“幸せなこども”ってのを、おれはしらないけど。コイツと抱き合うようになってから、一瞬。崖に座ってた時のことも、
なんだかぼやけてわかンねぇそれよりもっと前の、ひんやりした嫌な感じもぜんぶ。
“消える”時があって。でもそれは、刻まれるリズムに追い上げられて鳴いてる時でも深すぎる快楽に涙が零れてる
時でもなくて。
ぽん、と。意識が何かの線を超えてコイツの熱と腕の中で浮かび上がる瞬間だった、いまみたいに。
身体が気持ちよすぎて、アタマが逃げ出してんだと思ってた。
それくらい、おれは。
ゾロの匂いだとか肌触りだとか体温だとか声だとか、ぎらついた眼だとか、のぞく真っ白な犬歯だとか、
やんなるくれぇに器用な舌だとか。
足も肩もまっさらな背中も、ばっさりいってる胸も、実は小振りで撫で甲斐のあるアタマだとか。
白状すると、ぜんぶが。
「すきなんだよ、」
頬、なんか熱ィ。濡れて流れてく。
あー…涙腺、ぶっ壊れた。
頬を指が拭っていった。
「ぞろぉ、」
「ん、確信した」
静かで、真摯な声。緩みきった頭でもわかンよ……?
「オマエを信じるよ、」
「ゾ、ろォ…」
ため息めいて、名前を綴って。
おれンなかの何かも、ぶっ壊れたみてぇ。あっつい、溢れて。
おまえにだけ、向かってってる、いま。鼓動、背中に感じて。
腕に縋った。
「き、もち…ぃ、」
ぐう、とアシに力入れて、筋肉ばかみてえにふにゃふにゃだけど。身体を押し上げた。
「ん…ぁ、」
熱いばかりの息が零れてく。
ふぅ、と。ゾロが息を吐いていた。
また少し身体を持ち上げて。奥まで含みなおした。なかを刺激されて、きくり、と身体が跳ねかけた。
あわされた眼、ミドリが。ちらりと底に光掠めさせて。薄暗いなか、なぜだか見えた。
「キスしながら、したい、」
とん、と。まっすぐに心臓に落ちてくる。直に掴み上げられたみてぇに。
くう、と喉がなった。おれの。
やけに重たい腕、また持ち上げて。差し上げて。肩に預けるみたいにして引き伸ばした腕、捕まえて、
髪を言うこときかない指に絡ませて。
身体を委ねる。
見つめれば、唇が寄せられて。
口付けられて、あわせただけの唇が軽く触れて口付けを解かれる。
ゾロ、と。
呼びかける。
じわ、と。締め出していた快楽が背骨を突き上げかけて。
半分嗚咽交じりだった。
薄まらずに、どんどん深くなる。
消えずに、快楽に震えて吐き出してもまたすぐに身体を埋めてく。
聴いた覚えのない声、それが何かの容を取りかけてひやり、と身体の奥が震えかけたときに。
「正面がイイ、」
あまったれた口調が、なかに入ってきて冷えた何かを押しやっていった。
ゆっくりと瞬き、したんだろう。
また勝手に、頬が濡れたみたいだった。
ぎゅう、と両腕で抱きしめられて。
埋められたままの容、感じて。肌が震えた。
「顔見てしたい、」
「――――ぞ、おろ」
ばーか、おまえ……
「オマエの目ぇ見てしたい、」
「な…で、訊く?」
なぁ?いったじゃねぇかよ、おれ。
「忘れ―――ンな、よ。ばぁ、か」
「オレ、イジワルしてたから」
くう、となかが熱に絡みついてンのがわかって、また喘いだ。
「おまえの、すきにしてい、―――ていったの、お、れだよ…?」
ばーか、ぞぉろ、……すげ、おまえ。
かわいーじゃ、ね…?
