素敵




星釣りの夜にも、魔法使いはたっぷりとノーマンを頂きました。
お風呂場からベッドに移って、そのままノーマンのカオを覗き込みながら快楽の天辺を目指し。
その後に震えるコイビトの身体をひっくり返して、背中のあちこちに痕を残し。そのまま貫いて軽く啼かせてから、そのまま膝に抱き抱えるように乗せて、最後まで頂きました。
城の窓の外では、明け方近くになって一層星が勢いよく落ちており、その様子はまるで盛大な花火パーティーのようだったのですが、気持ちよくて、感覚が溢れて大変で泣いてしまっていたノーマンは、頭の中を過ぎるお星様にばかり意識がいってしまって、その壮大なスケールのショーはとうとう見えずじまいでした。
ほてん、と泣いたまま意識を眠りに落としてしまったノーマンを抱えて、ショーンはもう一度バスルームへと行き。
ゆったりとお湯に浸かってきれいになってから、またベッドへと戻っていきました。
そして、朝遅くまで、ほてりとしたノーマンの身体を抱えてぐっすりと眠ったのでした。
ノーマンは元こぐまだけあって、随分とスタミナがあります。
だから、あれだけたっぷりと相当にテクニシャンな魔法使いに愛されても、一度ぐっすりと眠ってしまえば、目を覚ました頃には元気になっています。
「しぉ、」
寝起きでぼぉっとしながら、それでも元気にノーマンが言いました。
「たくさん、お星様が降ってまぶしかったです、」
「んー?夢の中で?それとも眠る前?」
くすくすと笑いながら、ショーンが寝癖のついたノーマンの髪を指先で梳きました。
こく、とノーマンが首を傾げました。
「どうかしら……」
呟かれた独り言に、ショーンはさらに喉奥で笑い声を上げ、ちゅっとノーマンの唇にキスをしました。
「起きれるなら起きてごはんにしよう。その後に、取った星を加工してしまわないとね」
ほわあと幸せそうなノーマンのぷくぷくの頬を突付いてショーンが言えば、きゅーっとノーマンが抱きついてきていいました。
「もっとおひるねはだめですか」
「ノーマンは寝ていてもいいよ」
「しょおんは…?」
「起きてごはんの仕度をするよ。なにか食べないと腹の虫が文句を言いそうだ」
くすくすと笑ってショーンが言えば、むー、とノーマンが唸り。
けれど、ショーンが起きるのに合わせて起きだしました。

