My Cherie Amour


--- Boys and Girls ---

あ。そう言ってナミは、唇に小悪魔じみた笑みを浮かべた。

どこか直線的な、白のノースリーブのカットソーは、左上から右下にかけて、黒の太いラインが潔く横切り。まるで誰かさん。服に気を使わない男連中(船長と剣士)から適当に暑い時用の服を頼まれていたナミは(もちろん手数料つき)、迷わず手にする。



「サンジくん、ねえ」

「なんでしょう」
既に船長用に深い赤の半袖ジップアップシャツとカーキとグレーの中間色のデニムの膝丈ショートパンツ(結局ヤツの定番だよな、とはサンジの見解。伸びた時に長袖だとみっともないしな。)後は手触りの良いTシャツを適当かつ大量に選び終えていたサンジは、にっこり。と満面の笑みで振り向き、手元に目をやると。女王サマに負けず劣らずの意地悪ネコ笑いを浮かべる。



男物お買い上げ後二人して機嫌よく次はナミの洋服選び。お付きのシアワセ度はいかほどのものか。

「ああ、ナミさん、これ絶対似合う」
そう言って、ぱぱっとサンジの選んでいくスタイルは、ナミなら選びそうもないもので。赤の10枚ヒダの膝下10センチ程度のプリーツスカート、シンプルな白地に赤のチェックのシャツ、7分袖の黄色のVネックの薄手のニット。ちょっとエキセントリックなお嬢サンスタイル。

「ほら、壮絶にかわいい!!」
フィッティング・ルームを出た途端に絶賛の嵐。鏡の中のナミにも、確かに、まんざらでもない笑み。そんなこんなで大荷物。


船に戻り、さっそくにやり笑い付きでゾロに本日のお買い上げ品を手渡して。

デザインの符号に多少はイヤな顔でもするかと期待していたのに、あっさりとそれは流されてしまい。
企んだ二人は今更ながら、あの傷も、敗北も、この男の中で奇麗サッパリ昇華されてしまっていること
を思い知らされたわけであった。


それどころか。似合ったのである。それも、いっそ嫌味なほどに。たとえば本日などは「それ」に
いかにもどうでも良い風にライトグレーの直線的なパンツをあわせていたりするから。
(うぅ。カッコよすぎ。)
これはサンジの心情の吐露。
どうでも良いのならデニムでも穿けば良いものをそうしないのは、野生のカンってやつですか?
ナミは訴えかけるサンジに。
「あー、だから私カラダ鍛える男って嫌いなのよ。本能的に自分の事好きなのよね、あーゆーの。それより、そろそろ島に着くわね」

「はい、集合ー!」
陰の船長の声が響いた。



--- Hit the Road! ---

「一人は船番よ。で、あとのみんなは上陸。私が!特別にホテルも手配しといてあげたから。さ!せっかくのリゾート地でしょ、さっさと決めちゃいましょうよ」
この間の島よりも今寄港中のここは若干規模は小さいけれど、その分短期間で遊ぶには調度良い
大きさともいえる。リゾート地らしい開放感も、ナミの心を充分くすぐったらしく、上機嫌。

「じゃあ、明日の夜には戻ること。いいわね?」

そこで厳正なる―――

「「「じゃあーんけーん、」」」

ポン!

おあああー。ウソップの叫び。

よっしゃあーー。キャプテン。
勝ち誇ったようなナミの笑い声。
とーぜんだと宣言するサンジ。
フン、と別にどうでもよさそうなゾロ。
それぞれの、悲喜交々。


ナミは船長の御目付け役兼デート。果たしてルフィにオトメの気持がどこまで通じているかは
神の御心のままに。サンジは当然の如く市場の下見と、あとは、フリー!いたって普段通りに、朝っぱらから起こすなよ、とゾロは二度寝の気配。ウソップは、若干常識の残っていると信じたいサンジにちょっとした買い物リストを渡しなにやら相談中、「まず火薬だろ、あとは、」。


「あ。」 

「お、」
ちょうど、船へ上ってくるのと降りようとするのが、ぶつかった。
「なんだ、早ぇな」
とりあえず、降りるのを先送りにしたゾロが言う。
「んー、ちょっとな、コレ置きに」
おまえがまだいるかと思ってさ、などと本心は口に出さずに目で語り、ウソップ用の荷物片手に軽くわらいながら甲板に立ちサンジも返す。

