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 鳴き声が揺れていた。
 ぱつ、と落ちる雫の音―――涙?
 あンたの中の、何かを溶かすことができたのか。
 緩く蕩ける身体に、快楽を引き起こさせながら思う。
 
 深く、ゆっくりとしたリズムを刻む。
 快楽と愛情を分かち合う。
 焦燥、これはお互い生きている限り無くならないものなのだろう。
 失くしたモノを求める、リプレイスするものは完璧じゃない、だから僅かに埋まりきらない部分に焦れる。
 「Te amo,」
 項に口付けながら言葉を落とす。
 その埋めきれない部分が少しでも塞がるように。
 ふる、と震える身体を抱きしめる。
 
 握り締めた熱いセックスからは行き場の無い蜜が零れ続ける。
 「Mi amado, recuerde」
 覚えてろ、と囁く。
 シャンクスの唇が僅かに動いたのが見えた。
 「Esto es como te quiero」
 こうやってあンたを愛したことを、と祈るように告げる。
 側に居ないときも、誰かに抱かれている時も。
 誰かを抱いている時も、一人で在る時も。
 
 きゅう、と眉根を寄せ、また涙を零したシャンクスを、リネンに押し付けるように体重をかける。全体で体温を感じられるように。
 緩く、深くリズムを刻む。
 濡れた音と荒い息。
 快楽よりも愛情が深くなる。
 汗に濡れた肌が、ライトの下で溶けるように見えた。
 「―――ぁ、…あァ、ぁ」
 甘く滴るような声。
 肩口に口付ければ、シャンクスが僅かに跳ねた。
 「ひぁ、ッ」
 とく、とセックスが熱を上げ。滑らかに内が蠢く。
 「Sientase mas profundo」
 もっと深く感じろよ、と囁く、熱い吐息に乗せて。
 生きているということしか解らなくなるくらいに。
 
 「あ、ぁ…つ、」
 シャンクスが背中を反らし。さらに胸に密着する。
 耳元、口付ける。
 「Mi amor」
 囁きを落とす。
 コン、とドアが一度ノックされる僅かな音。拾い上げて、視線だけ背後に送る。
 カメラを持った親友が、ひょい、とそれを僅かに掲げた。
 くう、と口端だけ引き上げる。
 さすが“プロ”を目指すだけある。
 
 「Puedo yo? 」
 低すぎないリカルドの声が、いいか、と遠慮がちに訪ねてくる。
 シャンクスは僅かに内を引き締めただけで、リカルドがいることに気付いている気配が無い。
 方眉を引き上げ、緩くシャンクスのセックスを扱いた。
 「――――ぁ、あ…っ」
 リネンにシャンクスが顔を伏せ。さらりと髪が表情を隠していった。
 くう、とリカルドが愛しそうに笑みを浮かべた。
 母性的、と言えるくらいに優しい表情。
 静かにカメラを構え、瞬間を切り取っていく。
 フラッシュは恍惚が訪れる瞬間に似ている、と思った。
 
 「キレイだね、」
 低められらリカルドの囁き声。
 「すごく甘い」
 「生きてるだろう」
 ぐ、ぐ、と緩く突き上げながら囁きで返す。
 フラッシュはもう気にならなくなった。
 「あっ、あァ…ッ」
 シャンクスが喉を反らす。
 涙が零れた跡の残る頬。
 濡れた唇は充血して酷く赤い。
 
 リカルドが、距離を調節しながら何枚も写し取っていく。
 シャンクスの目許を片方の手で覆ってから、もう片手でシャンクスの上体を引き上げさせる。
 「ひぁ、ア…ッ」
 膝立ちの不安定な体勢。
 「Mi amado」
 身体を強張らせたシャンクスの耳に口付ける。
 No tema、と囁く。怖がるな、と。
 「ん、ぁう、ァ」
 その体勢のまま、下から突き上げる。
 
 くう、と震えたシャンクスの締め付けがきつくなる。
 「花弁みたいだ、」
 リカルドが嬉しそうに囁く。
 鬱血の痕のことだろう。
 両目は手で覆ったまま、もう片方の手でその一つがあると記憶している場所を撫でる。
 シャンクスのスキな場所。
 
 「や、ぁ、あァ」
 悲鳴に近い嬌声、身体が小刻みに震えている。
 「いい声」
 カメラ越しにリカルドが笑った。
 シャンクスのセックスを握る。緩くそれを上下させる。
 「もっと溶けろよ、」
 耳朶を口中に引き込みながら告げる。
 「―――ッく、ぁ、あッ、あっ、やァ―――」
 泣き濡れた喘ぎ、熱く蕩けた中心部。
 きつく吸い上げ、耳朶に歯を立てる。
 「あ、ン、ん…っ」
 
 突き上げるリズムは深く、そしてきつく。
 リカルドは静かにシャッターを切っている。
 渇いた機械音が濡れた音の合間から響く。
 「あ―――あぁっ、あ、…ク」
 蜜より甘い声が聞こえる。
 「シャンクス、ほら溶けちまえ」
 目許から手を下ろし、胸に添える。小さな飾り。
 きゅ、と指先できつめに挟みながら、奥深くまで突き入れた。
 くう、とシャンクスが首を反らせていた。
 喉元に歯を立てる。
 突き上げながら、両手を別々に動かせば、甘い声がシャンクスの口から響いた。
 「あ、あ、あぁ…っ」
 深すぎる快楽に悶えるような嬌声。
 
 到達した瞬間、かく、と首が前に倒れていった。
 リネンに蜜を散らしながら、捕らえたのは斜め横前に立っていたカメラマンの姿の筈。
 一瞬の驚きに目が見開かれていたから、多分見えたのだろう。
 動きを停めて、肩口を吸い上げる。
 
 
 
 
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