Sweet Little Thing



「なあー」
「ん?」


「なんでそんな、うれしそうなんだ?」


テーブルにへばりついてさっきからサンジの手元を注視していた「クソキャプテン」が
にこやかあに言った。


「アァ?!」
「だってよぉー。俺が砂糖半分喰ってもいつもみてーに怒んなかったし?」
「あーーーー」
「余ったクリームくれてるし?」
「・・・・・・あー・・・」


「うれしそうだぜ?」
「そ、そうか?」
「おお!」
にぱっ、と。


「うれしそーにしてっからいいけどさ。ほんとうなら陸で、でっけーパーティしようと
思ってたんだぞ!」
「いらねーよ。ンなの」
「ぜってーそういうと思ったから!俺ら内緒にしてたんだ!」
どーん。と一回威張り。


「ま。着かなかったけどな!!」
どどん、とまたまた威張る。


サンジは軽く肩をすくめ。
バターを取り出すついでにルフィにも適当に果物を放る。
ぱたぱたぱたぱた、と尻尾をふる音でも一緒に聞こえてきそうな笑顔。


「でもさ。きょうくらい、ヒトの作ったもんとか食いたくないのか?」
「いや、べつに」
「ふーん?」


ボウルのなかで、卵とバターがあわせられる軽い金属音がする。


「な。それ、ケエキかぁ?」
「てめえにはこれがミートローフにでも見えんのかよ?」
泡だて器を顔の前にもってくる。
「きょうのか?」
「そ。お茶の時間用だ」


「誕生日ケエキだなっ」
「まー、そうだな」
「じゃ、きっとすっげー美味いだろ?」
「俺の作るモンはいつだって殺人的にうめえんだよ、ボケ」


「いっつもおまえ楽しそうだけどさ、メシつくるとき。マキノがな、」
「おー。おまえのとこの美人だな?」
「マキノがな、」
「てめえムシかよ、クソ上等だなオイ」


「マキノが!」
「ああ、そのお姉さまがどうしたって?」
くっくっと小さくサンジは笑い。




「しあわせなヒトのつくる物はいつもの何十倍もおいしいんだっ、ていったんだ。
だからそれ、ムチャクチャ美味ェな。きっと。」

テーブルに伏せたまま、にこにこと。



一瞬。真顔になるけれど。
だから。ったりめえだっつーの。とサンジは唇のハシをひきあげ。



「あと、きょうな、ナミがお茶の仕度するって言ってたぞ!」
「さすがナミさん。そいつはなによりのプレゼントだ」
「誕生日だもんなー。だからそれ12個作ってくれ」
「オロスぞ?」



生地が焼き型に流し込まれる。



「なあ。一緒の年になるのって、そんなにうれしいか?」
「はぁ?!」


あ、ちがうのか、じゃあ、やっぱりなにかもらったろ
と、突然キャプテンが言い。
ぜってー、うれしそうだもんナ。いつもより。


ぴょん、と飛び上がり。


「じゃ、12個なー」


ぶんぶん手を振って扉を抜けていく。


「ドアは閉める!」


おー、と声が戻り。
ひょい、と顔が覗き。

「おめでとう!」
にぱっと笑い、すぐ消えた。



ハ。と小さく笑うサンジはたしかにとてもしあわせそうで。



本日のケエキはたぶん世界一の味。


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Thank you for sharing your time.
But, how about the last call?...........