今日の自分が何なのか、と訊かれれば。
多分、丸きり本性な自分、ってところか?
殺し屋だった時は確かに“マフィアの構成員”でも、実は仲間内でもあまり顔の知られていない存在だった。
だから今夜のように大っぴらに存在感をアピールすることはなかった。
スタイルとしては“ジャズマン”。ピアノ弾きとしてはそれ以上でもそれ以下でもない自分の前の職業。
ピンポイントでその二つをセレクトしたサンジが一体なにを考えていたのか判断しかねたが。
まさか一流ホテルのラウンジで“弟”を従え、のんびりと酒を食らっているとは昔馴染みの連中には想像も付かないだろう。
だから、それはそれで構わなかった。
サンジの“遊び”に付き合ってやろうと思うくらいには。
ただ。
煽られた、役に呑まれた、流された―――わけでもなく。
自分の内にある、最も残忍な自分が目を覚ましつつあるのを、どう手懐けようか正直思い悩んでもいた。
カチアットーレと呼ばれ、半ば狩猟犬の如く血の臭いに浸ったことのあるオレとしては、
―――残虐性はいつでも否定してきたが、残忍であることは容認してきたのだ。必要不可欠な要素として。
情に流されずにターゲットを捕獲し、仕留める―――割り切れば、必ず遂行できる任務。
自分の内にある想いは閉じ込め、狩ることに集中すること。
だから散々警告しただろう、サンジ?オレは“悪いオトナ”だって。
まあ、けれど。いくらそんな昔の自分が身の内に蘇っても。
なんといっても獲物はオレの愛する仔猫チャンで。
血を流させるのはもっての他、蚯蚓腫れすら作りたくないのが本音だ。
それでも。愛情の発露に多少の残忍性が加わるのは勘弁しろよ?
それでなくても、昼過ぎから妙な連中に絡まれ、甘く蜜を滴らせたような状態のままのオマエを“外”で遊ばせたんだから―――ご褒美としてパクリと喰っちまってもさ?
当然だとは言わないが、それくらいイイよな。
おまけに。
黒い滑らかな手触りのシルクの下からするりと栄えた白い肌は美味そうで。
喉元に落ちた金が点けたままのランプからの光を弾いて赤く染まった肌を更に引き立てているわけで。
イヤリングのことは半分遊びではあったけれども―――堪えきれずに震える姿は、酷く脆そうで、更に意欲をソソッタ。
口の中から金のリングを取り出し、濡れたままのソレをサンジに贈ったネックレスのチェーンに引っ掛けた。
ロゥテーブルに放ってもよかったんだが、明日の朝になってもまだキラキラと光る小さなモノがそこに在る保障はないわけで。
ぴく、と肌を震わせたサンジの目が、潤み、どこか微かに怯え。
けれど、快楽に喘ぐ様は、酷く艶かしかった。
「このままここで喰っちまおうか、」
方膝を上げさせて、濡れた手のまま奥まで指を滑らせる。
こく、と頷いたサンジの、朝に散々貫いた場所を掠めさせる。
「は、ァ…っ」
サンジが更に片足を引き上げ。裾が捲れて火照った白い肌がするりと現れた。
腰の横で深い赤の上に黒いつるりとした布地が溜まっていく。
ひく、と蠢く奥の感触に、飢えが競りあがってくる。
サンジも自分の中に巣食う餓えに気付いたようだった。
頬がさあっと染まり、見下ろした胸元まで赤く火照っていた。
ぐ、と。奥に濡れた指を差し込む。
「ぁあっ」
いつもならゆっくりと解すんだが、今日はそんな気分じゃない。
サンジもいつもより酷く欲しそうにしていて。
びくんと背中は反っていたけれども、内は更に奥まで指を飲み込んでいった。
ふと思いついて、金の房がついたクッションに手を伸ばす。
乾いている方の手でそれを掴み、サンジに腰を上げるように告げる。
「―――っふ、」
内に潜めた指ごと、サンジが腰を上げるのを手伝ってやる。
揺れる蒼が更に潤んでいるのを見詰めながら、腰が浮くようにクッションを押し込んだ。
きゅう、とサンジが指を締め付けてくる。
「っく、ん、」
「自分で少し腰動かしてみろ、」
片手で黒い絹のベルトを解き、左右に開かせる。
立たせた片足はソファの背に着くようにずらす。
サンジが腰を少し押し上げていた。
「揺らしてみな、」
サンジに体重をかけないように身体を浮かせたまま、浮いた鎖骨に舌を這わせる。
サンジの腿の辺りが強張っていた。
「―――っあ…ぁ、」
「ほら。それとも追い立ててやろうか?」
かり、と骨を噛んで先を促す。
しゃら、とチェーンが鳴り、薄い青と金のリングが僅かに揺れた。
サンジの腰が揺らいで、きゅ、とまた指を締め上げてくる。
「―――ぁあ、…ア、」
「痛くないなら、もっといけるだろ?」
く、と軽く内側の壁を押し撫でる。
金鎖の上に舌を滑らせ、大きめの宝石を口に含めば、サンジがひくっと肩を跳ねさせていた。
また腰が揺らいでいた。
「その調子、」
「―――ゾ、ぉ…ろ、」
チェーンを引っ張って、咥えていたジェムを離す。
ぺたん、と濡れた音がして、それはサンジの肌の上で僅かに跳ねた。
甘い声でサンジが鳴いて、また内が締め付けられる。
くくっと笑って酷く早いリズムで鼓動を刻んでいる心臓の上に口付ける。
おそるおそる、サンジが腰を揺らしていた。
「ああっ、ン…、ぁ、」
「そんなんでキモチイイの、オマエ?」
乾いた腿を掌で撫でる。
サンジがいやいやをするコドモのように首を横に振っていた。
熱に潤んだ蒼を見詰めたまま、小さな胸の尖りを歯で噛み締める。
「―――っ…」
痛みと快楽は、この時点では同じ筈だ。
痛みの後に訪れる解放が、更なる快楽を齎す、といったほうが正しいのかもしれない。
くう、とサンジが背中を浮かせていた。
とろりと蜜を零し、それが指を埋め込んだ場所まで垂れ落ちてくる。ゆっくりと。
「どうすればいいのか、知ってるだろ?」
キツく噛んだ後には、甘く舌で撫でるように包み込む。
「――――――ぁ、ア、っ」
さら、と音を立てて、さらにシルクが滑り落ちていき、サンジの腰がまた揺れていた。
くう、と肩に爪が埋められる。
「気持ちよくなっちまえよ、」
「ぞ、ろ、――ぉ」
ちゅ、と柔らかな円の縁を吸い上げてから、また舌で尖りを押しつぶす。
腿を撫で下ろして、指を埋めた場所の丸みを軽く握る。
甘い声が上がり。
「さ、―――わ、って…?」
涙声が強請ってくる。
「いま手一杯」
胸の筋肉に沿って、舌を這わせながら指を軽く出し入れさせる。
締め付けてくるたびに引き締まる尻を揉み解しながら、サンジの身体が痙攣するのを感じ取る。
踵が浮き上がり、爪先がカールしていた。
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