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 離れていったのを捕まえなおして、ゾロの手の甲に爪を立てた。
 耳元に、あまく声を落としこまれて溢れたと思った。
 充たされて蕩けそうになっているのに、また底から湧きあがり溢れて零れ落ちていって。
 ゾロのどんな些細な動きや、吐息のひとつ、低く抑えられた声も。視界がふつりと色を無くして光だけになる瞬間さえ、意識を飛び越えたところで感じていた。
 いまも。
 回されていた腕が柔らかく身体を辿っていくだけで目を閉じそうになる、リネンに伸ばした腕に額を預けても。
 ふ、と身体が反転する、広いベッドの上。背中が乾いたリネンの感触を伝えてきてすこしわらった。
 仰向いた身体、すこしだけ斜めかも。
 「ゾロ、」
 吐息に溶け込みそうな音だけど呼んでみた。
 差し伸ばそうとした腕をやんわりと捕らえられる。掌のさらりとした感触でさえ、きもちいい。
 手首、肘まで、腕の内側から……いつもより熱く思える唇がゆっくりと辿って。
 穏やかな悦び、それだけじゃなくて。
 きくり、と肌が波打つかと思う。薄い皮膚が伝えてくる、柔らかく歯を立てられていく微かに尖った痺れが身体をまた甘くしてく。
 唇に引き上げられて、膝が揺らぐ。肩口まで、唇が啄ばんできて。
 
 ゾロの髪に触れた。指の間をさらりと滑る短いソレ。
 ゾロ、と呼ぶ前に。深く唇を重ねられて、あわさった身体の下で身じろいだ。
 鼓動、熱、重み。
 そして――――
 「……っ、」
 あわせられた下肢が、熱くて。背骨の奥まで痺れそうになる。
 深く舌を絡み合わせて、眩暈がする。
 くう、と。身体の重みを全部渡されて、余すところなく。ベッドに身体が沈み込む。
 「っは、ぁ」
 すこし息苦しくて薄く唇が浮いたときに、喘ぐように呼吸した。
 自由になるのは、首から上だけかもしれなくて。
 口付けられている間中、深すぎる口付けに思わず竦んだ瞬間も、もっと先を求めて身じろいだことも、ぜんぶ重なった身体に押しとめられて、伝えて。
 あ、と。息が零れて。
 唇が熱い、舌先がすこしだけ覗いてまだゾロに絡みとられたままみたいに、じん、と甘い疼きが残る。
 
 短く息を零して舌先を添わせる前に、すぐに重ねられる。
 唇、合わせられて。自分から差しだし、先を強請って熱いなかを弄る。
 上向いた頬を、含みきれなかったものが伝っていく感覚まで捕まえて。
 鼓動がまた跳ね上がる。肌の表面、さらさらと弄ってた掌がふ、と。
 浮かせられた身体を恋しいと思う暇もなくて、あわせたままの唇が震えた。
 硬く立ち上がってた胸の中心を、かるく掠めていく手指に。
 くぐもった音になった声は、呑まれていくだけで。
 縫いとめられたみたいに、揺れそうになる下肢は体温と同かした重みにリネンに押しとめらる。
 すう、と。
 熱い、乾いた掌がまた胸の上を滑って戻ってくる感覚に声が出せずに。
 熱く絡みとられたままの舌先が逃げそうになる。
 「−−−っふ、ぅ…っ」
 ハナにかかった声にもなりきれない音、それが自分の耳にも聞こえて。
 緩く首を振ろうとしても、くう、と宥められてまた。
 
 柔らかい、動き。
 けれど、ゾロの手指が引き起こしていくモノは容赦なくて。翻弄される。心臓のうえ、ちりっと痛覚が走って背中がしなりそうになるのを指先で潰すようにされて。
 落とし込まれてく、感覚は神経を焼いていくかと思う、小さな火の粉のように。
 手指の引き起こしてくソレに鳴いて、漏らす声さえゾロの内に引き取られてく。
 柔らかく擽るように軽く触れられて、身構えていた身体が緩み。
 爪を立てられてバカみたいに涙が零れてく。甘ったれたような声が漏れる。
 眩暈がする、一度に体中が快楽を訴えてきてついていけなくて。含まされたモノがなければとっくに視界が白くなってる。
 押しとめられた熱さのなかに篭もってるのに。
 
 「−−−−−−−っア、」
 奥、とろり、と。温かく濡れたもの、零れて。
 指先まで引き攣れる。
 気がついてしまったなら、もう。
 ずく、と。疼きが湧きおこる、緩くきつく絡められて、喘ぐことも自由にならなかった口付け。
 じわりと歯を立てられて、震える。身体のしたで。
 ゾロ、が。ゾロのまとう風情が、「いま」を愉しんでいる、ってことを隠さない。
 おまえのもたらすなにもかもに、翻弄されきって。悦んでるおれ。
 くら、と。閉じているのに視界が揺れる。
 自分の中でまた、あのオイルに似たなにか、とろりとした熱いものが湧き上がる。
 「−−−−−っ、っ」
 重なった身体が僅かに移動して。
 下肢を軽く擦りあわせられて、爪先がリネンを引き乱してく。
 きゅ、と動きにつれて鼓動より早いスピードで胸もとからも刺激されて、ゾロの舌に歯を立てた。
 溢れ出しても、溢れ出しても、おれのなかをぐるぐる回るだけの快楽、それが周回するたびに熱を上げていって。
 
 上げられない声の代わりに、逃せない快楽の代わりに震えるままに唇に、舌に歯を立てて。
 貪るように、夢中になる。
 宥めるように柔らかく解かれて。
 翠、物騒に光るようなソレ、みつめて。荒い息を吐く。
 ゾロの唇が引きあがっていき。
 は、と息をひとつ押し上げられる。
 に、と笑みが刻まれる。
 次の空気を取り込む前に。
 「−−−−ァ!」
 短い吐息が跳ね上がる。
 空気を押し出されるばかりの肺がくるし……けど。身体を下肢ごと引き上げられて。高く上げられた両足、肩まで。
 さああ、と頬が熱くなる。
 「ぁ、…っぞ、」
 肩口、歯を立てられて身体中にまたぐるりと血の流れよりも確かに熱が四散していって。
 ゾロの熱い手指を濡れ拓かされてた奥、そのそばに感じて見上げようと。
 日差し、こんな明るい。
 く、と。添えられた手指に力が篭もるのを知って。拓く、ように……?
 「っぁ、」
 どこ……見て―――
 「力抜いとけ、」
 低く唸るようなソレ、聞こえて。
 「ぁ、あああッ……ア!」
 信じられないほど深くまで一息に貫かれて、悲鳴じみた声を上げた。
 
 
 
 
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