*32*

メキシコで元部下だったド阿呆を一人処分した。
シンと静まり返った円卓の会議室で、ソレが無様に命乞いをするのを見ていて、奇妙に頭が冴えた。
「トップがだらしないとな、末端まで響くンだよ」
ダブルタップで熱を持ったリヴォルヴァをテーブルの上に置きながら言えば、銃声に自然に背中を丸めていた連中全員の背筋が伸びていった。
「ストリートの連中に脳味噌がある事を期待すンな。もちろん、中には優秀なのが紛れ込んではいるだろう、だが大概の末端の構成員はバカだ。学歴がソレを証明することもあれば、生活態度がソレを証明することもある。いまそこで脳漿を飛び散らせたコーネリアスも、アイジンとアルコールに脳味噌を持っていかれたバカだ。オノレの部下の行動も把握しきれないバカは死んで当然だ」
誰も動けない中、パトリックは元通りに椅子に深く腰をかけて、胸ポケットからタバコを取り出し、それにライターで火を点け。ふう、と煙を円卓の上に吐き出した。
「アイジンを持つなとは言わない、酒を飲むなとも言わない。プライヴェートでなにをしようと、それはオマエらの勝手だ。私財を投げ打ってヴェガスで狂っても、それがテメェの金なら文句は言わない。ファミリの一員であることと、プライヴェートをきっちり分けていられりゃ何をしたってイイ。自分の部下の行動を把握し、遣るべきビジネスをこなしていりゃ、オレはテメェらを見捨てない。ファミリィだからナ」
ツン、カツン、とライターの角でテーブルを打つ。
「けどナ、ファミリィに有益じゃないモノはいらねぇんだよ。ましてやオマエらは幹部だ―――――解るよナ?」
人一人に端からじっくりと視線を合わせていく。真っ直ぐに見詰め返され、それぞれが肯定を返してきてから、ふン、と笑った。
「まあトチれば直ぐ解る。末路はそこのバカと一緒か……場合に寄っちゃ、もう少しシビアにいかせてもらうかもしんねえ。ま、状況にもよるか」
カツン、と最後にライターでテーブルを打ってから、にかりと笑った。
「脳味噌を使ってビジネスは遣ってくれ。オレが言いたいのはそれからだ。今日はコレでオシマイ。アロンソ、屋敷を汚して悪かったな」
いえ、ボス。そう言って返したアロンソに、にかりと笑いかけて、パン、と掌を打った。
「次回はコーネリアスの席に誰を上げるか決めちまおう。候補者が居れば早めに身辺のレポートと写真を回して来い。こっちで数を絞っておくから、最終的には会って決めようか。ハーベイ以来だな、楽しみだ」
す、と何人かの目がきらりと光ったのに薄く笑った。
「こっちの乾いた空気には飽きたからナ、次回はジムの屋敷に集おう。ジム、それでいいナ?」
ぴし、とジムが背筋を伸ばした。
「イエス、ボス」
「日程は追って連絡する。んじゃ、お疲れ」

ごと、とテーブルの上からリヴィルヴァを引き上げて、立ち上がりながらそれを肩から提げているホルスタに収めた。
ガタガタと全員が立ち上がり始める中をとっとと出口に向かえば、ボス、と声に引き止められて振り返った。
「ん?どうした、イアン?」
「お忙しいようでしたら、また後日にいたしますが」
祖父の代からファミリィの一員であるイアンに、にかりと笑った。
「玄関に到達するまでに言ってくれればいい。なんだ?」
「いえ、議員と会食する機会がありまして。次回は是非彼の屋敷のほうで一度ディナーでも、と」
「ウェインバーグか、」
屋敷の廊下を歩いて、控えていたアロンソの屋敷の執事に帰る旨を伝える。
直ぐに下がった執事が運転手に伝えに行くのを目の端で見ながら、イアンに視線を戻した。
「キナ臭くなってきたか?」
「小競り合いが長引きそうだと大喜びしています。この分だと出兵は増える一方だと」
「まァな。カーテンの向こうのあちらさんも、いまはやる気十分だろ」
頷いたイアンに、苦笑を返す。
「泥沼化すンだろうになァ―――――まあオレとしては、儲かる機会がまた増えて有難い、ってのがビジネス的な本音だがな」
ま、そろそろ新しい“武器”にも目を向けたいところだがな、と笑って、書斎の端に置いてあった灰皿に短くなったダンヒルを押し付けた。
「もしお会いする気がありましたら、日程を調整させていただきますが」
「ン?んー、そうだなァ……」
ちら、と頭の中を、ロイがしかめっ面してメモ帳とにらみ合っている姿が過ぎった。
「今日は秘書が屋敷でヤボ用でナ、日にち決めンのは、後日で勘弁してくれ」
2週間後ぐらいにどっか空けられるか見ておく、とイアンに告げる。
「畏まりました」

