魔法



ぱしゃん、と明るいバスルームの中で水しぶきが跳ねました。
ハチミツを総て洗い流した後なので、大切な“こぐまさん”を食べ切った魔法使いも、とろとろの限界まで溶かされて食べられてしまったノーマンも、随分とくたくたです。
湯船にゆったりと浸かりながら、ショーンは濡れたノーマンの髪の毛にキスをしました。
「ハチミツパックでお肌までつやつやさんだ」
ふにゃふにゃと眠たそうに何度も瞬きを繰り返すノーマンを背中から抱きしめて、ショーンは片腕を水から上に出しました。
バスルームの大きな窓からは、大きなお月様や満点の星空と、それを写しこんだ湖が見えています。
日付を跨いでしまったので、もうすぐハロウィンのマジックは終わりです。

きら、と瞬いて、光の精霊が挨拶に来ました。
「――――――ろ、の。…ぃん、きらきら、なぁに―――」
きんいろのきらきらなあに、と訊いてきたノーマンの頭に、こつ、と頬を当てて、ショーンは光りの精霊に“お礼”を渡しました。
ぱし、と精霊が“宝石”を持って消えていきます。
次いで、さあ、とどこからともなく風が吹いて、風の精霊もやってきました。しゃらしゃらしゃら、と涼やかな音がバスルームに響きます。
ノーマンもそれに気付いたようで、音のするほうへとそうっと顔を向けていました。
「―――――ようせい、」
「ハロウィンが終わるからね」
ショーンが肯定の意味で返して、風の精霊にも宝石をお礼として渡しました。
次には、ぽ、と炎がいきなり現れ、同じようにしてショーンが宝石を渡します。
どこ、とバスルームの床から小さな土の塊が出てきました。土の精霊にも、ショーンは宝石を渡します。
そして最後には、湯船の中でぱしゃぱしゃぱしゃ、と小さな人魚が跳ね上がりました。水の精霊です。
こんな光景を目にしたならば、いつもなら大騒ぎするだろうノーマンは、今日はぼうっとそれらを見詰めているばかりです。
くすくす、と笑ってショーンは小さな人魚にも宝石を渡し。ぴょん、と跳ね上がったそれが唇にキスするのを受け止めて、消えていくのを待ちました。
ぱしゃん、と水面が揺れて、精霊が尾びれを揺らめかせて水の中へと溶けていきました。

一仕事を終えて、ショーンはふうっと息を吐き出します。
「ノーマン、こぐまさん。まだ起きてる?」
甘い優しい声でショーンがノーマンに訊きます。
ふてん、と頷いて見上げようとするノーマンの額をさらりと撫で下ろし、目を瞑らせました。
「楽しいハロウィンだった?」
「――――――ょお、」
しょぉん、と小さな声で呼ばれて、んん?とショーンが笑ってノーマンの蕩けた身体を抱きなおしました。
ふてん、と頷いたノーマンが、小さな声で告げます。
「だいすき……」
「毎日がハロウィンなのにね、実はオマエ」
くすくすと笑いながら、ノーマンの髪にそうっと口付けました。
「まあでも、……トリックでトリートは、楽しかった」

