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 きゅう、と指を締め付けられて。
 びく、と跳ねたサンジの身体が一瞬で朱を帯び、熱い体液が飛び散るのを間近に重ねた肌から感じる。
 「熱いな」
 くくっと笑って、小さな胸の飾りから唇を離す。
 ぽろ、と眦から零れ落ちた涙に、また笑みが勝手に零れる。
 「まだ平気そうか?」
 蒼を見詰めたまま、浮いた鎖骨を軽く齧る。
 きゅ、と背中に爪を立てていたサンジの手が、強く抱きついてくる。
 ふる、と震えた身体に、骨をきつく吸い上げた。緩く下肢を押し当てるようにされ、目を細めて見遣る。
 「どうしたい?」
 ゆらゆらと艶を刷いた蒼いエンジェル・アイズが、一心に視線を合わせてくる。
 「欲しい、」
 荒い息の合間に零される、消えそうに小さい、甘い声。
 「―――――おく、」
 熱いの、と吐息に混ぜて告げられ、喉で低く笑って口端を吊り上げた。
 牙を剥くようにすれば、色付いた目元が更に色を乗せた。
 「オオケイ、じゃあ取りに来い」
 乾いた手をサンジの背中に滑り込ませ。すう、と首を傾げた恋人の上半身を引き上げる。
 「ああ、けど。さっきタリナイ、とか言ってたよな?」
 潤んだ蒼に、ますます牙を吊り上げた自分が映り込む。
 ―――酷い男だよ、まったく。
 
 差し込んだままだった指を、ゆっくりと引き抜いた。くちゅ、と濡れた音と共に、泡立って白味を帯びたオイルが伝い零れる。
 「――――ふ、ぁ」
 濡れた手でサンジを抱き直し、そのまま身体を反対に向きを変えさせる。
 「手でも愛してやるから、自分で気持ち良くなってみな」
 軽く項に歯を当てる。
 「ぁ、ん」
 「いまのオマエなら、できるだろ?」
 蕩けた声に、低く笑って唆す。
 「膝で立ってみな。支えててやるから」
 耳元に落す声は、自分でも解るほど独善的だ。
 サンジがゆっくりと腕を上げ。後ろ手に頬を撫でてきた。とろん、と節が蕩けたような緩慢な動作に、喉奥で笑う。
 「C'mon baby, let's move it」
 からかうように急かす―――ほらほら、早くしな。
 「−−−−−ゃぁ、」
 甘えた声をあげて、くたん、と背中を預けてきたサンジの耳朶に軽く牙を立てる。
 「それとも、イラナイ?」
 「んんっふ、」
 身体を軽く逃がすようにして笑ったサンジの耳に舌を差し込んで濡れた音を立てる。
 「やめちまおうか、」
 「やぁ、」
 濡れた声を聞いてから、ふぅっと濡れた耳に風を送り込む。
 「ならやってみな」
 く、と強張った背中にそうっと身体を離す。
 「くすぐった、」
 「それがどうやったら気持ちよくなるか、もう解ってンだろうが」
 
 乾いた手でサンジの腰に手を回し。
 まだ濡れたままの手で、熱を持った自分の中心部を軽く握る。
 くちゅ、と。また濡れて卑猥な音を立ててサンジに聞かせる。ゆっくりとした仕草で、熱く火照ったサンジの手が被さってくる。
 「ほら、奥に欲しいんダロ?」
 肩口をぺろりと舐める。
 「……ぅ、」
 ゆっくりと身体を起こしていくサンジの体重を、腕で支える。微かに濡れた音が衣擦れに紛れて聞こえる。
 「それとももっとシーヴァが欲しい?」
 「も、すこし…あと、」
 溶けた声にまた低く笑う。
 零れ出たオイルに眉根を寄せたサンジが、吐息を震わせていた。
 とろとろと僅かに濁ったオイルが脚を伝い落ちていくのを目の端に止める。
 重く甘い吐息を零したサンジが、僅かに膝を開いていた。乾いた腕でサンジの腰を引き寄せ、背後から膝で更に脚を開かせる。
 「ァア、ァ」
 新たな雫が同じルートを辿りながら、細い脚を伝い落ちていく。
 震えた身体を片腕で抱きとめるようにしながら、背中に軽く唇を這わせた。
 「Okay baby, now come」
 ほら、来い。そう低い唸り声のような声で急かす。
 