玄関に続く階段を下りていき、アロンソの屋敷の執事が差し出してきたコートをイアンが着せ掛けてくれるのに腕を通した。
「ご同伴なさる方は考えておられますか?」
きゅ、と目を細め。まるで祖父のように目元を和らげたイアンを振り返り、くう、と口端を引き上げた。
「居るとしたらいつもの通り、ロイぐらいだよ」
「ロイが女性だったらバンザイ、だったのですがねえ、パトリック様」
「あんな可愛げの無ェ嫁は願い下げだっつの。ま、跡継ぎは実子じゃなくてもオレは全然構わねェよ、優秀でさえあればナ」
オマエには悪いけどな、イアン。そう言って笑って、ぽん、と背中に腕を回した。
「そろそろ冷え込む時期だからナ。体調崩してンなよ、イアン小父」
また近々ナ、と言い残して、回ってきた車に乗り込んだ。
「真っ直ぐにお帰りですか、ボス」
訊いてきたクレメンスに、あァ、と返した。それから、ふ、と真っ直ぐに見詰めてきていたブルゥアイズを思い出した。
「クレメンス、シルヴァージュエリの店に寄ってくれ」
イエス、ボス。そう答えたクレメンスが車をシティに向けて走らせるのに背中を背凭れに預け、ふい、と小さく笑いながらパトリックが新しいタバコをポケットから引き出した。
――――――オトコにモノを贈るのはいくらなんでも初めてだな。ロイがなんと言いやがるかねえ、と薄く笑いながらタバコに火を点けた。
からりと晴れ上がったメキシコの空ぐらいに、阿呆な展開の後の割には気分がさっぱりとしていることが奇妙に笑えた。一発ぶっ放して元凶を削除してきたのが、すっきり爽快の理由かもしれなかった。

ジュエラで買い物をして、チャーター機でニューヨークに戻り。屋敷に辿りついたのは、夜もとっぷりと更けてからだった。出迎えに出てきたロイと、屋敷に居た連中を捕まえて軽くミーティングをし、必要なことを報告し終え。ロイだけになってから、ホルスタに空港で収めなおしたガンをロイに差し出した。
コーネリアスの席が空いたことは報告済みであったから、ロイはそれを引き受けて、バレルを引き出し、カルルルル、と音を立てさせて回していた。がちりとそれが戻され、ロイがクリーニングする為にテーブルの端に置いた。
「ご気分はそう悪くないようで安心しました」
「不思議と悪くない。見飽きたツラをもう二度と見なくてもイイと思うと尚更だな」
にぃ、と笑って返したパトリックに、にっこりとロイも笑った。
「お猫サマも、不思議と可愛らしかったですよ」
「へえ?」
片眉を跳ね上げて、頬を吊り上げた。
「ええ。お食事の量はボスが居なくなってから少し減りましたが、まるきり食べないわけではありませんでしたし。タバコも少々、強請られました」
はァん、と笑ったパトリックに、ロイが小さく頷いた。
「あまり眠れてはおられないようでしたが、会話もしましたし。すこぉしだけ、笑っておいででしたよ」
きゅ、と目を細めたロイに、くくっとパトリックが笑った。
「可愛いんだろ、」
「お猫サマがですか?―――――まぁ、そうですね。オレはでも、グラマラスなオンナノコのほうがいいですけど」
いくら天然で甘えん坊でもね、とロイがくすんと笑った。
「オレはもう少し、気の利く甲斐甲斐しいタイプがいいですね」
確かににゃあにゃあと鳴かれるサマは可愛らしかったですけど、と笑ったロイがテーブルの上に放り出してあったジュエラの箱を顎で示した。
「パトリック様、お猫サマも甘やかしますか」
「少し懐いたトコだったからな。適当に選んできた。猫なら好きかもしれないと思ってナ」
箱を手にとって、黒の牛革のケースを開いた。中身をちらりと見たロイが、ハ、と笑った。
「サイズ、測っていかれたんですか?」
「手首は散々握ったからナ」
くう、とロイが唇を吊り上げた。
「さすがはパトリック様。もうお猫サマはお休みですが、どうなさいます?」
「どうせ眠れてないなら、寝かし付けに行ってやるサ」

