*7*

 とろりと花弁が綻んでいき、縁から溢れだすほどに蜜がゆっくりと盛り上がり滴っていく、重たげに花首が垂れその中心を舌で弄りたくなる。ぼとりとソレが落ちてくる、自分の肌の上に、そして皮膚の一枚下に潜り込みその熱に震える。
 血管の流れに沿って細い根が張り巡らされていく、指先に至るまで。鼓動のたび拡がり、幾重にも重なり肌を突き上げるように弾けて拡がっていく。
 息が短くなり、瞼の裏に赤が見えた、濡れて重い赤、ゆるりと開く唇。
 名を呼ぼうとした、けれども甘く痺れて根に絡み取られたように息を吐き出すことしかできなかった。
 肌を手指に押し撫でられて、喉から掠れた音が零れた。
 とろり、と滴る蜜が血の中に混ざる、熱すぎて内側から爛れていくかと思う。
 赤い花、花を摘んでいたのはジョーンだ、…………いまも?
 腰奥に幾つも蕾が伸びた蔓から膨らみ薄く色づいていく、ソレが見える、感じる。
 重力を感じるほどの視線が四肢を抑えつけるようで、ぐずりと内側から爛れて崩れ落ちそうになる身体を引き止める。
 肺から熱い息を吐き出し、四肢の重さに耐え切れずに脚がぐにゃりと崩れる。
「―――――――――ぁッ…ん、ぅ」
 ぬるり、と舌先が肌を滑るだけで。音を立てて弾けるように蕾が綻ぶ。花首がずるりと内臓を滑って腰奥にまで落ちていくのに、悲鳴めいた声を上げ。重く、鈍くずっと鼓動めいた血の流れを伝え続けていた奥へとそれが伸びていくのに、喉を反らし息を詰めれば。
 零してる、と聞こえた。低い、擽るような声に背骨が軋むかと思う。
 濡れ零し続けていた中心を、息も止まるかと思う灼熱めいた熱さに包まれ涙が零れ落ちていった。
「ぁああ…っ、」
 くん、と下肢を内側から花弁が押し上げていく。
 綻んでる、とまた告げられた。
 蜜に濡れる花芯を体の奥に潜めているのは、女のはずなのに。いまにも、体の奥からぬるりと濡れた花弁が零れ落ちそうな感覚に震える。
 そしてそれを促すように濡らされ、下肢を捻る。
「ぅあ、」
 びくん、と自身の熱が跳ね上がるのがわかった。
 首裏から走りぬけるような感覚に知らされるより早く、はしたない、と言葉が聞こえ。
「――――――――ぁ、ア、あ」
 びくびくと震え続ける熱を手指に絞られ、重く濡れた花が体から生える、奥から。開き、濡れて、奥へと誘うように。

 ジョー…、と声が掠れきって音にならない。
 濡れた音だけが響き、うぅ、と呻き。淫猥なだけの音が耳を突く狭間に、冷えた声が聞こえる。それは喉奥で笑うような声に彩られ、告げてくる言葉は何かを引き戻しかけた。
「オマエのために誰がくるんだ?」
 誰……が―――?
 赤い唇と、柔らかブロンドの薄い影が瞼の内側から剥がれ落ちかけ。
「誰も来やしねえよ、バカなガキだな」
 声が、幻想を引き剥がした。
 踵が空で揺れた。強い腕に脚を広く開いたカタチで掛けられたままに。
「――――――――ぁ、」
「もっとも来てもオモシロイけどな。両脚開いてしどけなく乱れてるオマエ自身を誰かに見てもらうのも楽しい」
 浮かされたように滾ったアタマは言葉の意味を半分以上伝えては来ずに。内から重く熱く開いて蜜を滴り零すモノを宥めようとでもするように体中が沈みこみそうに重く。ぐぅ、と一層綻んだ奥にまで触れられ、しどけなく開いた唇は意味のない言葉を洩らす。
 じわり、と蜜が花弁を押し上げ滴る。指が押し入るたび、奥から溢れて。
 「ィ、…っあ、」
 初めて味わう異様な幻覚と交じり合った熱に滾る。
「ぁああ、」
 何かを掻き毟り、取りすがりたい衝動に焼ききれそうになる。
「ぉ、っく、溶け……ッ、ぅ」
 頬が濡れた。
「少し緩めないと相当キツいぞ、オマエ」
 僅かに、トーンが空中でキラキラと光をまとって跳ねるような絵を霞んだ視界に収める。
 引き上げられた下肢に押されて息が競り上がり、あぁ、とルーシャンが呻いた。
 熱の塊りが体内を転がり落ちてくる、喉モトまで。体の中が空洞になったみたいに、あちこちで跳ね上がり、ぶつかり、そのたびに内側に印をつけて。その場所からずくりと熟み、疼く。
「――――――――っ、ゥうん、」
 ガラスの粒か、恋人の齧っていた金平糖、それがからからと転げ落ちる、熱さだけを溜め込んだ空洞を。