うー。くそう、サンジ。もしかしてオマエ、わざとやってっか?…ンな余裕ねーか。くそう。
「イチイチ確認してェもん、甘えてンだよ、なーサンジぃ」
ゆらゆらと潤んだ目が斜めに見てきて、首に擦りつく。
「好き勝手にしてるンだったら左手相手で充分だし、オレはオマエとセックスしてーの、」
「だ、から、」
あーそんな事実にいまさら気付くなんて、そうとう終わってたとしか思えねー。
「すきなよ、に。―――おれ、んこと。溺れさせ、て」
熱い息を零して、サンジが言ってきていた。
小さく頬を擦りつける。
「“いい?”って訊いたら、“いいよ”って言ってもらいてーの、そんだけ。甘えてンだよ、」
あーなんか。自覚と共にポンッて毒気が抜けた。
どっか固くなってた部分ってのが、あっという間に氷解して。
ガキ?ふン、所詮ガキだよオレは。
自覚と共に、この際甘え倒すことにした。
「"いいよ”って言えよー、サンジー」
軽く腰を揺らして催促する。
「はァ、あっ」
うー、あっつい吐息も嬉しいけどな?って相当甘えてンのなオレ。まーいっか。
くう、と腕に指が食い込んできた。
どうせなら、それ、背中がイイ。
「サァンジ?」
「“やだ、”」
「けーち」
にぃいい、と壮絶な笑みを見せたサンジの肩に噛み付いて。ぐ、ぐ、と腰を揺らす。
「あ!ゥ、あッ…」
うん、本気じゃねーの、解ってるけどな?
「サンジのばーか。けーち」
拗ねたフリをして、腰を揺らす。
ついでに、きゅう、とサンジの昂ぶりきっているモノを強く握る。
「は、ぁン、んァっ」
意地っ張りなサンジが、甘い声で鳴いていた。
「あぁ!」
「いーけど。それでも好きだからナ。」
あぐあぐ、と肩口を噛みながら、首を仰け反らせたサンジに視線を遣る。
汗に湿った髪が額や頬に張り付いていた。
少し鈍い金色。
ぺろり、とサンジが舌なめずりをしていた。
誘ってるのか、煽っているのか、無意識なのか。
ぐり、と濡れそぼった先端を親指で割り、撫で付ける。
「あぅッ…ア、あ、」
「サァンジ、言えよー」
ぐりぐりぐり、と先端を弄くる。
うん、これはこれで楽しいけどサ。
ついでに乳首も摘んじまえ。
きゅう、とサンジの脚が爪先まで強張っているのが見えた。
今までにないくらいに昂ぶりきったモノを、粘膜が包み込んで。
それからサンジが、くう、とまた少し腰を浮かせていた。
いいよ、って言うまで動いてやンねーぞ、オラ。
指先でサンジの昂ぶりの先端を割る。
くう、と盛り上がった雫が、とろ、と零れる様を見届ける。
びくん、とサンジが震え。浮いた間に手を差し込み、する、と昂ぶりを指先で触れてきた。
無理していると解る体勢。
「い…からぁ、」
「それじゃヤダ。“いいよ”、って言えよ、サンジ」
耳朶を吸い上げて、ゴネる。
きゅ、きゅ、とサンジのものを絞り上げる。
「ああン、」
「却下」
くう、と乳首を優しく撫で擦る。
「ぞ、ろぉ…、い―――よ、い…っ」
トスン、と腰が落ちてきて。キュウっと凄い力で締め付けられた。
「や、りぃ」
がぷ、とサンジの首を噛んでから、ぐい、と身体を持ち上げさせた。
「あ、ァあッ」
トン、とリネンに身体を着けさせ、上がった悲鳴を無視して、くるんと仰向けにさせる。
両足、折らせて。
「あ、――――ン!」
腰の下に、方膝を差し込んで。
手を伸ばす先には、鈍く光る金の液体が入ったボトル。
くく、と音をさせてスクリュウ・トップを回すと、サンジがリネンを握り締めていた。
一度ボトルを置いてから、サンジの両手を無理矢理リネンから引き剥がし、両膝に置かせる。
「あ!」
顎が上がっていたサンジに、言い放つ。
「抑えてろ。動いたら苛める」
「え……、あ」
「宣言するだけすげェなオレ」
