Rowan the Cat’s Life * ぽにゃサンジの一日(1)
『Guardian』
ツアー中日、2日目の夜。
くたくたになって帰ってきたゾロがシャワーを浴びて。
その後に軽食を一緒に摘んでから、軽く抱き合って。
もう一度一緒にシャワーを浴びて、今はベッドの中。
一日動き回っていて疲れているゾロは、もう枕にカオを埋めてくぅくぅと夢の中。
オレは、というと。午前中の音声チェックの間は一緒にスタジアムに居て。午後はヴィックと買い物に行っていただけだったから、そんなには疲れていなくて。
もう深夜2時過ぎなんだけれど、なんだか眠れずにいた。
そろ、とゾロの腕の中から抜け出して。
グラス一杯、水を飲むために起き出す。
備え付けのキッチンで、ミネラルウォータをゆっくりと飲み干し。
ベッドルームに戻るついでに、リヴィングにかかっているホテルの分厚いカーテンの間から、そっと夜景を見下ろしてみる。
ここからはスタジアムが近くて。
屋根の周りに付けられた誘導灯と非常灯が円形に光っているのを見下ろした。
まだ何台もの車がどこかからタウンへ、タウンからどこかへと向かっていくのをなんとはなしに見詰めてから、またカーテンを閉めた。
ベッドへと戻る。
「……あ、」
オレを抱え込んでいた形のまま崩れたのか、いつも右側に寝ているオレのサイドにゾロが倒れこんでうつ伏せになっており。
静かに裸の背中が上下しているのが、仄かに明るいサイドランプに照らされていた。
「んー」
起こすのも悪いし、と思って、ベッドの左側から滑り込む。
ゾロの右腕、肩から上腕にかけて渋い色を重ねて彫られた刺青。
一見、オリエンタルの細かいデザインの中から、なぜかこれだけは眼鏡をかけなくても解るドラゴンの双眸が、じっと見詰めてくる。
ふにゃりと、なぜか“カレ”と対峙する度に微笑みが零れる。
見詰めてくる双眸が、初めてゾロと出会った時の、気のいい、けれど少しシニカルな表情を思い出すからかもしれない。
する、と。ゾロの肩甲骨に口付ける。
少しだけ跳ねた背中は、また静かな眠りに落ちていった。
剥き出しの腕をそうっと掌で辿る。
それから、ゆっくりとドラゴンにも口付けを落とす。
「ごめんね、またアナタに傷を付けちゃったかもしれない」
ゾロに抱かれている時に、時折残す跡。
背中や腰のライン、そして腕。
溺れるくらいに愛されるから、ついついしがみ付いてしまう。
謝罪の意味を込めてそうっと目を覗き込むと。
ちっと舌打ちして、ショーガネーナ、と言ってきているような気がしてならない。
ゾロの腕にいる“カレ”は、ゾロを守るモノ。
視線はぼやけて、自分が引いてしまった線は見えないけれども。
唇で、そうっとゾロの肩口を辿る――――痛かったらゴメンネ、と。
「今日もゾロをよろしく」
指先で“カレ”の眉間を撫でて、時折こっそりとしている挨拶を終える。
上体を起こし、枕に埋もれたゾロの横顔を覗き込む。
静かに深く眠っているみたいだ。
髪にそっと口付けて。腕を伸ばして点けっぱなしだったサイドランプを消す。
少しだけ肌蹴たシルクローブの前を合わせて。
ゾロの腕の下にあったリネンを胸元まで引き上げてから身体を落ち着かせる。
リネンの上からゾロの背中に腕を預け、腰に手を回し。
項のところに額を押し当てれば、手がきゅうっと握り締められた。
零れる笑みのまま、唇をそうっと押し当てる。
ふ、と湧き起こる言葉を囁きに乗せる。
シンプルで、これ以上にないコトバ―――それなのに、言うたびに、聞くたびに嬉しくなるソレは……、
「I love you」
甘くて優しい、短い音の羅列。
包み込む闇に目を閉じて。
腕越しに伝わってくる心音に意識を寄せて。
ゾロの寝息に合わせて、リズムを整えて。
目を閉じれば、眠りはすぐにやってきた。
幸せなまま、一日を終える。
意識が途切れる前に、音にはせずに感謝の意味を込めて綴る。
―――――オヤスミナサイ。
もぞ、とゾロが小さく身動ぎした、ような気がして少しだけ微笑んだ。
(*ぞろのあ、ゴメンね。刺青の詳細覚えてなくて<笑。鳥頭なハハはさておき、ぽにゃはこっそり、時々“カレ”に御挨拶しておりました。ぞろのあの守護神サマだし<笑。でもって朝起きたら、左側に居ようときっちりぞろのあに抱き込まれてるんだろうな、ぽにゃ。逆スプーンポジションも可愛かったから、一度させてみたかったのだ)
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