「息吐いてろ、裂けるぞ」
 ちがう、とぼう、とルーシャンが思っていた。
 ちがう、弾けちまうんだ、おれはからっぽで―――――――
「ひ…ッぁ……!」
 とろとろと蜜を重く溜め込み滴り落ちる寸前まで撓んでいた花がぐしゃりと熱さに押し潰され、濡れた花芯が蜜を弾けさせ。息を呑み込み、震えた喉は音にさえ出来ない。
「っぐ、」
 身体が中心から引き攣る、圧倒的な力の塊りに押し入られて。
 強張る殻と、狭まる内の狭間でその塊りが肉を押し開き、僅かな切れ目から痺れを重く拡げながら肉を押し開かされていく。
「ぁ、…っ、」
 喉が強張り、震え。けれど、浅い息の合間にぱしりと神経が千切れて、それさえも別の感覚にすり替えられていく。髪の先まで、媚薬の香りに塗れて。
「ぁあ、ぅ、ア」
 ぐ、と体内を押し開く塊りの重さに呻き。それに拓かされることに限界まで身体が軋む。
 引き千切れるギリギリまで撓み、内臓が押し包みそのまま弾けそうになれば白い根が絡みとり蔓が巻きつき押し止め。ぐぅ、と喉を鳴らし、ルーシャンが喉を反らせていた。
 ぐらり、と血が滾る。
 蜜に塗れて、体の内側から皹が入る。
 それが剥がれ落ちるたび、欠片はカタチを変えて体中を覆っていく。
 そして、その全部が甘く肌を、内を蕩けさせていくようで震え。切れ切れに、息をルーシャンが吐き出していた。



 *8*

 ブルゥアイズに伸びたブロンド、アメリカン・セックス・シンボル的な口許の黒子、甘いマスクと甘い声。見た目がそんなモノだからてっきり慣らされてずぶずぶなのかと思いきや、慎ましやかな少女より硬い蕾をルーシャンは持っていた。
 媚薬と催淫剤を使ってさえ、拓かせたウチはキツい。
 この怖いもの知らずの仔猫の支度を整えさせた後に、報告に上がってきたロイに一応は拾ってきたガキの正体を調べさせた。
 Lucien Carr、23歳。通信社に勤めているクダラナイ記事を書く記者で、前科持ち。窃盗かなにかの類かと思いきや、正当防衛による殺人、が収監理由だった。
 大学時代に襲ってきた相手をナイフで刺して、証拠隠滅のためにハドソンに浮かばせ、その後自首――――――初犯、反省と動揺をしており、被害者には相当ストレスを与えられていたために咄嗟に犯行に及んだとされ、執行猶予付きで規制の緩い刑務所に放り込まれていた。
 殺害された相手は、仔猫に並々ならぬ“感情”を常日頃から持っていたとされ、相当しつこく付き纏っていたらしい、とは当時ルーシャンを弁護したニンゲンの話だ。
 オヤオヤ、とレポートを読み上げてからロイが笑って言っていた。
『ホモ・フォビアですかね?なのにおカワイソウニ』
『優しくしてやったのか?』
 読んでいたレインバーグからのレポートからカオを半ば上げて訊けば、ロイがハハ、と笑っていた。
『拾ってきた猫ほどには?』
『オレの拾いものだぞ、ロイ?』
『だからこそですよ、ボス。不用意に優しくしてオレに懐かれても大迷惑ですからねえ―――――お優しくしてあげてくださいよぉ、パトリックさま?』
 何しろ刑務所の中では看守に気に入られて、個室に“隔離”されていたらしいですからねえ?案外、遣手の小悪魔かもしれませんが。そう言ってにやりと笑ったロイに喉奥で笑って返して、パトリックはルーシャンに会いに向かったのだった。

