One day of the wild child * ベベ・サンジの一日(3)
『Sweet Cats』


森から離れて、ゾロとゾロが選んでくれた家の人と過ごすようになって。
少しは人間らしくなってきたかな、と思ってたのだけれど。
最も重要なことが“ゾロ”になってからというもの、それに関することにだけ、異様に獣っぽくなってきた、と最近自覚するようになった。

ゾロに思い切り愛された後でも、出かける時にはちゃんと目が覚めるし。
ゾロが仕事に出かけていて夜遅く帰ってくる時も、たとえ寝てたって絶対に目が覚めるし。
森でアッシュとレディ、そしてコドモタチと遊んでいても、ゾロが帰ってくる時は解るし。
ゾロからオレ宛てにかかってきた電話も、その場にいれば解る。
四六時中、ゾロのことを考えているから、自然とそうなるのかもしれない。

セトにそのことを言ったら、にっこり笑顔と一緒に頬にキスをされた。
「とってもオマエらしくっていいんじゃね?」
「そう、かな」
「そ。オマエは人間らしく在ろうとしなくっていいの。オマエらしく在ればさ」
「んー」

不思議なのは、ゾロが一人で出かけない日で、だけど一人で起き出した時には絶対に自分が目覚めないということ。
ゾロから掛かってきた電話でも、オレに用事じゃないときは気づかないこと。

「いんだよ、別にあんま考え込まなくてサ。オマエはアイツの可愛いハニィで、オレの自慢の弟。エディとシャーリィのスウィート・ベイビィでティアとルーグの素敵なアニキ。で、アッシュとレディの自慢の親で、チビっ仔たちのリーダ。それでいいんじゃね?」
セトの声が、す、と染み込んできた。頭をくしゃくしゃと撫でられて、妙に心が浮いた。
「自分が一つのモノだなんて思うなよ。総ての存在がユニークで歯車なんだろ。オマエがオレにそう言ったんじゃね?」
「言った」
「繋がったら繋がった分だけ世界は広がる。そうやってこの世界の一つのパーツになるんだろ?」
「そうそう、そう言った」
「だったら何も怖がることはないんじゃね?ベイビィ・ブラザ」
愛する人だけに反応する何かが自分の中に在るって、素敵なことじゃん。
そう言って、頭をきゅ、と抱き締められた。
えへへ、と嬉しくなる、不意に。

「アリガト。元気出た」
「おーよ。どういたしまして」
とん、と額に口付けられて笑った。
「けどま、オマエってばときどきこういう周期に入るよな。何がきっかけなんだ?」
「ワカンナイ。けど何かの岐路に立っていたんだとは思う」
セトのとても優しいアイスブルゥアイズを見詰める――――愛情に溢れた眼差しだ。
「ま、悩むことも人生の一つだしな。たまにはいいんじゃね?オマエのダーリンには“くだらねェことで悩むな、バカ猫”とか言われそうだけど」
「言われるかも。で、その後に、いっつもオレのことを元気にしてくれる一言をくれるんだ」
「あ、まぁたオマエ怒られるナ。“なんでオレに相談しないんだ!”ってサ」
けけけけ、と意地悪くセトが笑う。
そうかもしれない、とちょっぴり落ち込んだところで、セトがひょい、とカオを覗き込んできた。
「側に居ないときに周期が来ちまったんだから、しょーがねェよな。逃すのが嫌なら四六時中引っ付いてろってんだ」
「でもそれ、無理だから」
「そ。ついでにアイツがオマエの成長の小さなステップを100%見逃さずにいるのも無理ってこと。オマエ、でも愛されてンね」
「ウン」

ふにゃ、と笑ったら、とーん、と額を兄貴に突っつかれた。
「オマエが幸せでオレはうれしいよ、サンジ」
「ウン。幸せだってことは疑ったことがないよ。オレが愛されてないなんて思ったこともない」
自分に愛想を尽かしたことはあっても、ゾロを嫌いになったことは一度もない。出会ってから一度も。
ゾロのことが好きで好きで。いっぱい愛してる――――それが軸になってオレの世界は回ってる。

「オマエ、また色っぽいカオをするようになったナ」
ふに、と頬を突っつかれて笑った。
「セトほどじゃないよぅ」
「そんなこともないって。イイ顔してるヨ」
「んー、アリガト」
でもきっと、ゾロにとってはいつまでもオレは“バカ猫”なんだろうけどね――――くすくすと笑いながら思う。