「おまえ、なに。どっかいくの」

「研ぎ屋があるかと思ってな、」
ああ、とサンジも納得した風に。でけえ街だもんな、と。
「買い物の途中で、武器屋なら何軒かみたぜ」
「それってどこだ、」
ぶっきらぼうな剣士の声の言外の意味は。そこまで案内しろ。
「あと。ここの特産の酒はすっげぇ美味いらしい」
それには答えずに別の撒き餌。

しばらくゾロはサンジをまじかで見つめていたけれど。徐々に酷薄そうな唇に笑みの影を上らせる。
そんな風にされてしまうと。本日のいでたちとゾロ元来の雰囲気とに良い具合にそれは調和して。ストイックなのにセクシーといかいう、もおろに昨今のサンジのストライクゾーンをくすぐりまくる始末。

触れ合うほどに唇を近づけ

「てめえのオゴリなら案内してやるけど?」
返事の代わりに軽く乾いた熱が自分をかすめる。

腕をさらりと流れる絹のしなやかさにゾロはその下の肌を重ね、唇のハシを僅かに引き上げる。
相手の首元に軽く、笑みの形のそれはあてられているからサンジからは見えるわけはなく。
さらさらと指が草色の髪に触れ、ときおり止まる。さそわれるまま、そのまま腕に力を込めかけふと思い当たる。居残りの狙撃手と、もう一つの事実。だからもう一度、目許に唇で触れて。
「行くか?」と言葉に乗せる。

「ホラ、ついてこい」

テレ隠しに生意気に言って寄越す細身の立ち姿は。
相手にとって自分も完璧にストライクゾーンに決まっていることを果たして存じているのやら。



--- Cigarettes & Alcohol ---

白地にアースカラーの、どこか柔らかなグラフィカルプリントが全体に施されたハーフスリーブのシルクシャツに、ベージュの細身のパンツ、リゾートらしい細い革のサンダル、なんてスタイルは。そうじゃなくても人目を惹くのに似合いすぎていて性質が悪い。おまけにゾロなどと並んで歩かれてしまったりした日には。完全に、素人サンではございません。ここがパーティ・アイランドだったらすぐにでもスカウトがついてくるに違いない風の、よくわからない組み合わせ。それでも当人達は完全に無自覚なのが、ナミをして頭を抱えさせる要因ではあるのだが。

露出度の高いワンピースのお姉さま方の蕩けそうな視線にサンジは薄く笑みを刷きはするものの、ぽかぽかとした日差しの下、バカ話をしながらの目的地までの散歩が目下の所この人騒がせな連中の最重要事項だった。


結局、最初に寄った武器屋の主人がゾロの刀に怖気づき、自分では刀に申し訳ない、この街一番の砥ぎ士を是非とも紹介させてくれと逆に頼み込まれてしまうものの。その砥ぎ士の住処はかなり遠方にあり。よくよく武器屋の主人に惚れ込まれる星の下に生まれた剣士はわざわざそこまで直々に案内されることになってしまっていた。


だから、陽の高いうちから飲むのはまた何でこう美味いかな、などと暢気な感想付きでサンジは上機嫌に杯を重ねていた。
や、あんなゴツイおっさんに俺ァ好かれたかないけどさ、とかなんとかサンジの思考は飛ぶものの。
帰りをここで待っているわけだ。酒は噂通りに美味いし、ここの主人のツマミもけっこうイケルし、で外が既に暗いのも、気にならない。

そう、とっくに陽は暮れているのだ。ちっとも陽は高くなんかは、ない。こいつは相当、実はまわっているらしい。客寄せに一役も二役もかってくれているこの上客に、店の主人も商売抜きで自慢の酒を振舞っていたのだから、まあ、それもショウガナイのか。


ゾロの入ってきたことは、入り口を振り返らなくてもすぐにわかった。

一瞬、店の中のざわめきが波のようにひいていき、まるで何事もなかったかのように元に戻る。
とん、と軽く肩に手があたり、そのまま隣りのスツールに当たり前のように居場所を決める。
「お疲れサン、てめえしちゃ早えんじゃねーの?」
ほい、これがそう。味見してみろ、と続け。タン、と良い音をさせてゾロの前にまだ口をつけていないショットグラスを置き。自分はまた新しいのを主人に注文している。
「美味いな、」と言うと。
満足そうな笑みが返ってきた。


珍しく静かに飲んでいる、と隣りに目をやっても。

サンジは目を閉じて、薄く開いた唇からタバコの煙をくゆらせ。どこか愉悦に浸っているようで視覚的に煽られかける。細い長い指はグラスの縁に預けられたまま。
視線に気づいたのか、ゆらりと瞳が現れ

