「―――――っゥ、」
熱、深くまで埋められて。逃げかけても背中押し当てるみたいになるだけで。中からの熱さに喉を反らせて息を
吐きだそうとしても。
重なった身体がアツイ。
カタチ、わかるくらい内が拓かされたのと同じだけ伝えてきて。息なんか出来なくなって。
手を預けていた腿のとこ、ぎりぎり掴んじまった。
焦がれたはずなのに、埋め尽くされて。けど―――

また身体が揺れて。抱きこまれたんだと知った。
「ぁ、あ」
手が前を滑っていく。
また高まったジブンに触れられて、投げ出したままの足がぐしゃぐしゃになったリネンを引き摺った。
「―――ァ、」

音が直に流れ込んでくる。耳元。
「ぅあ、」
食んでくる唇から逃げたくても。息まで感じる距離で抱きすくめられてて。
「ぁ、あっ」
腕の中で身体が強張って。
腰が少し揺らいで、存在感に鳴いた。

「逃げるな、」
耳朶を噛まれたまま低い声が流れ込んできて。やんわり触れられてた下肢ごと震えた。直に、アタマのなか触れ
られたみてぇな。
「ァ、ぅあ…ッ」
ゾロの、すう、と平坦になった声が意識のなかにい続けて。
「ぞ、ぉろ…っ」
哀願めいた声があがる。
「すげえあちィな、」

ずる、と踵がリネンを引き乱してって。
刺激に立ち上がりきってる胸元を指先でかるく転がされて、いやだ、爪を立てて。
けど、手に覆われたままのモノも同じだけやんわり撫でられて目が開けてられなくなる。追いきれなくなる。
ずっと、耳に咀嚼する音を注ぎ込まれて。熱い舌が入り込んできた。
「ひ、ァ…ッ」

いてェよ、と。からかうみたいに小さく囁かれて。
首を振ろうとした。
耳朶に熱い息が触れて。
身体の中が重い、
背骨から痺れが伝わって、喘いだ。

埋め込まれたものが脈打って。痛みじゃないなにかが逆に背骨を駆け上がって、声になってもどっかに消えて
いかずに。
戻ってくる、鋭いなにか。
「―――――くぅ、」
熟れたみたいな色、なってるに違いない。胸元を強めに刺激されて。
落としてた腰が跳ね上がる。
ウチ側、熱に擦られて。
上がったおれの声、紛れて。ゾロの落とした低いうめきを散々弄くられて、それでもまだちゃんと耳が拾って。
「んんぁ、あッ」
締め付けちまって、頭がぐら、っとした。

「あちィ、」
ふ、と首元と耳朶にまた息が吹きかけられて、どうしようもなく泣きたくなった。
おまえの、なにもかもがなんでこんなにトクベツなんだ??
「ゾ、ロォ…っ」



腕の中に抱き込んだサンジの身体が熱かった。
受け入れている体内は、さらに熱かった。
熱で意識が飛びそうなのに、どこかクリアな部分が残っていて。
――――ただの潤滑剤じゃねェのか、アレは。
シーヴァのボトルを横目に、思った。

絡み付いてくる内に包み込まれて、思わずガツガツと自分本位に食い散らかしたい気分になる。
乱暴に突き上げて、思う様、鳴かせて。
けれど、サンジに抱いていい、と言われた瞬間に、絶対にそれだけはしないことを心に決めたから。
とろとろにさせてから、それから喰う、と言ったから。

なぜそんな気分になったのか、ワカラナイ。
ただ、サンジを高めて、どこまでも蕩かせて。
意識と無意識の間、自我を忘れるほどに気持ちよくさせてから―――そんなことを思ったたけだ。
サンジの柔らかな耳朶を吸い上げながら、フェザータッチで感度の上がっている胸の飾りに触れる。
上がっている息をサンジの耳に吹き込むと、びくびくと内が蠢くのがキモチヨカッタ。

「あぅっ、あ」
焦れて泣き出しそうな嬌声は、甘いスパイスのようで、聞き飽きない。
ピンと張った袋と、甘く固くなった昂ぶりをそうっと揉むようにすると、右足を引き摺るようにして、膝を立てていた。
反った背中が擦りつけるようにくっ付いてきて、弄りながら抱きしめる腕の力を増す。

「すげェキモチイイ、」
「ゾ、…ろっ」
く、とうめき声を漏らしながら、囁きを落とす。
掠れた声が情欲を煽る。
「なぁ、サンジ…オマエは?」
答えは訊かなくても解るけれど。

ゆらっとサンジが背中ごと、下半身を揺らしていた。
ふ、と息を吐いて、吐精感を誤魔化す。
きゅうう、と締め付けられて、きり、とサンジの耳朶をピアスする。
熱い手が腿に縋ってきた。
「―――――ィっ、」
短い悲鳴が聞こえる。

――――――ああ、と。
場違いに、回答に辿り付いた。

サンジのイタズラや、そっけない素振りに胸が痛くなる理由。
はぐらかされて悲しくなる理由も、
キツい物言いに悔しくなる理由も。
繰り返し、サンジがキモチイイか確かめたくなることも。
アイシテル、って言って欲しくなることも。
そのことを、サンジに解ってほしくなることも。

――――――バカだ。なんで気付かなかったかな、オレも?
余りに明白で、呆気無いくらいだ。
サンジのことを、オレが好きであればイイ、と思ったけれど。
トンデモナイ、それじゃ“片思い”じゃねーか。
オレは、サンジと。
“恋愛中”、なわけだから。

お互いが好き勝手してるんだったら、相互自慰と変わンねぇ。
違う、そうじゃない。
そんなのは、冗談じゃない。
オレは、サンジに。
恋愛してるってことを、確認したかったンだ。

「ゾ、ろ、ゾロ…っ」
甘い声がする。
なにもかも、委ねられている。
不意に、泣き出したくなった。
とんでもなく深いセックスの真っ最中、洟垂れのガキみたいに。

「…好きだ、サンジ」
抱きしめて、呟く。
肩口を軽く噛んで、きゅう、とサンジの昂ぶりを握った。
「―――――ハ、ッァ」
熱くて、蕩けてて。それでも反応を返してくれる。

キモチイイだけじゃない、とサンジが言っていた。
身体だけじゃない、と言っていた。
ああ、愛されてるじゃねェの、オレ。
すげェ、愛されてるじゃねーの。

くう、と首を仰け反らせて、頬擦りしようと涙に濡れ、それでもどこか恍惚とした顔が擦り寄ってきた。
胸を弄くっていた手を引き上げて、金色の頭を引き寄せた。
ぎゅう、と抱きしめて、頬擦りをする。
あァ、迷うだけ。オレはまだ、ガキなのか。
ゴメンな、もっとでっかいオトコに、これからなるから。

「―――ふ、ぅ」
サンジが嬉しそうに、表情を綻ばせていた。
首を伸ばして、唇を啄む。
「サンジ、オレ。オマエに心底まいっちまってるみてェだ」
言ってる意味、解るかな?
それでも、言わずには言われない。
「愛してるよ、サンジ。オマエだけ」




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