とろとろとハチミツを降らすことを決めたのは、ちょっとしたイタズラをノーマンにしてみよう、と思ったからでした。
どうせ降らすなら、最高級のハチミツを惜しげもなく雨のように降らせて、頭から爪先までベタベタになってみるのもいいんじゃないか、と。ノーマンはいつだって甘いけれども、もっと甘くして楽しんでみてもいいんじゃないか、と思った結果でした。
そうするものだと思っているのか、いつだってノーマンは、はふはふのとろとろにされながらもショーンの身体を舐めたり吸い上げたりしてくるのがクセではありました。
ハチミツだらけのショーンの肌は、ノーマンにとっても美味しいものだったのか。いつも以上にちゅくちゅくむちゅむちゅぺろぺろとしてきました。
そして、ノーマンの中でなにがどう到ったのか、今日は果敢にも初めてのフェラにもチャレンジしてきたのです。
オホシサマ・キャンディーを舐めるより丁寧にしっかりと味わわれて、ショーンにとってはとても嬉しいことでした。
その舌技はアタリマエですがとても拙く、けれどもノーマンはたっぷりとショーンにされていたことを覚えていたのか、ときどきとても上手にショーンの屹立を味わったのでした。
まだ発育途中のノーマンの身体は、とても快楽を貪ることにも従順で。中身の幼さと相俟って、時々とても奔放で果敢になったりします。
今日も、初のフェラ・チャレンジにも関わらず、ノーマンはシックスナインまでやってしまいました。その上、たっぷりとかけられてまでいます。
ぽわ、と。熱い蜜を顔にかけられた瞬間にノーマンが浮かべた表情がそれはそれは色っぽくて。
ショーンは今日はいつものように遠慮はせず、様々な体位からノーマンを埋めて、沢山沢山ノーマンに快楽の天辺を極めさせました。 ショーンが溢れてもノーマンの内側に蜜を零したのは、いうまでもないことです。

ハチミツをたっぷりと舐めながらエッチをしたせいか、今日のノーマンはとてもよく頑張っていました。
『―――とろぉ、ってする、しぉ…、んん』
そうとろとろの口調で呟いて、ぷるぷると震えながら真っ赤に顔を染めて腰を自分から揺らしていました。
ショーンが突き上げるたびに入り口から、くぷ、こぷ、と蜜が溢れてもです。
きゅう、と背中を浮かせながら、ノーマンがびくりびくりと身体を跳ねさせました。
『ぁン、ア…っんぅ、』
そう甘い声で鳴きながら、とろとろと白濁した蜜をちょっとずつ零していっていました。
ずく、と絡みつくような内側から屹立を引き抜き、ノーマンの蜜を零す先端を吸い上げたならば、さらに甲高い声でノーマンが鳴いていました。 ぴくぴくと震えながら、
『しぉ、あ、アァ、』
そう甘い声を漏らしつつ、ほとほとと快楽の強さに涙を流したのです。
舌足らずの嬌声と、成長中のコドモとオトナの境界にある身体と、ショーンのことを100%信頼しているノーマンが、いとおしくてたまりません。 それはショーンだって頑張ってしまいます。
きゅ、と開いたままの入り口を締め付けようとし、とろ、と白濁した体液を零して震えるノーマンが、
『おしり、きゅうって、して…っ』
とでも言おうものなら。
『きゅう?こう、かな?』
そう言ってワザとまるっとした尻をきつく揉んでしまうのも、仕方のないことかもしれません。
『ひぁ、アアん…ッ』
そう喘いで、とろ、と白濁した蜜をまた熱に浮かべたノーマンが、陶然としたままこくりと頷くのにくすくすと笑いました。
『零れてきちゃうね』
とろ、と真っ赤になった縁をぺろりと舐めれば、は、は、と荒く喘いでいたノーマンが、
『っぁ、あ!』
そう切羽詰った声をあげ、さらに甘い声で焦ったように言っていました。
『じゅわん、ってする、しょぉ、ッ、』
『んん。中までたっぷりハチミツだね、ノーマン』
きゅう、と下肢を捻ろうとしたのを抑え付けて、とろとろと舌で熟れた内側を掻き混ぜました。
震える息が途切れ途切れに喘いでいたのが、
『ぁ、あ、ん……』
と、うっとりとした声に変わっていき。くう、と長い脚が開いていって、もっともっと、とショーンを招きました。

