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 吐息だけが信じられないくらい熱くて。薄く唇を開いて。
 どうしても言いたいことがある。
 どこにも隙間が無いくらい、空気の変わりに日差しで温まった浅瀬に頭の先まで浸ったちまったみたいに。
 身体中の細胞がぜんぶ、その同じモノで満たされて溶けてて。
 ひどく深いところから鼓動が伝わって。
 
 腕をまわして押しとめた、じゃないと。その音にあわせて自分の身体が容を無くしそうで。
 ああ、だけど。無くなってもいいか?きっと、まだ「在る」ことをおまえを通してちゃんと、わかるだろうし。
 
 頬を押しあてた。
 上がってた息が少し収まって。
 それでもまだカラダも戻ってこない、中からの熱に震えっぱなし、だ。
 
 ゾロ、と頼りねぇ声。
 ずっと抱きしめられてても。すい、と腕に抱えなおされて。汗に、含まされたモノに濡れて下手したら滑っちまう身体を引き寄せられて。
 甘ったれた喘ぎが喉から押し出されてった。
 
 「なんだ?」
 とんでもなく柔らかい声。
 「ゾロ、」
 肩口に縋るみたいにして、半分埋めていた顔を上げる。
 感情がそのまんま、隠されずに映しこまれた目線をどうにか捕まえて。
 まっすぐに「いま」をよろこんでるんだ、ってわかる。
 
 そのまま覗き込むようにされて、知らない間にわらいかけてた。
 おれな、あのな―――
 「すきだ、ゾロ」
 きこえたかなぁ、すげ、声でねぇや。
 
 目、あわせたままで。
 言葉が零れてった後を追って。
 きっと、おれに話してくれてたバカなコドモ時分にでも似合いそうな。
 そんな笑みが返されて。
 
 「泣きたく」なった。こんなにおまえだけでいっぱいになってンのに。
 まだ埋められたままのオマエに背骨、押し上げられて身体溶けてんのに。
 おまえのことを、「ほしい」んだ、おれ。
 だから、言いたくなかったのに。
 受け止められて、抱きしめられて。深くまで濡らされて貫かれて。
 それでもまだ。
 
 
 
 サンジが、泣きそうなコドモみたいな顔していた。
 何かを求めているのに、言い出せなくて迷っているような。
 縋る腕が伝えてくる。
 溶けた身体が訴えてくる。
 潤んだ蒼が、ひたりと合わされて――――
 
 「…まだほしい?」
 鼻先を擦り合わせる。
 「まだオレがほしい、サンジ?」
 火照った唇が、薄く開いていた。
 柔らかく、一度啄む。
 離して、目を覗きこんで、待つ。
 ぞくり、とサンジが身体の奥深くから震えていた。
 
 「いいよ、やるよ、いくらでも」
 コトバじゃなくても、理解する。
 仕種、態度、目線、体温、いまなら信じられる。
 「オレもいっぱいほしいしな、」
 
 見詰めた蒼の底、ゆらりと揺らいでいた。
 求めている目線、熱病に浮かされたような視線。
 シーヴァのせい、だとわかっていても。
 これだけの“想い”の深さが、サンジの中にあるのを見つけられたのは、
 自分が自分であったからだと――――信じる。
 過去に何があっても。
 未来に何があろうとも。
 
 「餓えてる?」
 サンジの腰を支え、身体の位置を変える。
 奥深くまで貫いたまま、ゆっくりとサンジの身体をリネンに降ろしていく。
 「オマエ、“オナカスイテル”?」
 サンジがくう、と喉を鳴らしていた。
 サイドランプからの光を直に弾いて、潤んだ瞳が煌いていた。
 「オレな、優しくないから。オレが選んだヤツにしか、喰わせねーんだ、」
 「ゾぉ、ろ…っ」
 「オマエにだから、いくらでもやるよ、サンジ」
 
 リネンに着いて、腕を引き抜いて。
 そのままサンジの顔の横に両腕を着く。
 サンジの脚は抱き上げていたときのまま、背中に回ったままだ。
 
 「いっつのまに、こんなに――――深くなってたンだろうな」
 張り付いたサンジの髪を掻き上げる。
 する、と鼻先を擦り合わせたまま笑う。
 サンジが小さく喘いで、くう、と内で締め付けてきた。
 「ほしィ、もっと」
 囁き声が届く。
 
 嬉しいね、言えるじゃねーの、オマエ。
 「やるよ、」
 上がったままの脚を片方、担ぎ上げて。
 緩く引き抜けるスレスレまで浮かせる。
 快楽が、一瞬で全身を浸らせていた幸福感を飢餓に変えていく。
 
 サンジがぐぅ、と背中を弓なりに反らせていた。
 「ぁああ、」
 「オマエ、キレーな」
 きゅうきゅうと、引き止めるように引き攣れる内に、深い息を吐く。
 目を瞬いて、ふ、と息をして。
 一気に奥まで貫いた。
 濡れた音と共に、零れた熱いオイルに濡れる。
 
 「キモチイイな」
 「アッ、ああッ…」
 無意識に近い状態で、サンジに肩を掴まれた。
 「裂いても、いいよ、サンジ」
 ゆっくりと先ほどと同じ様に身体を浮かせる。
 ずりゅ、と音がするくらいに引き止められる内を無理矢理動く。
 サンジが首を振っていた。
 「…いいよ、別に。塞がるまで付き合ってくれるなら」
 
