「―――もっと感じて全部蕩けちまえよ」
さらりとコイビトの背中に触れながら、肩口に口付けを落とす。
ゆら、とシャンクスの吐息が揺れた。
「泣くほどに感じてるならそれもいい、もっと深いところまで溢れちまえ」
デニムのボタンを外しながら、甘く唆すように囁く。
シャンクスの身体がぴく、と跳ね。
その拍子に揺れた熱を持って蕩け出しているセックスにゆっくりと手を伸ばした。
「……ン、っ」
喉で音がくぐもっていた。
濡れた先端、零れた体液。それを指先で取り、全体に広げる。
耳元に口付けを落とす。
「あっ……」
吐息、髪に漏らされる。
慣れた工程、けれど“慈しむ”のはそう何度とはないこと。
「もっと深く感じろよ」
耳朶に唇を押し当てたまま、ゆるゆると快楽を引き上げる。
ひく、と反応しているのが解る。
目を閉じて感じているシャンクスを感じ取る。
何度となく交わった。
戯れて。ただ快楽を共有するために。
“キモチのイイセックス。”
相性がイイ、慣れた身体が簡単に快楽を引き出していく、互いの。
けれど。愛し合うには、慎重だった。
シャンクスには受け入れる余裕が少なく。
オレは多分、明け渡し過ぎる事を懼れていたのだろう。
―――“夢中”にはなれない。
それが齎す先を、少しばかり知りすぎていたから。
けれど。
湧き上がるばかりの愛情を、受け入れることを選んだシャンクスに注ぎ込むのは。
どこまでも穏やかな温もりであって、狂気めいた熱情の発露ではなかった。
快楽を引き上げ、熱を高め。そうやって同じ工程を辿ってはいても。
快楽に目を眩まされはしない。感情に溺れたりもしない。
互いに深く感じ合っても、狂いはしない。
ただそこに想いがあることを、全身で感じ取るだけだ。
背中に爪が僅かに埋められ、零される吐息が熱く弾んでも。
快楽を求めるために抱き合っているのではなく、求め合って抱き合っている結果、快楽が呼び起こされているのだと知る。
緩く手を動かし、深みに沈む。
「ぁ、―――…ック、」
蕩けている声に、静かに口付けを送る。
「我慢しなくていい、」
一層腰を引き寄せ、快楽を引き出す。
見開かれた翠が潤み、取り込んだ光に煌いていた。
染まった目許、悦楽の表情。
「あ、あ、…っ」
甘い声、蜜が滴るような。
「どろどろになっちまいな、」
それでもあンたはあンたで在り続けるから。
「あ…ふ…ッ」
熱い吐息が直ぐ間近で零される。
テンポを速め、じれったさが苦痛にならないように押し上げる。
熱く濡れた器官が肌に触れてきて、小さく笑う。
「あンたがキモチガイイと、オレもキモチガイイ」
肉体の快楽とは別の種類。
感情が深まる。
「もっと明け渡しちまえよ、平気だから」
く、と手指が背中に埋められた。
きゅう、とセックスを絞り上げる。
「お…ぼれ―――っ」
言葉が容を無くしていた。
強張り、また蕩ける身体を全身で感じ取る。
「シャンクス、」
手の中に零れ出る蜜。
こく、とシャンクスの喉が上下していた。
きゅう、と眉根が寄っているのが目の端で見えた。
頬に口付ける。
「――――な、…ん」
どうにか、といった風に甘い言葉が零れていった。
くう、とデニムを穿いたままの脚に、シャンクスの足が絡まっていく。
「溺れきっても平気なんだぞ?」
零された蜜、それをそうっと後ろに宛がう。
「―――や、息出来な―――、っ」
「死んでも生き返らせてやるから」
くう、と喉を鳴らしたコイビトの頬に口付ける。
指先、繋がっていく箇所に押し当てて、そうっとなぞる。
髪にシャンクスの指が通っていくのを感じる。
「おれだけ、じゃ嫌だよ―――」
甘い息の合間に落とされる言葉。
「愛し合おうって言っただろう?」
低く笑って耳元に口付ける。
指先、先端を僅かに潜り込ませれば、シャンクスが喉を反らせていた。
「ん、っ」
「シャンクス、」
寛げながら、呼びかける。
くう、と眼差しが合わさった。
快楽も、感情も、総てがそこに表れていた。
ベック、と。唇が音にせずに模る。
口端を引き上げ、微笑み。唇を合わせる。