「あ、そうじゃん。オレってばゾロのバカ猫じゃん」
「おーい、サンジくん?一体キミは今まで何で悩んでたのかな?」
「じゃ、ちょっとぐらい気配に敏くったって問題ないよね?」
「あーまァ。今更オマエの聴覚とかナントカが他人より鋭くたって別に驚きはしないけどナ」
不意に“感じて”顔を上げる。
「――――帰ってくる」
「へ?」
「もうすぐ車がゲート潜る、カナ?ここ、コーザのお屋敷だから、ちょっと距離感がワカンナイけど」

ひょい、とセトを見遣ったら、ぷ、とアニキが笑った。
「すっげー。オレの天使チャン、すっげー」
「セートォ?」
「ウン、すげえソレってオマエらしい能力だワ、うん」
けらけらと笑うセトが、ソファに座り込んでいたオレの腕を取った。
「じゃあ、先に応接間のドアを開けるのはどっち?」
「あーうー、そこまではワカンナイヨ、いくらなんでも」
「自分の能力に限界をつけてはイケマセン。それくらいできるようにまでなっちまえよ、サンジ」
「セトってば、時々すっごいことを言うよね」
「それはお互いさま」

にひゃ、と笑い合う。
セトが片目を瞑りながらオレに提案した。
「オーライ、ベイビィ。ダーリンズがドアを開けたら、飛び掛ってオカエリのキスな?」
「ん、わかった」
「浴衣は返さなくていいからなー」
セトに着せて貰った“浴衣”の長い袖を軽く引っ張った。
「なんだかもうオレが連れ帰られること決定みたいな口調だね、セト?」
「や、だって。その薄い青の浴衣、オマエにとっても似合ってるし。帯が濃紺で可愛いし。一発KOダロ」
「セトのその薄紫も、セトにはすっごい合ってるよね。渋い濃緑色の帯もキレイだし。コーザだってそうなるんじゃ?」
「そりゃミクーリャセンセのお見立てだし。知り合いの方にオマエの寸法とオレの寸法教えて、わざわざ日本で仕立ててもらったって言ってたし」

ふにゃりと笑ったセトが。主たちの帰宅を知らせるメイドさんの声に小さく笑った。
「折角ダーリンズを驚かす計画を立てたんだし、せめてメロッメロになって欲しいじゃん?」
「でもゲタは履き辛いヨ」
「鼻緒ンところがナ。鍛えられてないからショーガナイよ。ここン中だったら裸足でだいじょーぶだろ。脱いどけって。――――そろそろ来るかな。飛び掛る準備は平気?」
「ん。オッケイ」
「ドキドキすんなー」
「ウン。でも楽しいヨ」
「あー緊張する」
「セトでも緊張するんだ?――――あ、近付いてくるヨ」
「オーライ。じゃあ構えて」
「挨拶は“にゃあ”?」
「あっはっは!それイイナ。それでいこう」

ドアが開き。オレの大好きなゾロと、セトの大好きなコーザが並んで入ってきた。
腕を伸ばし、大好きな人に飛び掛る。
オカエリの代わりには――――。

「「にゃあ!!」」

少しだけ驚いたようなゾロに微笑みかけて、口付ける。
腕がそれでも背中に回されて、しっかりと抱き留められた――――にゃっひゃっひゃ、幸せッ。




(*いつでも元気イッパイのよーなベベでも、ちょっぴり悩んだりする日々は健在っすね。けどま、最後はいつもどおり元気イッパイなワイルド・キャットです。でもってヒトデナシが視界に入った瞬間、世界はヒトデナシだけになっちゃうのよね〜>笑。ちゃんと隣ではセトちゃんがくっく笑いながらわんこにオカエリのキスしてます、ベベはもう見てないけど>笑。ちなみにベベもセトちゃんも、ヘアクリップで緩く髪をアップにしてます。こちらもキャットテールにしてみたり<マイブームらしい>笑。浴衣、トキちゃんの知り合いの京都のお店に頼んで仕立ててもらったみたいなので、質がタイヘンよろしいデス。夏なのでラヴキャッツに浴衣着て貰っちゃった。今回はちゃんと男物だよん♪響かないボクサーをちゃんと穿いてるので、連れ出しもオッケイだね☆スシでも食いに行ってくれ、極悪な4人で!!>笑。あーお店話題騒然だねー、個室に通される間に噂広がりそう。セクシィ、ビューティホー&キューッな浴衣ビジンが二人にハンサムでワイルドなオトコマエが二人見参って>笑。ヒトデナシが見せないって?えーたまにはいいんじゃ?>笑。ダメ?速攻喰う?がぶぅといっちまうか?>笑)


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