椅子から立ち上がったパトリックに、ロイが頷いてドアを開けた。
「お猫サマが、なにやら複雑なお顔をなさっていましたよ。ボスが不在の間も日数にカウントされるのか、と訊いてこられまして」
はン?と片眉を跳ね上げれば、くう、とロイが笑った。
「もちろん、こちらはビジネスで不在にしているのですから、日数にはカウントさせていただきます、とお応えしておきましたけれども」
目を細めたロイが、ルーシャンの反応を楽しんだことを読み取って、パトリックは薄く笑った。
「アレは喜んだか?」
「それは、ボスがご自身で確かめられるといいかと」
ルーシャンを閉じ込めている客室に向かいながら、ぐい、とロイの後頭部を突いた。
「ナマイキ」
ひゃは、とロイが笑った。
「そりゃ、ボスの腹心の部下であることを常に狙ってますからねえ?」
「置いてかれて寂しかったか、ロイ?」
「オレがですか?勿論ですよ。でもまあ、ボスの代わりにお猫サマの面倒を見させて頂くのも、それなりには」
くすりと笑ったロイが、ドアの外で脚を止めた。
「オマエ以外には、ちょっと難しいかと思ったンだよ。ウィンストンはそんな場合じゃねえしな」
「次回のボスのカッコイイ場面はミスしたくないですねえ」
とん、とロイの額を指で突いた。
「阿呆。どんなテレビのヒーローだよ」
「ボスはダークサイドのボスですが、オレのヒーローですよ。昔からね」
にか、と笑ったロイのオレンジ色の頭をぐしゃぐしゃと撫でてから、顎をしゃくった。
「今日はもう休んでいいぞ。明日からまた忙しいからナ。ロイ、お疲れ」
「イエス・ボス。外で番は?」
「猫を鳴かせるぐらいだからナ、明日の朝にノックで起こしてくるだけで十分だろ」
片頬を吊り上げて笑ったパトリックに、ロイが苦笑した。
「可愛がりますネ?」
「猫は可愛がるモンだろ?」
「ではご存分に」

くす、と笑ったロイにひらりと手を振って、部屋の中へと脚を踏み入れる。相変らずあまり使用された形跡のない部屋を通り抜けて、静かにベッドルームの扉を開けた。
サイドテーブルに乗せられたルームランプの淡いオレンジの光に、酷く毛艶の悪いルーシャンがソファに蹲って絵をぼんやりと眺めていた。
かち、と扉を閉めた音に、ふい、と振り向いてきた姿が、なにやら拗ねた猫のように見えて、パトリックは薄く笑った。
「よぉ。ロイは世話を焼いてくれなかったか?ヒデェ面しやがって」
目の下の隈が濃くなり、頬がまた痩せこけたのに片眉を跳ね上げる。さぁ、とブルゥアイズが見開かれたのに、こくん、と首を傾けた。
「オレが顔を出さずに喜び勇んで踊りまわってたのかと思いきや――――――なぁにやってンだよ、仔猫チャン?そんなに寂しかったのか?んん?」
静かにルーシャンが蹲るソファに近寄っていけば、きゅ、と目を細めたルーシャンが、自信なさ気に視線を彷徨わせたのに、パトリックが薄く笑った。
ふ、と思い出したように、ルーシャンがソファから立ち上がろうとし。けれど長時間同じ場所でぼんやりとしていたのだろう、バランスが上手く取れずによろけた所を捕まえた。びくん、と肩を跳ねさせたルーシャンの顔を覗き込み、にぃ、と笑った。
「放置しといて悪かったナ」
「いつ…戻って……?」
小さな声が戸惑った風に訊いてきたのに、ちらりと腕時計を見下ろした。
「1時間ぐらい前か?ああ、日付変わっちまった」
さら、と滑りの悪くなった頬に指を滑らせて、苦笑し。じぃ、と見詰めてくるブルゥが逸らされないことに、とん、とその額に唇を押し当てた。
「今日は甘やかしてやるから、それで許せ。朝まで離してやんねえけど、いいな?」
ひょい、と脇の下に手を入れて、抱き上げる。ぎゅ、と睨み上げてくるルーシャンの体重が少し前に逆戻りしたことに、小さく苦笑を漏らした。
「気持ちよくして、眠らせてやるって。だからそう睨むナ、ルーシャン」