笑ってボトルを拾い上げ、すっかり開いて暗い奥まで覗かせている場所に当てる。
「な…ぁ、アー――、やぁ、」
「動くなって、ほら」
びくん、と跳ね上がっていたのを無視して、こぽんこぽん、と注ぎ込む。
「ア、アア、アッ、」
呑ませるモンじゃねーんだろうけど。
まー大丈夫だろ。
どうせ掻き出すし、溢れ出るし。
「美味い?」
腰が捩れ、脚が暴れてリネンを掻き回していくのを、見詰める。
ひくひくと収縮している場所に、溢れるまで注ぎ込んでからほぼ空っぽのボトルに蓋をして、奥に放り投げる。
腰を持ち上げ、できるだけ上向かせながら膝を下から抜き出し。
「―――ゃ、ぁ…み―――な」
「やーらしくてカワイイ、ここ」
先端で突付いて、膝に齧り付く。
「ぁああっ、」
「な、欲しい?」
バレバレだけどな。
腰を高く上げさせたまま、脚に齧り付く。
「ひ、………ぁ!」
「それじゃ応えになってねーよ、サンジ?」
ぐう、と背中を撓ませたサンジに囁く。
「なァ、ホシイ?」
どうにか、といった風に見開かれた蒼が、ゆらゆらと揺れていた。
こくこく、とガキみてェに頷いていた。
「…ぉろ、」
にぃ、と笑って、ジェスチャ不可、と言い放ってみる。
「苛める、って言ったろ?オラ、サンジ。答えは?」
「は、ぁ…っ」
酷く熱そうな息を短く零していた。
「……て、」
ツクツク、と先端で軽く突付く。
「もっかいおっきな声でナ」
消えそうな声、バッチリ聴こえたけど。
つうか、一体なんのプレイだこれは?楽しいけどさ。
てか、サンジとだから楽しいわけであって…他人だったら大金積まれても嫌だけどさ。
「イイダロ、オレしか聴いてねェし、思いっきり言っちまえよ」
じゃねーと、もっと恥ずかしがるようなこと言わせっぞ、サンジ。
「…めて、溶…かして。―――い、れて…」
ぐらぐらに沸いてそうな甘い声。
違うってだからサンジ。
きゅう、と泣きそうに潤んだ目を合わせる。
「違う。サンジ、“ホシイ”?」
くぷくぷ、と軽く先端を潜らせる。
はたん、と音がしそうに瞬いた拍子に。盛り上がっていた涙が、一粒、ぽろっと転がっていってた。
「泣いてもダメ。オラ、サンジ。“ホシイ”?」
「ほし…?」
「そう、“ほしい”?」
素直になれよ。回答はそう多く無ェだろ、コラ。
くうう、と目を細めて。
「ん、ぅ」
嗚咽じみた声を抑えていた。
「それ、“ほしい”のか?それとも“欲しくない”のか?」
くぷくぷ、とさらに入り口を擦って囁く。
「あ、」
する、と当てていたものを遠ざける。
「サンジの気持ちが知りたい。どっち?」
サンジがイッショウケンメイ、といった具合に腕を伸ばしてきていた。
上体を倒して、額を当てる。
触れて。
「ゾロ、」
酷く安心した声で、サンジが言った。
「そう。オレ。サンジが欲しくてうずうずしてるバカ一名」
かぷん、と唇を食んで、吐息で囁く。
サンジがぐう、と掌を押し当ててき。
「―――ほ、しぃ。」
深い、深いところから声を押し出すようにしていた。
ぶる、と一瞬震えていた身体。する、と鼻先を擦り当てて。
少しずつ緊張が解けていくサンジの身体を感じながら、もう一度唇を食んだ。
「ぞろ、」
「サァンジ。オレも欲しい。オマエをまるごとぜぇんぶ」
かぷん、ともう一度唇を食む。
「ふ、ぁ」
そのまま、抱え上げたままのサンジの腰に、ゆっくりと押し当て。
こぷ、と溢れ出ていく液体の音を聞きながら、押し込んでいく。
「ぁ、あぁ、―――ん…っ」
くうう、とサンジがリネンを握っていた。
眩暈がする。
唇、押し当てたまま、最奥まで休むことなく埋めて。
「うあ、あ……」
「好きだよ、サンジ」
ぐい、と身体を引き上げた。
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