 別に拾ってきたガキがヴァージンでもそうでなくても、一度決めたことを翻すような感情がパトリックにあるわけではなかった。
 ヴァージンだろうとそうでなかろうと、支払うべきものは支払ってもらう―――――零落れていた“昔は一大勢力だった”アイリッシュ系マフィアの自分のファミリーを、戦争関連のビジネスでトップに返り咲かせたパトリックの手腕は伊達ではないのだ。1セントもの負債すら見逃さず、きっちりと支払わせる―――――滞れば戦地に送りつけるのもよかったし、もしくは別の方法で支払わせるのも構わなかった。きっちりと得るものさえ得られれば、手腕は問わない――――――それがパトリックの持論であったし、実戦することに1ミクロンほどの躊躇いもなかった。
 ルーシャン・カーの場合は、愛玩動物とすること―――――初会の途中で舌を噛んで死なれるのだけは、徹底的に自分だけが損した気になるからロイに薬を使わせたが、実際のところルーシャンが途中で自殺しようと廃人になろうと構わないのだった。
 見た目は魅力的な、高慢なガキで。本音を言えば、パトリックがなにをしたいのかといえば、そのプライドをへし折って、泣かせてみたい―――――ただそれだけのことだったりする。
 甘やかされたガキを徹底的に惨めな気分にさせて、絶望する姿をニヤニヤと笑って眺めたい―――――ファックするのは自分でも他人でもよかった。抱いてつまらなければ、適当に興味のある部下にでも厄介払い代わりに押し付けてやろう、とすら思っていた。

「クソガキ、少しは緩めろ」
 ぱしん、とキツく締まったままのケツを、緩く音を立てて引っ叩いた。
「ア…ッ、」
 クスリで快楽に強制的に浸らされ、ゆらりゆらりと揺れるブルゥアイズから涙が零れ落ちていた。それと同時に爪先から震えがきたのか、小刻みに細い体が震えて、きゅう、と締め付けられる。むずがるように呻いた声が官能的で、パトリックは薄く笑った。
「挿れられたダケなのに、随分と具合が良さそうだな、ルーシャン?」
 ぽた、と。立ち上がったままの屹立から、体液が零れ落ちるのを見下ろし、パトリックは声を上げて笑った。
 笑った震動がヨかったのか、仔猫がぎゅう、とリネンを引き結ぶのに、さらに笑ってゆるりと腰を揺らした。
「“ディヴ・キャマラー”も死に損だな」
 拓かせるために抱えていた片手で、ゆる、と尻を揉んだ。
 名前にきくんと揺れたルーシャンの脚をさらりと撫で上げ、引き上げさせる。
「ああ、そうでもないか。コレを味わったらおちおち死んでなんかいられねえか」
 蕩けたブルゥアイズが一瞬細められ、くう、と強張った脚に緩く口付ける。
「ルーシャン・カー。オマエは随分なガキだな?」
 狭い内に押し込むために自分に添えていた片手を外して、たらりと屹立から零れたものに濡れた草むらを指先で撫で上げた。
「――――っ、ぅ」
 彷徨うブルゥアイズに視線を投げたまま、ず、と腰を押し入れていく。
「オマエがまっさらなのは、単にラッキーだったのか……それともアンラッキーだったのか」
「ん、ぅうう…ッ」
 てろりと引き上げさせた膝を舐め上げる。
「オレに食わせるために守り通した純潔じゃなかったのになァ?」
びくびく、と下肢が震え。勢いよく吐き出された体液が、とろりとパトリックの胸から腹部を濡らす。
 ほろほろと涙を零すルーシャンの両脚を抱え上げてリネンに膝を押し付ける。
「あ、ん、ぁああっ、」
「けどな、オマエ。素質ありすぎだぜ?」
 甘く啼いたガキのヒップを両手で掴み上げて、ぐ、ぐ、と緩くリズムを刻む。
 ひくん、と揺れたルーシャンの屹立が、また力を取り戻しつつあることに、パトリックは満足してぺろりと口端を舐め上げた。
「オマエ、ココで喰っていけるって。新聞社をクビになったらいつでも戻ってくればいい。雇ってやる」
 ぐち、と腰を押し入れて、わざと“ココ”の意味を理解できるように音を立ててやる。
「ヒぁ、ぁ…ッア」