首を小さく横に振ったルーシャンが、僅かに焦ったかのように身体をもぞっと動かしたのに構わず、リネンの上に軽い身体を下ろして、ぐい、と細い手首を上げさせた。
ポケットの中で、箱の中からバングルを取り出し。きゅう、と眉根を寄せたルーシャンのブルゥアイズを見ながら、輪をルーシャンの細く束ねさせた指に通して、ぐ、と奥まで引きおろした。
「―――――――っぃ、」
小さく声を上げたルーシャンの腕に、金と銀の絡まった蛇が僅かな余裕を持って巻き付き、そのルビィレッドの双眸を光らせたのに、パトリックが薄く笑った。
「土産だ、仔猫チャン。オマエに遣るよ」
ちゅ、と赤くなった手に唇を押し当ててから、に、と笑ってその目を覗き込んだ。ふ、と重さに視線を流したルーシャンの身体をリネンに着けさせ。
「ボーダー、越えてたんだ、」
そう、ぽつん、と呟いたルーシャンの部屋着の裾から手を滑り込ませた。
ひく、と肌を強張らせたルーシャンのブルゥアイズを見詰めながら、くう、とパトリックが薄く笑った。
「フットワークが軽くなきゃ、今時のマフィアは勤まらねェよ。これからは高速の時代がやってくる。ぽやぽやしてるオマエは、取り残されちまいそうだなァ?」
少しだけ辛そうに、くすん、とルーシャンが笑った。
「そうかな……?どこにも行き場、ないから」
当たり前のように呟いたルーシャンに、くく、とパトリックが喉奥で笑った。
「この後に作ればいいさ。居場所は主張したモン勝ちだ。揉めても勝ち取ればイイ」
す、とルーシャンが視線を外し、ふ、と小さく笑い。それから起き上がろうと身体に力を入れていた。
「ごめ…なさい。まだ準備してない、」
消え入りそうに小さな声で言ったルーシャンが、いかせて、と表情で告げてくるのに、ぐぃ、とルームウェアの裾を引き上げる。
「別に構わない。オマエが寝てたら明日にしてやろうと思ってたくらいだからナ」
少し息を呑んだルーシャンから、トップを脱がせながらパトリックが告げた。
「それに、今日は甘やかしてやるって言ったろ?ソレもしてやるって」
細くなった白い肌に、淡いオレンジの光がとろりと馴染むのに目を細めて、く、と身体を緊張させたルーシャンの唇に、トンと口付けた。
「嫌なら、オレが見ててやるから、自分でスルってのもアリだけどナ」
どっちにする?と目線で問いかければ、
「見られるのは、いやだ、」
そう揺れる声でルーシャンが返してきたのに、パトリックは薄く笑った。
「今日は優しくしてやるから、安心してナ、ルーシャン」
さら、と優しく剥いた肌の上を掌で撫で上げながら、すぅ、と目を細めたルーシャンの唇を柔らかく啄ばんだ。
「今日は気分がイイからな。オマエがソレを踏み躙ったりしねえ限りは、オレの機嫌はいいままだ」
邪険にしたりしねえから、甘えて来い。そう囁いて、薄く開いた唇の間に舌を差し込みつつ、体温の低い肌を愛撫しにかかった。ふる、と震えたルーシャンが零した吐息が既に喘ぎに近くなっていることに、パトリックは唇を合わせたまま笑った。