「ん・・・?」
小さくわらってみせる。そして大人しく煙の行方を目で追っている。

こうしていれば充分、月並みな言葉で誉めても釣りのくる見栄えなんだなと今更ながら
思い当たるものの。自分にもその言葉がそのまま当てはまることを当の剣士は露知らず。
「あ。おまえ、刀は?」

いまごろ、サンジは気づく。
「ああ、明日中には研ぎ上げるってさ」
「おおや。そいつはアブナイですね?ま、ダイジョウブ。任せろ。絡まれたら俺が速攻でブッ倒す」
「ああ、そうしろ」
相手にしないゾロ。
「スナオでよろしい」
にこやかなサンジ。
「フザケロ。」

そんなやり取りをカウンターの中の店主はにこにこと

「あんたのお連れか、こっちの兄さん」
そう、ゾロに話し掛ける。
「あー、一応な」
「そいつはよかった」
「―――は?」
胸騒ぎ。

「あんたのと同じ酒、この人もう4本近くボトル空けてるんだ」
「―――マジかよ?」
「ああ。しかしまだ平気とはこの兄さんも強いなァ」

「あたりまえ」

いきなりサンジが口を開き。
「うー。ちょっとタバコ、買ってくる」
「立てンのかよ?」
「バーカにするなよ?」
する、とスツールを降り。急に、一角が華やぐ。
「てめえこそ大人しく俺の帰り待ってやが―――」
最後まで聞かずゾロはまたカウンターに向き直り。


「――――ふぎ。」

―――は?ナンダいまの??

「・・・・・う゛ーー」

見目麗しい大のお兄さんがフロアにきれーに倒れていた。ぴっしり一直線。

ゾロは盛大に溜め息。
既に酔っ払ってやがったのか―――?

「なにしてやがる」
「ごどんだ」
惜しげもなくご丁寧にフロアに額をくっつけたままなので発声が変になる。
「なーんかァ、足もぉ、ヘンみてぇーー?」

腰がたたねえだけだろ、とはゾロの心の声。
「いてーし右。アシクビ。くっそー」
よいせ、とゾロが造作なく引き起こすのに特に抗いもせず、素直に今度は背もたれ付きの椅子に降ろされる。途端に。

「おかわり」

にこり、と店主に懲りずに笑いかけ。ぱし、と金色の頭に掌がヒットする。
それでも反撃が返ってこないのは、その手がそのまま頬に付いた汚れを軽く拭い取ったから。
そうして。
ふわりと楽しげにわらい顔を作り、ことん。と、今度はカウンターに額をくっつけて撃沈。

はああっと溜め息を吐くゾロに店主は、あんたの分は店のオゴリだ、と小さく笑った。

金髪の眠り男を背負っていくハメになるであろう男前への、飲ませすぎた店主からのささやかな詫びの印し。



--- LA LA ---

「ゾォロ、」
ゆっくり歩け、とか首の後ろから声がする。
無視だ、ムシ、と。どうみても剣士には見えない剣士殿は道を急ぐ。
「メーレーききやがれっての、」
背中のサンジは一人で上機嫌。
「げらげらげら。」
「てめえ。擬音でわらうのは止しやがれ!」
とうとう、キレる。

くっくっく、と背中の荷物はいとも楽しげで。

捨てていってやろうか、一瞬、出来もしない事が頭を掠める。
は、とゾロは思い当たり。さっきまでの静かさは、さては酔いが回ってのコトだったかと。
で、いまの躁状態と笑い上戸、とくれば次ぎは確か――――泣き。
うわ、カンベンしろ。

ゾロは内心、非ッ常に穏やかではない。

泣くんだ、こいつは。それも、声を出さずに。
ぼろぼろと涙だけ、そのうす蒼い瞳からそれこそ惜しみなくこぼれ。
自分はいつも途方に暮れることになる。

「ゾーロ、」

いまのところ、まだ機嫌は良いらしい。
「ほら、月。紅ぇー」
髪に手を差し入れられて無理矢理上向かされた。
「いてえっての、この・・・・クソアホ!」
落ち着け自分、相手は酔っ払いだ、マトモに相手するな。己に言い聞かせる。

