花火見る。
二人で。観覧車に、官能的なキス。
何だ。このいかにもなシチュエーションは。

自分の仕出かしたこととはいえ、いまになってゾロはコトの重大さに気づく。
まだ、背骨のあたりに痺れが残っているのに。このままだと非常にやばい。

「はやくはやくはやくはやくはやく。さっさとキスしろ」
適当に取った宿の部屋に入るなりゾロのジャケットをひっぺがしブーツを脱ぎ捨てサンジはベッドに軽く腰掛けて、おまけに足をぶらぶらさせながらそんなことを言ってくる。
「俺はいま酒飲んでんの」
「うあ。いつのまにっ」
ばったり、と大げさにベッドに背中から倒れこむ。そして。

「ゾーロー。おーい、俺もう寝るぞぉー?」
「なぁー、まだ飲むのかよーぉ」
「ほんとに寝るぞ?」
「あれだけのことしといておまえー」
「おあずけってかぁエロ剣士ーぃ」
「つーかただのエロオヤジーー?」
「焦らすなよー、」
「ぞーろーこっち向けってば」
リピート・オール・プリーズ。
1度目はファーストールがゾロの背中にあたった。
2度目は羽枕が後頭部をかすった。

あああ、こいつは。ほんとに俺の気持わかってねえ。ゾロは背後で騒いでいる声に心中複雑。
すぐにでも抱きたいに決まってんだろうがアホ。やばいんだよ、酒でも飲んで頭冷やさねえと。このままだと加減が効かねえんだって!

「ゾーロー俺もう寝る、3、2、」
「だああっ。待ってろ!!」
剣士はとてもお怒りであった。その葛藤する騎士道精神を姫様は知らず。
それでもとりあえず殊勝に「はい」とお返事。

やっと静かになった室内に、街のざわめきが遠く聞こえてくる。
長く続く沈黙に、どうせ煙草でも喫ってんだろと振り向くと、視線とぶつかった。
それは決して、いまから快楽を共有しようとしている相手に向ける眼差しではなく。
ただ一心に自分の方を、そう、「しあわせそうに」みつめていて。

鼓動が耳元で聞こえる。
俺はよっぽど間抜け面をしてたんだろう、どうした?という風にサンジがかすかに首を傾けた。
どくん、とまた心音が高くなる。

だめだ。俺も修業が足んねぇ。
コト、とグラスが置かれ。
明日1日休ませてりゃいいか・・・?
などと思い直すあたり、やはりちょっとばかり不埒な男であった。

サンジの髪をくしゃりと乱し、そのまま頭ごと軽く半身を倒させる。
「お。やあっとその気になったな」
ゾロをみあげ、に。とその口元が引き伸ばされる。

「まったく、てめぇは・・・・・色っぽいのはカッコだけなのな」
自分の顔の側に腕をついたゾロの声。それでもまだ身体は横に座ったままで。
焦れてその腕に口づける。
「なぁ。イカレルまでやろうぜ?」
どうしようもないくらい、テメエのこと好きだからさ。
「誰がイカレルかよ」
Tシャツを放り、そう言って不敵な笑みを浮かべた顔が少し近づいて。
しゃら、と金属の触れあう音。
肩に手がすべり。耳元に口づけられる。軽く触れてくる唇。触れられた所から、溶け合う。自分の手でも、こんなに肌に馴染まない。

いつもより脱がせやすくていいよな、とか耳元で囁かれて。体温を直に肌で感じる。
身体中の細胞が、すきだ、って叫んでる。
だから。イカレルのは多分おれ。おまえといるだけで。

「あー、俺?して?」
心臓の横で、ゾロの手がぴたりと止まる。
「そんなん、させるわけねぇだろ」
押し殺したような低い声。
「サンジ。」

頬に温かな手が添えられる。不意に翡翠の瞳が近くにあり。
「冗談でも、そんなつまんねーこと言うな」
それが途方に暮れたように真剣で。
あ、いま俺、なんかすげーキスしたい。
「ん、」
通じた?