寂しがり屋のアマッタレを、丸きり放置していかないでロイに面倒見させていたことは間違った判断じゃなかった、と思いつつ。これなら案外簡単に登り詰めそうだな、とこれからの“楽しい”時間を予測し、機嫌が悪くなる要素が見付からねェ、と脳内で呟く。
人肌に安心したのか、快楽に従順なだけなのか。体温が僅かに上昇したのを掌が捉えて、とろりと深く舌を絡めてやる。
「っく、…ん」
小さく喘いだルーシャンの手が、顔の横で一瞬戸惑い。けれど、きゅ、と肩に指が縋ってきたことに、喉奥で低く笑った。
口付けだけで縋られるのは、いままでにないリアクションだナ?と解り。二匹の蛇が服の上から押し当てられる感触に、甘く舌を吸い上げてやる。
ふる、と小さく震えたルーシャンのボトムスを引き下げるために手を滑らせながら、ルーシャンの舌を甘く咬んだ。
「―――――――ン、う」
丸3日の不在が、ルーシャンをどのように“変えた”のか、それをこれからたっぷりとルーシャンの身体に訊いてやろうと決めて、そう甘く呻いたルーシャンの舌をまた甘く吸い上げた。
多少拙かろうが、キツかろうが、全部許せちまえそうだ、と自覚しながら、ますます深く埋められてくる指の強さに喉奥で笑った。このアマッタレの猫が、立派なラヴ・キャットになりそうだ、と言ったら、ロイはどんな顔をしやがるかね、と。
脳内でちらりと思って、けれど、ちゅく、と素面のルーシャンが初めて舌を絡めてきたことに思考を追いやった。アマッタレらしく、キスは技巧派らしい、とルーシャンのことだけに意識を戻す。それほどまでに“人寂しかった”のか、とろとろと甘く舌を吸い上げてくるルーシャンの下肢から下着ごとボトムを脱がせながら、パトリックは薄目を開いて、間近で揺れるルーシャンの淡い金色の震える睫を見下ろした。
する、ともう片方の手指が髪に滑り込んできたことに喉奥で笑い。熱を持ち始めた中心部を軽く掌で押し撫でた。甘く喘ぐように息を漏らし、けれどまた直ぐに合わせられた唇に舌を差し入れてやれば、あむ、と甘えて食んできたことに、また喉奥で笑った。
ひとまず仔猫チャンは、拒絶することは辞めたらしい、と。 “不在”が齎した思わぬ結果に、ピジョンブラッドも高くはなかったナ、と目の端で光るバングルをちらりと見遣ってパトリックがそうっと口付けを解いた。

とろん、と潤んだ双眸が瞼の下から現れ。確かめるようにじっと見詰めてきてから、またふわりと閉じていったことに、内面が和らぐのが解る――――――といっても、パトリックの場合、コアはひんやりと保たれたまま、意識はいつでもシャープに戻れる様にどこか切り離されたままであったけれども。
さら、と短い髪をルーシャンの手指が梳いて戻るのに、パトリックは柔らかく、濡れたルーシャンの唇を啄ばんだ。
「オマエが起きれたら、ランチを食いに温室にでも連れてってやるよ。仔猫チャン」
甘い息を零したルーシャンの肌をさらりと撫で下ろして、パトリックが柔らかく微笑んだ。少し目を見開いたルーシャンが、それでも嬉しそうに小さく口元を引き上げて笑った。
ぺろ、と柔らかくルーシャンの唇を舌先で辿り、パトリックが目を細めた。
「漸くイイ顔をするようになったナ、ルーシャン」
僅かに擽ったそうに唇を開いたルーシャンの肌を、少し強めに押し撫でた。
「―――――――ふ、ぅ」
甘く重ったるい息を零したルーシャンの中心部に向かって手を滑らせながら、パトリックがまた柔らかく唇を啄ばんだ。
「オマエは甘やかし甲斐がありそうだナ。いい傾向だ、仔猫チャン。今日は楽しめそうだ」





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