しばらく大人しくしているかと思ったら

「がぶ。」
「だから擬音はやめろ!つーか噛むな!!」
右耳を、彼はカジラレタ。
くーっそおー。こいつぜってぇ後で泣かす!
ゾロ、本日の誓い。
さようなら、平常心。



---LA LA (Means I Love You)---

「ゴークローウ」
けらけらとわらいそれでも自分の胸の前で腕はしっかりと組まれている。
「ホラ、剥がれろ」
その手を解かせてベッドに落とす。

すとん、とそのまま素直に背中からマットレスにダイブする。

「サァンキュウ」
「ああ、まったくな」
あーマイッタ、ゾロは何度目になるのかわからない溜め息。
まあとりあえず、「泣き」が入らなかっただけ良しとするか?なんとか自分を納得させながらグラスに水を注ぐと、さっそく目ざとく伸ばされてきた手に持たせる。まるっきり、なんだ?
―――親ドリ。自分の連想にさらに墓穴を掘る男が一人いた。

泣かれたくないから、なんだろうな

そんなことを考える。例え前後不覚の酔っ払いのしでかす事とはいえ。
そんなときにしか思えないのか思い出さないのか知らない何かが、こいつのことを泣かせるのなら。
できればそんな思いは、自分といるときくらいはさせたくない。

そんな考えに取り込まれていたから、
黙り込んでいる自分に注がれていた碧の瞳にゾロは気づかない。

「なぁなぁ、あのさー」

嬉々とした風に話し掛けてくるのに目をやると。
「こう、ムネとか大きすぎず良い具合でさー、腰なんかもちろんぎゅーっと細くってな、俺オンナに
生まれちゃったとしてもそーとー、つーかぜってースゲ―イイオンナだったよな。思わねぇ?」
酔っ払い思考でブッ飛んだことを語るのは。大人しく水でも飲んでいた筈の。

ゾロは真剣にうええぇ、というカオをする。

「イキナリなにいってんだフザケタ野郎だな」
いつもよりカオが相当恐いのは、思わず想像してしまったから。そしてそれはたしかに、確実に相当、いや、以前までなら自分の好みに合いすぎるほどのモノが仕上がってしまったからで。 
「クソ。ンな露骨にイヤそーなカオしなくたっていいじゃんかよー。フィクションだろうが唯のよォ」

奇跡的に器用に横になったままのサンジの足先がゾロの膝下にヒットする。

「そしたらさ、“ハダザムイカラソバニキテ”。とか言えちゃうんだぜー?スゲェーー」

くっくっくっと小さくわらい始める。
「あーあー、勝手にイッテロ」

言いながらカウンターバーから氷を取ってきてタオルで何重にも包んだ。
クツくらいてめえ自分で・・・言いかけて、脱げねぇな、とゾロは思い直す。
スゲエ手ぇかかるぞこいつ。
とは思うけれど不思議と腹は立ってこない。おや、さきほどの誓いは何処へやら。

ベッドの足元に座り左足をまず軽く持ち上げて。カカトのヒモをずらせただけで、すとん。と
カンタンにそれは床に落ちる。
「・・・・・・ん?―――ゾロ?」
答えずに今度はさっきかるく挫いたらしい右足をそっと自分のヒザあたりに置く。
ああ、たしかに気持、腫れてるな。
先よりはずっと丁寧に、痛めた筋に負担をかけないようにゆっくりとカカトにストラップをすべらせる。
そのまま手で支えるようにして、それをするりと甲から浮かせ。何本かの紐だけでできたようなクツだから普段よりは当然素足の露出度は高いわけで。

相手の足先なんて、そういえば今までこれほどまじかで見つめたことなどなかったかもしれない。
指が長くてツメの形がきれいで。土踏まずのアーチはつい、指先で線をなぞってみたくなる曲線で。足首からカカトへのラインなどは下手をすればナミより上等かもしれない。
アホだな、こいつは。今のままで充分だっての。そんなことを思いながらそっと脱がせた片方も床に落とし、布に包まれた氷を患部にあてがう。

「・・・・・つめてっ」

引こうとするのをやんわりと押さえて。
「早く冷やしておかねぇと治らねえっ、ての」
あきらめたように力の抜けるのを感じ取る。何も物音のしない静かな室内にとおく街のざわめきが流れ込んでくる。
「大丈夫か、」
「ん、」
静けさが、また戻ってきた。
そろそろ氷取り替えるか、とゾロが動きかけ。