「なんかおまえじゃないみてえ」
解放したとたん唇は甘くかすれた声でそんなことを語り。器用そうな指は眼帯をたどり、そのまま髪に指を差し入れ顔を引き寄せ。
くくっと小さく笑ってのばされた、皙い喉元にゾロは軽く歯をあてる。
「てめえで誘っといてなに緊張してる、バカか」

抱きしめると反る背中。
目の毒は、その隠されていない一対の碧。
おまえがどれだけ大事か、どうやったらわからせられるんだろう。
ゾロは腕に一層力をこめる。

吐息の重なるたび、どこか所在なげに肩や腕に手が彷徨い、爪をたてても滑り落ち。
ああ、そうか、とゾロは今さらながら気づく。極まるときのサンジの癖のいくつか。
こいつは、俺の頭を抱き込んだり、髪に手、差し入れてきて縋るようにする。

する、と眼帯を解き。ベッドの下へと落とす。
身体の離れた感触にサンジは目を開け。
「お、まえ、なにはずして」
「どうせ、とられる」
かあっと朱の登るサンジの顔をみると満足気に唇のハシを引き上げ。
たたせた膝に唇を落とした。
「待たせたしな、」

お互いにイカレタ二人が次の日もほぼ1日ベッドで過ごしたことは、
言わぬが花ってやつで。



「いい島だったよなぁーッ」
ボードを抱えたキャプテンが全員の感想を総括する喚声をあげるなか船は出航し。
さらにゾロがナミの眼帯コレクションから完全に解放されて数日たった昼過ぎ、郵便鳥がナミ宛の封書1通と無記名の荷物を運んできた。
サンジが受け取り荷物の方をひらくと、中から出てきたのは。

「どわっはははは--------!!」
サンジの悲鳴に近い爆笑が響き渡る。
まだ発作が治まらず、涙の浮かぶ目じりを拭い。
「なっ、ナミさーん、くっ」
ひーひー笑いながらよろよろとナミの定位置へ。
「きゃぁぁぁっあは、あはははは」
ナミはあまりのことにデッキチェアから落ちかける。
二人の笑い声はどこまでもどこまでも高い空に上っていき。

二人が指さす先には、大げさな活字の踊る雑誌。
「第1回!イケメングランプリ発表!!」「抱かれたいオトコ・ナンバーワンに!」
とあり、表紙を飾るのは、翆髪の眼帯男のアップ。い、いつのまにっ!てくらいの、撮られまくりで。

「わ、ワイルドで、くぅっき、危険な香り------うわぁはははーーあ、あたりまえだ。
魔獣だっつの、はっ、はははは」
コピーにサンジはのけぞり。
ページをめくり、
「ひょ、豹のような肢体ィ-----ひゃははははは勘弁してぇー」
審査員のコメントにナミも涙する。
「笑える!」二人して声高に叫び。

800万ベリーにお小遣いは貰えるわ笑えるわで。おいしいわぁ、これ!
ナミは幸せいっぱい。でもちょっといいオトコよね、やっぱ。とも思い。
また使えるわ、とにやり。次は何のセンでいこうかしら。
ナミの持つ封書の中身はグランプリ受賞通知と賞金800万ベリーの小切手。

これ、俺も買おー、とか笑い転げながらサンジは思い。死ぬまで笑えるぜ。
そして、ああ俺やっぱ面くいだわ、うん、と再認識。

彼は幸運にもまだ他のジャンル別入賞者紹介ページをみてはいない。

「イケメン」創刊7周年記念号に、このさき伝説の超プレミアのつくことは多分
まだナミしかしらない事実。




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んじゃこりゅあー?!おいらにもわかりませんっ!
服着せたかったの、って迷惑やな、おい。分けろって。長い長い病発症か。
バカは短編って書けないんですよ。きっとね。うううー唸って終わる。





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