 は、と息を吐いて、眩暈を堪えて一気に押し込む。
 快楽、だけじゃない、いま浸っているのは。
 尽きることのない、餓えと。
 同じだけに、満たしたいという想いが。
 綯い交ぜになる、表裏一体、コインの裏と表、どちらをとっても必ずもうひとつも手の内にあるもの。
 
 口付けを一つ落として、上体を引き上げた。
 サンジの腰を抱え上げて、正座する。
 「…っア、ン、んぁッ」
 サンジの両踵を手で抑えて足を上げさせ、前傾姿勢で、サンジの腰を支える。
 
 餓えが、絶え難くなる。
 笑う、尽きることのないその想いに。
 「あ、ぞ、ろ…ッ」
 突き当たる場所が変わって、サンジが震えた。
 「……すっげえ、イイな、サンジ」
 踵で脚を高く上げさせたまま、ゆっくりと腰を突き入れ始める。
 今度は僅かに引き出して、奥深くまで突き入れる。
 
 びくんと強張る足を支えて、そのままスピードを上げていく。
 小刻みにシェイクする。
 ハ、すげえな。
 キモチイイ。
 
 「―――いッ、ぁ、あァ、ンッ」
 サンジがギリギリとリネンを手で握りこんでいた。
 ポイント、抉るように早いスピードで打ち込む。
 内を締め付けてくるサンジの粘膜が追い切れずに、何度も窄まったままで突く。
 
 「あ、あ!」
 強い刺激に、サンジが涙を零していた。
 「もっと気持ちよくなりたいなら、自分で握って?」
 びく、と濡れっぱなしの昂ぶりに伸びかけていた腕がきくっと跳ねていた。
 「もっと気持ちよくなってるとこ、オレに見せて」
 早いリズムを休めることなく、吐息に混ぜて告げる。
 
 濡れた蒼が、熱を含んでいた。
 「もっと、蕩けろよ、サンジ。すげえイイから」
 餓えていると自分でも解る声で囁く。
 ぐう、とサンジの体重が掌に乗り、サンジが腰を捩るように動いた。
 
 押し当てられる、昂ぶり。
 掌、それを握って。
 とろ、とサンジの指の間を、透明に近い蜜が零れていった。
 刺激に、ぐう、と内が締め付けてきて、ウメイタ。
 「す…げ、イイよ、サンジ」
 
 踵を掴んでる手を、サンジが無理矢理手を伸ばして触ってきた。
 片方の踵を下ろして、足を腕にかけさせて。その手を握る。
 きついのか、眉根を寄せていた。
 「何度でも、イけよ、サンジ」
 ハ、と息を吐いて告げる。
 
 とろ、と視線を絡ませて、サンジが目を細めていた。
 休めることなく浅くグラインドさせていた腰のリズムを早める。
 もう片方の踵も下ろして、腰を抱き寄せた。
 「オレ、もーイキソーかも、」
 
 
 
 ぬるついた昂ぶり、握り込んで指に挟んで。走った刺激に堪らずに締め付けた。
 すげえ力で押さえ込まれてた足先が放されて。息を上げる余裕も無くて、手を握りこまれて突き入れられるリズムに
 泣いた。
 
 浮かされた腰を抱き上げられて。
 中を掻き混ぜられて、突き上げられて。
 何度も身体が跳ね上がる、その場所を抉られるみたいに引き摺られて。
 波、打ち込まれるのに中を埋め尽くす熱が、また粘膜をもっと押し開いてく。
 締め付けて、先から開かされて捻じ込まれて。
 
 きもちがイイ、と泣いていた。鳴いて、焦がれて。
 腹あたりに、散った熱さがもう自分のでもどうでも良くて。
 「ぁう、―――ッア、ゾロっ」
 びく、と痙攣する。
 熱を零しても、中は小刻みに揺すられて。
 また、快楽に押し上げられる。
 「ひ、ァッ」
 
 握り込まれた手、伝わる強さと流れ込んでくる熱とを感じて。
 ぐう、と背がリネンから浮くかと思う。
 浮きっぱなしなのに、肩から下。
 重い身体に圧し掛かられて、身体中で歓喜してる。
 腰だけが浮き上がって。ゾロの胸の下、押さえ込まれて握られたままの手に引き摺られて腕がリネンに押し付けられる。
 
 音、耳が否応なく聞かされて。繋がった場所、まだ熟れ零れるもので濡れて―――すげぇ。
 自分が揺れているんだか、半分だけ押し付けられたベッドなんだか、部屋なんだか、眩暈がする。
 「あぅ、ア、あ…!」
 
 足を絡ませてる。
 濡れて滑る。
 肌が打ち付けられる音、肉の擦れる響き。
 「ぞ、…ぉろ、ソコ、も―――っ」
 うわ言。
 沸騰して、血が血管をざらざらこすりあげていって。
 「ソコ、なに、」
 低い、おなじくらい乾いて余裕のみえなくなった声。荒い息で唸るように返されて。
 足先から一瞬、光が抜けてった。
 
 「んッ、イィッ、あ、も…っと、」
 喰って、喰わせて。もっ―――
 ぐん、と何度も押し込まれて。熱い塊のままに食い込むモノに鳴いた。
 一層圧し掛かられて。また身体の間に熱。吐き出して。
 歯を食いしばった間から漏れるような唸る声に目を閉じた。
 
 身体の奥、熱すぎるモノが拡がっていく。中で、何度もソレが跳ねて。弛緩しきれない身体が締め付けて。
 熱が広がりきる前にまた別の熱さに何度も。声を上げてた。
 「あ、アっ」
 
 
 
 
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