 甘く甲高い嬌声に、パトリックは気分を良くして、ゆっくりとリズムを刻み始める。
 最初はゆっくりと内側の浅いところだけをわざと攻め立てて。後半は、抜け出しそうに浅いところから一番深いところまで、なんども抉るように擦り付けていく。
 気が狂いそうだ、とでも言っていそうなその表情に、パトリックはにやりと笑いかけて、濡れそぼった中心部を片手で弄くった。ぬちゅ、くちゅ、と卑猥な音がすることに笑って、濡れた指で屹立の上を滑らせていく。
「ィ、ア、あ、あ、ゃ、ヤァ、っ」
 ぐう、と浮いた背中を、ぐ、とケツから引き寄せた。
「ルーシャン、仔猫チャン。キモチが良さそうだなァ?」
「ハ、あっ…」
 喉を反らし、シーツに後頭部を擦りつけた猫もどきが、ゆら、と自分から揺らしたことに笑って、パトリックが勢いよく押し入れていく。ぐ、ぐち、ぬちゅ、ぐちゅ、と音が響き。
「う、ぁあ、ン…ぅっ」
「イイんだろ、仔猫チャン?奥がきゅうきゅう締め付けてくるぜ?」
 ぼろぼろと涙を零しているルーシャンの耳元で囁いた。ひくん、と喉を上下させたルーシャンの耳に唇を押し当てた。
「オトコにファックされるのも、悪くはないだろう?オマエは素質充分だしな」
「ぉ、く…ある、」
 嗚咽を零しながらリネンをきつく握ったルーシャンの上半身に身体を重ねて、くちゅ、と腰を突き上げながら耳元で囁く。
「オレのディックだ。あっさり咥え込んでンだぜ、オマエ?」
「まだ、ゃ…、あ、」
 ふる、と身体を震わせたルーシャンが、また体液を零していったのに笑った。
「堪え性が無ェな?ま、いまは許してやるけどな」

 震えている細い身体をリネンに押し止めて、一気に腰をきつく突き入れる。
「…は、キッツ」
 唇を開いたまま、声も出せずにルーシャンが喉奥まで震わせて、ぎゅう、とパトリックの屹立を締め上げていった。
「は、ア……っ、ぁ、」
 見開かれたままのブルゥアイズから涙が零れ落ちるのを吸い上げる。
 とろん、と身体が一瞬で和らいだことに、ふぅん、とパトリックは小さく笑い。リネンにばかりしがみ付いていた腕がのろのろと引き上げられ、首に回されたことに更に喉奥で笑った。“抱き合って”いるつもりなどパトリックには微塵もなかったけれども、不思議と悪い気分はしなかった。
「ルーシャン、仔猫チャン。しっかり捉まってろよ?」
 促した先から強いリズムで内側を回すように腰を突き入れれば、腕が滑ってまたリネンに落ちていっていた。
「ン、うぁっ、」
 く、と背中が浮いたところをきつく掴み上げながら、首筋にぐっと牙を食い込ませた。片方浮いていた肩がびくりと揺れていた。
「――――――――っ、イ、あ、ぁっ」
 甘い嬌声を上げて、びくりと身体を強張らせたルーシャンが、必死に腕に手を添えて縋ってきたのに喉奥で笑って、遠慮ないリズムで引き絞られる内側を擦り上げる。
 達したばかりのルーシャンの屹立が、零した体液に濡れた腹にぐちゃぐちゃと擦れて卑猥な音を立て続ける。
 がり、と爪が腕の皮膚を裂き。
「ヤ、ぁ、あああっ、」
 そう悲鳴じみた嬌声を上げて、ルーシャンが間近で涙を零していった。けれども誘うように蠢く襞に、パトリックは笑った。
「仔猫チャン、ほしいって言ってみろ」
 立て続けに快楽に放り込まれているせいで真っ赤に染まった顔が、ぼうっと見上げてくるのに、にやりと笑いかける。
「天国に放り込んでやる」
「ゃ、」
 泣きそうに顔を歪ませたルーシャンが、ガキ相応に困惑と恐怖をその表情に湛えていることに、パトリックはとろりと唇を舐め上げてやる。
「イイだけだっての」
 ふわ、と身体を和らげた仔猫を一層抱き寄せ、膝を腰下に滑り込ませてさらに身体を密着させながらそのカオを覗き込んだ。
「ルーシャン、怖くなんかねェよ」
 ちゅく、と甘く唇を吸い上げて、けれどリズムは崩さないまま甘く囁く。
 はたん、と瞬いたコドモの、酷く幼い表情にパトリックはふわりと微笑んだ―――――すぐさま色付いた表情に“堕ちて”いくのを間近で見詰めるのも酷く気分がイイ。

