラと笑う、ティティの声。
ちょん、と額にゾロの唇の感触。
それから、助かる、って言って、ゾロがドアを抜けていった。

「ベイビイ、ハニイ、」
追いかけようかどうか一瞬考えてたら、ジーンがオレを呼んだ。
なんだか…艶っぽい声だ。
「…なぁに、ジーン?」
「放っておいてあげなさいな。アナタに弱ってる所なんて、みせたくないはずよ?」

ゾロの後を、リトル・ベアが追っていったのが見えた。
「……うー…」
にっこり、って笑いかけられたけど。
でも、…ゾロの側に、いたいのに。
きゅう、って唇を噛んだら、さらんさらん、って髪を撫でられた。
長くて細い指。伸ばされた爪。
「イイコだから。ああいう男ってバカなプライドを持っているの」

リカルドが、ゆっくりと近寄ってきた。
「…そうなの、リカルド?」
「さぁ?オレはアイツじゃないからな」
リカルドに、ぷに、って頬を突付かれた。
ヴィーダとティティがじっとリカルドを見ていた。
「…でも。オレは全部、…見せてるのに」

「……サンジ」
ちょっと困ったようなリカルドの声。
「なぁに?」
横でジーンが目を細めていた。
きゅう、ってティティはヴィーダに抱きついていた。
「…オマエは賢いから、理解できるだろう?アイツのことを」

考える、リカルドの言葉を。
「…ガンバル」
「よし」
くしゃくしゃ、って頭を撫でられた。
俯いたまま、言葉を咀嚼した。
「ちゃんと笑えるな、サンジ?」
こくり、って頷いた。
さら、と頬を撫でられて、見上げた。
柔らかなリカルドの眼差し。
…ウン、オレ。
ちゃんと笑えるよ?

くすん、と笑ってみた。
リカルドが、柔らかな微笑みをオレにくれた。
「ねえ、ハニィ」
ジーンの優しい声が聴こえて、カノジョを見上げる。
カノジョの目許にも、柔らかな笑み。
「眠ったら横にいてあげなさい」
そう、ウィンク付きで、アドヴァイスを貰った。
「…ウン。そうする」
ジーンに笑いかけた。

「リカァルド!!」
「なんだ?」
リカルドが、ヴィーダを振りかえった。
「おじいちゃまに挨拶にいきましょうよ」
「…じいちゃ…ああ、グレート・サンダー・フィッシュ」
オオケイ、ってリカルドが言った。
「10日ほどこちらにお世話になるんだし」
ヴィーダの声に、リカルドが頷いた。
視線、オレに戻される。
「…なんなら、オレの部屋に揃ってくるか?」
提案に、ぷる、と首を振った。

「最初からそのつもりよう、私タチ」
「アンタたちじゃない、サンジとアイツの方だよ」
ティティの声に、ハッ、ってリカルドが笑った。
「あら。でも決めてるもの」
「冗談。あんな狭いところに、三人も泊まれるか」
ヴィーダの声に、に、って顔になる。
「狭いからいいんじゃない、」
ジーンも、に、って笑って。

「…みんなリカルドが好きなんだねえ」
思わず言ってみた。
「チガウ。コイツらは、オレをからかうのが好きなんだよ」
リカルドが苦笑した。
「あら、とても好きよ」
ヴィーダが言った。
「大好きだわ」
ティティの華やいだ声。
「リカァルド・ダァリンだもの、」
艶っぽいジーンの声。
「どうだか」
笑うリカルドの低い声。
オレも笑い出した。仲がいいんだね、とっても。
気持ちがほっ、とあったかくなった。

リカルドがひょい、と肩を竦めて。
「オオケイ、じゃあ山に行くぞ。アンタたち、その格好で行くのか?」
オンナノコたちに言っていた。
「「「もちろん」」」
「…上の方は、寒いよ?」
笑って、風邪ひかないでね、って言ってみた。
「クルマにストールと帽子も用意してあるの」
「イヤーマフもあるわよう」
「ミトンもね」
「平気だよ。風邪の方が逃げる」
三人の言葉の後に、にかり、と笑ったリカルドの台詞。
思わずクスクスと笑う。

「ねえ、ハニイ」
ヴィーダがオレににっこりとした。
「なぁに、ヴィーダ?」
「あのヒト、アナタのことを命懸けで好きなようね?ロマンティックね」
「……ン、ロマンティックかどうかわかんないけど。…愛されてること、ちゃんと知ってるよ、オレ」
ヴィーダがすい、ってリカルドの腕を取っていた。
「いい御返事、」
ティティがにこにことしていた。
「また、会いましょうねサンジ・ベイビイ」
ジーンがさらん、と頬にキスをくれた。

「うん。ゾロを乗せてきてくれて、アリガトウ」
笑いかけた。
「送ってきてあげた甲斐もあったわ、夜通しドライブしたの」
ヴィーダの言葉に、頭を下げた。
「感謝してます」
「知ってるわ、」
またね、って笑ってくれたヴィーダに、手を振った。
「お気をつけて」
「アリガト」
ひらん、ってティティが手を振って。
最後にドアを出て行った。

ぱたん、と閉められたドアの音。
途端に静かになる、木の空間。
そして、エンジン音。
ステレオから音楽。
外から盛大に響いてきて、笑った。
それらが遠のいていって、やがて何も聴こえなくなって。
それから漸く、ひとつ息を吐いた。

偉大なる霊に感謝。
歯車は、回るべくして回っているんですね。
沢山の偶然に、ありがとうございます。
…うん?全部必然、なんだ。

不意に、眠気が襲ってきた。
ソファに座り込んだまま、目を瞑った。
意識がすう、っと遠のいた。
今のうちに、体力回復しとかなきゃ。
…夜に、旅立つ前に。




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