絡まっていない片足が、引き上がっていった。
きゅう、と腕に力が入れられ、そうっと舌先で唇をノックする。
柔らかくそこが開き、くう、と絡め取られて、奥まで差し込んだ。
指を奥まで押し込み、内を探る。
熱に包み込まれていく感覚に、理性が僅かに浮つく。
シャンクスが漏らす声、くぐもって甘いソレ。
引き上げ、味わい。喉の奥に滑り込ませる。
もっと、と引き込むかのように、熱い内が強請る。
指を増やす。
「―――っ」
慣れた身体は簡単に開いていくけれど。
時間をかけて、慈しむ。
感じ取れる総てを、愛しむ。
直接肌が触れ合っていた胸が、さらに合わされ。
鼓動のリズムすら分かち合う。
蠢く内が、埋めた指を味わっている感触を楽しむ。
探りあい、深め合う快楽。
空いている片手で、デニムの前を寛げた。
舌を甘く噛まれ、喉奥で笑う。
熱を帯びたセックスを、シャンクスの蕩けたソレに押し当てた。
「ん、ン…っ」
緩く擦り合わせ、もどかしい快楽に目を深く瞑る。
跳ねたシャンクスの身体、浮いた背中に手を差し込む。
軽く舌を吸い上げながら、腰を引き上げる。
シャンクスのうちから指を引き抜き。
背中に爪を立てられるのを感じ取りながら、自分のセックスに零れた体液を塗り伸ばした。
そのままその手でシャンクスの足を引き上げさせ、緩くノックする。
そろそろ平気か、と声にせずに訊く。
吐息が跳ね上がっていた。
回されていた足が、腰を抑えるように力を増した。
口付けを解かないまま、そうっと体重をかけていく。
く、とまた舌を食まれながら、熱い内を押し開かせる。
包み込まれる感触。
与える熱、与えられる熱。
くら、と一瞬意識が揺らぐ。
合わさったままの唇から零れていく息が細かい。
蠢く内に迎え入れられる。
貪欲に呑み込まれる感触に、低く呻く。
慣れた快楽。
そしてそれ以上に深い愛情。
繋がり、満たされあう。容れ物も、中身も。
内がまた引き込んでいった。
項に添えられた手指が酷く熱く感じる。
腰を支えていた手を引き上げ、背中を上げさせ抱き寄せる。
口付けが深くなる。
「―――――っん、…く」
甘く零れる息。
きつく舌を絡め取る。
そのまま、浅く腰を引いて、奥まで強く押し入れた。
ふつ、と血が沸きあがるかと思う―――錯覚。
シャンクスが僅かに辛そうに、目を細めていた。
けれど快楽が深いのか、それもすぐに蕩けていく。
ゆら、と腰が揺れ、静かにリズムを刻み出す。
甘い快楽、深い愛情。
溺れるよりは、深まりあう。
嵌っていっているのかもしれない。内に在った空虚を満たすように。
一瞬浮いた唇が、また深く合わさっていった。
リネンに押し止め、強く早いリズムにテンポを変える。
浮かぶ表情、共有している空気の密度。感じ合っていることを理解する。
そのことに、感情が悦ぶ。
セックスより深く、愛し合う。
絡み合った身体と向き合った心で。
意識が一瞬融合する。
鼓動のリズムを合わせ、熱を絡ませ。
内面は酷く穏やかだ。
快楽は深く、息は苦しい程なのに。
求める。明け渡す。分かち合う。隔たりが消え、溶け合う。
泣きそうな顔をしているコイビトを包み込む。
抱きながら、抱かれている。
全身で抱きしめられる。
目を閉じて、快楽の天辺を目指す。
フラットになった先の情景。深いばかりの愛情がそこには在る筈。
コントロールを手放し、追い上げる。
押し上げた拍子に腕が滑り落ちていったのを感じる。
口付けを解かないまま、走りきる。
溺れるより、満たされる。
深い快楽。
くぐもった声を呑みこんで、苦しそうでも恍惚とした表情に安堵する。
明け渡す。
口付けを解いて、体重を落とし。零された熱が、僅かな隙間も埋めていくようで、少し笑えた。
強く抱きしめ、息を赤に埋める。
コトバにならない程の歓喜。
あンたを愛せてよかった、と。全身で思った。
きっと、言葉にしなくても、理解しあえている一瞬。
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