そうして身支度を整えてからキッチンへ二人で仲良く移動し。
ショーンがノーマンのためにハチミツたっぷりとパンケーキと、ソーセージに目玉焼き、ビシソワーズにサラダを手際よく仕度していきます。
そして出来上がったところで、二人で仲良くブランチを頂きました。
ふわふわにこにこと、始終笑顔で食事を終えたノーマンの唇に残ったハチミツを舐め取ってあげてから、ショーンが洗い物をしてキッチンを一旦きれいにし。
それから魔法の瓶を呼び寄せました。昨夜集めた星が沢山詰まった瓶です。
それらがずらりとキッチンテーブルに行儀欲並んだところで、ショーンが別の瓶を呼び寄せました。
そしてサイズによって星を仕分け、瓶に詰めなおしていきます。
明るい日中の光りの中では、星のカケラはさほど眩く瞬いてはくれません。 それはショーンにとっては毎度見る光景でしたが、始めてみるノーマンはじいっと不思議そうに見詰め、時折瓶に影を作ったりしていました。
くすくすと笑って、ショーンがひとまず大きなカケラだけを集めた瓶を魔法の倉庫に仕舞い。それから、中くらいのサイズと、小さなカケラばかりが集まった瓶を並べなおしました。
「ノーマンはしゅわしゅわが好きなんだよね?」
「はい」
「じゃあ今回は少し多めに作ろうか」
瓶を目で追いながらこくりと頷いたノーマンの頭にとん、とキスをしてから、ショーンがぱちりと指を鳴らし。
湧き水を湛えた水がめが行進するように仕向けます。
水がめたちが森の湧き水が出ているところまで行って、水を汲んでから帰ってくるまでの時間を利用して、砕けた星のカケラを更に小さく砕いていきます。
中くらいのサイズの星のカケラも、密閉できる魔法の瓶に少しずつ分けていれていきます。
そうして帰ってきた水がめに命令して、湧き水を瓶の中にいれていかせます。
並んだいくつもの瓶の中に、同じだけ並んだ水がめから同じタイミングで水が注がれていき。魔法の瓶の中で星のカケラがしゅわしゅわしゅわ、と踊りました。
ショーンが歌うように魔法を詠唱し、取り出したハーブを水の中に落としながら蓋をしていきます。
「こっちはしばらく先に飲むようにね」
中くらいの星が入った瓶に向かってぱちん、とショーンが指を鳴らせば。静かにしゅわしゅわとしだした水の入ったそれらがしずしずと倉庫に向かって歩き出します。
今度は粉に砕いた星のカケラを持って、じっと待っていた水がめを手に持ちます。そして別の瓶の口に同時に注ぎいれていきます。
目をきらきらとさせているノーマンが魅入っている様子にくすりと笑い、瓶いっぱいまで水を注ぎいれます。
そして水がめと星の粉が入った瓶を置いて、ハーブを引き寄せました。
ぽとん、と落として魔法の詠唱をすれば。先ほどのものとは段違いのしゅわしゅわが水の中で沸き起こります。
「こうやって作るとしゅわしゅわがすぐに消えちゃうからね、ほんとうはゆっくりと作ったほうがおいしいソーダ水が出来るんだけど」
くすん、とショーンが笑ってノーマンの目を覗き込みました。
「飲みたいでしょう?」
「はい・・・・!」
ぎゅーっと抱きついてきたノーマンに、何味がいい?とショーンが訊ねます。
「れもんすかっし・・・・!」
「はい了解」
気合の入った声で答えたノーマンに笑って、ぱしん、とショーンが指を鳴らしました。
するとそこに現れたのはレモンではなく、黄色の透明の宝石でした。
抱きついたまま、く、と見上げてきたノーマンに微笑みかけて、ショーンがその宝石に、ちゅ、と口付けました。
そして別の魔法を詠唱しながら、ぽとん、としゅわしゅわソーダ水の中にそれを落としました。
ぱちん、とショーンが指を鳴らせば、ハチミツの瓶が現れて。ショーンがとろりとした蜜をスプーンで掬って、瓶の中に入れて掻き混ぜました。 すると、しゅわしゅわしゅわ、と強い炭酸の音と共に宝石が溶けてなくなり。
瓶の中にはノーマンが見慣れた“れもんすかっし”が出来上がっていたのでした。
「ほら、ノーマン、コップを持っておいで」
くすくすと笑ってショーンが言いました。 きゅう、と抱きついたまま、いや、と首を横に振ったノーマンにさらにショーンが笑って、ぱちん、と指を鳴らしてグラスを二つ呼び寄せました。
そこに瓶の中のれもんすかっしをレードルで注ぎいれます。
「しゅわ、っていってますねえ・・・」
そして、ぱちん、と指を鳴らして透明の硬い塊をその中に落としました。魔法で“冬の倉庫”から呼び寄せた氷です。
うっとりとして幸せそうな表情のノーマンの前に、ショーンがグラスを差し出しました。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます…!」
目を煌かせたノーマンが両手でグラスを受け取り。
ショーンももう一つのグラスを持って、軽くノーマンのそれに打ち合わせました。 ふふ、とノーマンが笑いました。
「音が聞こえます」
耳の側にグラスを持っていったノーマンの頭を撫でて、ショーンが言いました。
「飲みきれなかったドリンクは、あとでデザートにしてあげよう。しゅわしゅわ星のゼリィ、なんてどう?」
うっとりとしていたノーマンが、きゅぴーん、と目を輝かせました。 これは、ものすごく気合が入った証拠です。
こくこくこく、とれもんすかっしを一気に飲み干したノーマンは、ぷは、と息を継ぎ。
「おいしいです…っ」
そう言って飛び跳ね。
「おかわりください、しぉ…!」
そう言って、ゴキゲンな声で言いました。

「つぎはー、お星様しゃんぱんとぜりぃですよう!」
「マスカットを取り寄せないとね」
「お星様しゃんぱん・・・・・・!」
くすりと笑って、ショーンがノーマンのためにお代わりを注いであげました。
それから、ひゃあ、と蕩けた笑顔を浮かべたノーマンのカオを覗き込んで言いました。
「腕によりをかけておいしいのを作るからね。楽しみにしていてね」
師匠に“才能が勿体無い”と常々溜息と共に思われているのを知っていても、愛しいノーマンを喜ばせるためならば、ショーンは努力を惜しみません。
そして、次はどんなことをしてノーマンを喜ばせてやろうか、と考えながら、思いついた端から計画を立てていくのでした。





END