「オンナだったら、酔っ払ったフリしなくてもてめえにあまえてられンのによ」

不意に届いてくる微かな声に目をやっても、その目許は片腕に覆われていて見えないけれど。
唇が奇妙なぐあいに歪んでいる。無理矢理に、いつもの皮肉めいた微笑を浮かべようと。
「―――なんだ?」
「いい。独り言だよ」

「良くねえ」

「いっても意味ないし」
「わからねえぞ?」
「・・・・・・構え」
「あ?」
「きょう1日、放ぽり出されてたんだからな。構い倒せ。どーだ出来ねぇだろザマアミロ」

素直じゃねえなぁ、とは誰かさんの胸中。

「いいぜ、」
答えて相手を覗き込むようにし。
「どうせここまで構ってるんだからな、いまさらあまやかすのくらいどうってことねえ」

手始めに、唇を重ねてみる。身じろぐのを柔らかく押さえ込み。

薄く唇を浮かせ、さてとどうする?とでもいう風に片眉を引き上げる。問い掛けられれば、しなやかに腕は弧を描いて首に添わされ。明け方の空の色を映し込んだように淡く様々な  情感を揺らめかせる瞳は微かにからかうような笑みの影を浮かべ。
ひとこと、
脱がせてくれねぇ?と。焦がれるように、歌うように唇にのせた。

シルクは指に絡みつく。おまけにこのシャツのボタンは、小振りな上に厚みがあるという最悪の
シロモノ。それが6個もあるときた。

手間のかかっているのと焦らしているのはサンジにとっては同義語でしかなく。布を通して肌にときおり触れてくる指先に、1つボタンがはずれるごとに自分のカギもはずれていく。

「ゾロ、」
呼びかければ、ウルサイとでもいうようにゾンザイにキスがおちてくる。はだけたシャツの隙間から気紛れに滑り込んでくる手がさらりと胸もとをすべり、身体がはねかける。ようやく、3つ目。
もういいと、押し返してくる細い手を指先を握り込み、口許に持っていく。邪魔をする意趣返し、とばかりにその指先をたどるように舌で触れてみる。

「―――ふ、」

息をのむおと。逸らされてしまう目線は、薄く浮かぶナミダをそれでも隠し切れずに。
期せずして、本日の誓いをゾロは果たしてしまうことになる。別に焦らしたいわけじゃあない。ただ単に、ホントウにボタンをはずすのがこの男は苦手なだけなのだけれども。
自分の不得手の埋め合わせとばかりに、あまやかな口接けをいくら繰り返されてもそれは自ら要求した多大なる試練に何とか耐えようとする腕の中のコイビトには。試練の上塗り。
もうやめろってば、と。切れ切れの抗議の声をあげさせるころにようやく。 6つ目のタガが外れた。

腕を差し入れ身体を浮かせ、するりと引き抜く。

まだてのひらに残る絹の感触はやはり自分のイトシイモノとおなじ手触りだと。
肩に口接け、唇でその確信をたしかめる。
既に自分の体温に融けて馴染んでいる、いつもはひやりとしたそれに。体温に蕩けても掌にさらりと流れるしなやかさは、やはり柔らかく包んでいただろう絹を思い起こさせる。
と、自分の背に直にまだ冷たさをわずかに残す手が忍び込み、かるくツメを立ててくる。

「イテェぞ、てめえ」

半分、身体の下にあるコイビトの顔を覗き込む。揺れるようなホライズン・ブルーが僅かに細められ。
「シタハカンベンシテヤル、」
そう言って寄越す。
だからさ、はやくしよう?

引き起こし、抱きしめる。

笑い出したくなるほどイトオシイ。苦しくなるほど思慕が溢れる。
たまに、この感情は厄介なことに制御不能で。自分だけでは知り得なかった想い。
ただひとつだけ、繰り返される言葉は。



さて。

お気に入りのシャツのボタンは今回は何とか危機を脱したものの、次はどうしたことになるのやら。




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nami= Chanel, sanji=Prada, zorro=Dior Homme

以上、連中のお洋服。いえ、それはおいといて。ごめんなさい!!本番前に息切れしましたーっ。なんか、
前説だけで終わってしまったかしら?いえ、その通りですね、
akoさま、美味すぎるお題が、お題がぁー(泣)。
よろしければ、貰ってやってくださいませ。いまの私のいっぱいいっぱいです。なんだか、原作寄りとかパラとか
以前の問題で、サンジくん、ねえゾロ、あなたは一体どなたさま?な・・・・。くう。
こんなヒト達は、お嫌いですかーーー?(苦笑)