 
 
 クリアな部分が残ってる、何処かに。何もかも熱くて蕩け落ちそうななかで、そこだけが。
 落とされた声は。ヴォリュームは抑えてるのに、とてもクリアにおれの中に響いて。
 掌で直に、鼓動を刻む場所をさわりと触れられていく錯覚。
 薄く開いたままの唇から、熱の上がりきった息がどうにか零れて。
 落とされた低い声だけで、身体の奥にぽとりと火種が零れていく。ゆっくりと、正体のない熱が内を滑っていって。
 含まされたものとイメージが重なる。
 強引さとは違う、有無を言わさない口調は。
 「お、まえ……声、」
 視界が、明るさに揺らぎかけて目を閉ざしても。瞼を透かしてくるほど、―――午後の光は明るいのに。
 初めて聴く、一緒に時間を過ごすようになってから。
 「ず、ぅるい……、」
 手を、後ろに伸ばして。ゾロの腕に添えて。くう、と握りこむ。
 なにが?って、低くわらっているような囁きが耳元に触れてくる。
 項、加減無く噛み締められた場所が、ずくりと甘い疼きを拡げてく。
 また、震えそうな吐息が零れそうになったなら。ふぅ、と。ゾロが吐息を耳朶をかすめて直に吹き込むようにして。思い切り、手指に力が篭もって。
 ひくり、と跳ねた下肢をまた伝い落ちていく体温に同化しかけているものまでぜんぶ一緒にわかって。
 
 短い声が上がってく。すこし身体を落として。
 「だ、って、」
 受け入れるところの感覚はすこし遠い、自分から。
 なのに、触れる前から。開いていくようなイメージが浮かんで。背骨から甘く重くなっていって。
 びくり、と。膝まで微かに揺らいだ、焦れていた熱にやっと触れて、その質感が濡らされていたから。さっき、耳の拾った淫靡な音が、エコーして、頭の中。
 「−−−−ァ、」
 受け入れようと、開いていくのは身体だけじゃなくて。
 「ぁ、…っ」
 押し広げられていく熱に、息を短く零す。
 感じるのは、熱さと。埋められていくリアルさだけで。拓かされてく身体がどうしても訴えてきてた感覚は、取り去られていて。
 上向けた首筋、息が短く競りあがって。
 「ん、ぅあ…ァ」
 また少しだけ、ゆっくりと内が埋められてく。唇が柔らかく食んで、軽く歯を立てられてびくりと身体が気持ちよくて小さく捩れる。
 背中越し、体温が上がったゾロの肌が熱い、きもちいい。
 
 「ぞ、ろぉ、」
 熱が取り込んでいく。
 逸らせた首筋、吸い上げられて。きゅ、と身体が鳴く。
 おまえに、内側から充たされていくのは、こんなにも−−−
 身体が知っている、もうすこしで。
 「ぁ、あ…っ」
 腕、引き上げられて。
 かぁ、っとまた体温が跳ね上がった。
 受け入れる最中から、ずっと高まっていた中心を握りこむように絡められて。だけどそれはおれの手で、ゾロの長い指は上に重ねられるまま。
 「ァ、あ」
 快楽でしかないものが、身体の中でせき止められて。
 す、と。指が重ねられる。びくっと跳ね上がる。
 揺らいだ下肢が強く最後まで受け入れきるのと、重なって。声が零れて。
 開いた指の間から、おれのよりもしなやかなそれに、強く昂ぶりを握られて。
 「ゃ、あ…っ」
 深すぎる甘い淵に爪先で縋るみたいに。
 「埋まっちまったな?」
 とろり、と落とされる声に神経が持っていかれる。
 「ぁあ、ッ」
 内が伝えてくる、質量と熱さと。まだ、受け入れただけなのに。
 「こ…なに、溺れ…って。ど…し−−−」
 助けて欲しいのに、おまえに。
 だけど、もっとおまえにおれ……
 
 
 
 
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