「奥に欲しいか、かけて欲しいか。選べ」
「ぁ、」
 きゅう、と目を瞑ったルーシャンが、ふるりと身体を震わせたことに喉奥で笑った。
「解った。奥だナ?スキモノ」
 はむ、と唇を啄ばんでから、ずく、と力強く内側を抉る。
 ぐら、と首が揺れたのを見詰めながら、く、と目を細め。パトリックは発光する視界に意識をとられないようにしながら、快楽の絶頂に飛び込んだ。
 ぎゅ、と引き絞られるままに体液を注ぎ込めば、がり、と腕に爪が立てられ。くう、と身体が弓なりに反り。
「――――――――あ、あぁ…ッア」
 ぎゅう、と目をきつく瞑って切れ切れに声を上げたルーシャンが、またとろりと体液を零していった。
 身体を重ねたまま、くぅ、とパトリックが笑う。
「オマエ、いくらクスリが入ってるとはいえ、感度が良過ぎねえか?」
 ふるふると震えながら、荒い呼吸を繰り返すルーシャンの濡れた額に貼り付いた髪の毛を退かしてやり、とん、と甘く唇に口付けた。
「ま、オレは楽しんでるけどナ?」
 甘い息が競りあがって止まないルーシャンの脚が、ゆる、と背中に当たったことに口端を引き上げる。
「オマエが満足しきるまで喰ってやるから、安心しな、仔猫チャン」
 どこまで甘やかされたアマッタレのガキなんだろう、とパトリックは喉奥で笑いながら、濡れた背中を掌で撫で上げた。
 ふわ、と。酷く甘い吐息を零したことに、甘やかされることが好きなのだと知ってパトリックがさらに口端を吊り上げる。
「クソガキ、オマエを他所にやっちまうのはナシだ。きっちりオレを満足させるまで離してやんねえからな」
 さら、と髪を掻きあげてやりながら、ゆら、と腰を揺らした。掌に額を押し付けるように擦り付けてきたガキが本当に大きな猫のように思えて、パトリックは喉奥で低く笑った。
「零れ…っ、」
 呻くように甘く掠れた声に、パトリックは柔らかく唇を噛んだ。
「ん、ふ、」
 むずがるような甘く蕩けた声に、ぺろりと唇を舐めてやる。
「まあ始めてだしな?まずはオマエ、楽しめるだけ楽しんじまいな」
 とろ、と差し出された舌が口付けを求めているのに気付いて、喉奥でまた笑いながらその舌を捕まえた。
「他のことは全部その後だ―――――ルーシャン。仔猫チャン、もっとヨくなっちまいな」
 甘い息を零したルーシャンにとろりと深い口付けを仕掛けながら、緩いリズムを再開させた。
 1ヶ月、楽しめそうだな、とパトリックが笑ったのに、けれどルーシャンが気付いた様子はなかった。




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