いつもそんな調子ではありましたが、今日はスタミナがバッチリだった分、何ラウンドか余分にノーマンをイかせることができました。
抱かれる度にエロティックに成長していくノーマンを、どうやったら愛さず、なおかつ甘やかせずにいられるでしょうか。
『しぉは、どっちのお口がすきー……?』
なんてことを、とろっとろに蕩けた甘い声で訊いてくるような素直な大事な子です。
じわ、と暖かい気持ちが胸の奥を浸し。その熱が欲情を炎に変えさせ、それはそれはショーンのやる気を引き起こさせました。
Honeyed honey’s honey-filled honey pot(蜂蜜漬けハニィちゃんの蜜がたっぷり溜め込まれた蜜つぼ)をもっともっといっぱいにしてやんなきゃな、と頭の中で半ば自分を茶化して宥めつつ、煽らなければ。ともすればとても乱暴にしてしまうところでした。
なんていったってこの強大な魔法使いは、実際にはまだまだ若造なのですから。

とろとろ、と眠たそうに何度も目を瞑るノーマンをもう僅か、強めた腕で抱きしめて、ショーンは深い息を吐き出しました。
くてり、と身体を預けきって、
「しょぉ、」
とうっとりとしているノーマンの身体のあちこちには赤い鬱血の後がお花のように浮いています。魔法使いがたっぷりと頑張った証です。
「来年も、ハロウィンをしようか…?」
「――――――はぃ、」
ふてん、と頷いたノーマンが、すてきです、と寝言のように言うのに、ショーンはくすくすと笑いました。
「今年以上のハロウィン、なんてどうしたもんだか。―――――リクエスト、なにか、あるか?」
「あの…ね、あの、―――――」
言葉の途中で、すぅ、とノーマンの息が眠りに落ちていくのが聞こえました。けれど、きゅう、と縋るように腕を指が握ってきます。
幸せだなあ、と。魔法使いはとろりと甘い微笑を浮かべ。ノーマンをたっぷりと驚かせ、喜ばせ、愛しきったハロウィンが無事に終わったことにそっと感謝しました。
今日一日、いつも以上に働いてくれた精霊たちも、ショーンが渡した宝石で満足してくれたようでした―――ハチミツと、命の種と、沢山の愛情で出来た乳白色の魔法の結晶。
当然、たっぷりとそれを一番間近で得た“ルーシー”は、酷くご満悦のようでした。
ショーンは警戒心もあってルーシーをノーマンに会わせることはしませんが、いつだってショーンの内にあり、魂をシェアしている魔は、ノーマンがとてもお気に入りです。
徒に最初にショーンを煽ったのではありません。

ふう、とショーンは一つ息を吐いてから、湯船から上がりました。
側に置いておいたタオルでノーマンを包み、ぱちりと指を鳴らして余計な水分を総て取り除いてバスタブに戻してしまいます。
ハロウィンの夜が過ぎて、すっかりいつもの普通のログ・キャビンへと戻っている室内を歩いていきながら、ショーンはバスルームの掃除をするよう、魔法をかけました。
そして、まっすぐにきれいに整えられたベッドに向かい、ノーマンをリネンの中に寝かせ。自分もその隣に滑り込み、ベッドサイドに置いておいたジャグからグラス1杯の水を飲み干してから、ノーマンを抱えなおして目を瞑りました。
くてん、とくっついて、胸元に顔をもぞもぞと埋めてきたノーマンの髪に頬を寄せて、すぅ、と魔法使いも長い一日の“パーティー”の後、夢へと滑り込んでいきます。
しぉ、きらきら、と。そう寝言で言おうとしたノーマンが、もごもご、と口を動かし。けれどもすぐに、すぅっと静まり返っていきました。
バスルームでの掃除の魔法も、すぐに仕事を終えて道具たちはそれぞれ自分たちの“寝床”へと戻っていき。夜明けまでまだ多少の時間がある闇が、漸く湖畔の家を染めきりました。
最後に動いたものは、ベッドルームの壁にかかっている小さな鏡の中の影でした。
音も立てずにソレはするりと闇に溶け出し。家の周りをぐるりと一周囲んでから、領地の隅々へと散っていきました。
そして、その魔法をこっそりと行ったショーンの中の魔であるルーシーも、暫しの休息を得るため、そっと息を潜めていったのでした。