熱くなっていくばかりの身体と、きっと流れてる血だって温度をあげてるに違いない息苦しさと。
揺れるばっかりの視界と、うるさいばかりの聞こえてくる自分の鼓動と。
溜め込まれて逃げ場をなくして積もるだけになってる快楽、そんななかに放り込まれる、んじゃなくて。
グレイズ、まるっきり、ソレ。指先からじんわりとただ快楽だけが待ってる、そんな場所に浸けられるみたいに。
身体を支える線が一本通っていて、それを口の中で溶かされちまうみたいだ、と。

くにゃ、と歪みかける視界に自分を残そうとして、でも。
髪に縋っても、肩に縋っても浮かぶことなんて出来るはずもなくて。
手を放しちまったら、底が見えない場所に沈みそうで。
何かを強請った。
けど、ゾロは。
耳にしただけで神経が先を「知って」ひりつく、そんな声を落として。聞いてきた。
『キモチイイ？』

ぽたり、と火の粉が落とされるくらい熱いのに、やさしいのはひでぇ。
知ってる、おれが掴まってるモノからきっと。
指がいっぽんいっぽん、ぜんぶ。快楽を道連れにして剥がされちまうんだろうって。どこかで怯えて、それでも。
それでもいい、って言った。

だから、閉じそうになる目をむりにでも開けて。
おれは、だって。じっさい、もう―――
「―――ぃ、…か、らぁ」
上がるばっかりの熱に喉がつまる。

「オレも、」
返された言葉を頭で確かめるより先に。
上げていた腕の根元に、予期してなかった濡れた熱が這わされて。身体が強張った。
「ンあッ…！」
強張りが溶けずにいても、立ち上がりきってる胸元のソレが指全部を感じさせられて転がすみたいに弄られてて。

足の間、自分が熱くなってるのが泣きそうに伝わる。
「―――ァ、ッあ」
腕の付け根、きつく吸い上げられて。
とろり、と零れてったのがわかった。

肩にまたやわらかな感触。触れられて、思わず背中で擦り上がった。
捕まえられた腕を唇が辿ってく。
―――あ、つ……。

「ぁあ、ア、や……っ」
ぐら、と。閉じていても視界が歪む。
吐息、あつい。おまえの名前呼ぶせいだ、ゾロ、あつい、やだ、うわごとめいて言ってる声が遠かった。
「“もっと”だ。サンジ、」
あまい、やさしい声が。
ゾロが、諭すみたいに囁くのが。
肌を吸い上げられる音と混ざって聞こえて。

「―――ぞ、ぉろっ、……んゥ、」
指先まで腕を唇で辿られる、気が遠くなりそうに一秒一秒が引き伸ばされて。
ぴり、と尖った快意を求めて声があがっても、じんわりと煽られて。
「ぁあ、あ、……ア、」
１を貰うのに、１００の口付け、そんな快楽だけを与えられ続けて。
甘ったるい声だけがせり上がっていって。

「いーい声だ、」
歌うように呟かれて、リネンに頭を押し付けた。
吐息を手に感じて、あぁ、解放される、そう思った瞬間、音をたてて指先を吸い上げられて。
「んあっ！」
腕全部が強張った。
指先が含まれて舌が絡み付けられて。
上下するばかりの胸元を撫でられて、鳴き声をあげた。
「美味い、」
「―――あ、っつ、」
ゾロ、ゾロ、たすけ―――、オレ、指ダメだ、って。



サンジの指。
旨い料理を作り出すソレ。
それを喰うのは、けっこう好きだ。
ただし、サンジがあまり喰わせてはくれない。

指の一本一本に舌を絡め、エナメルをなぞり、くう、と吸い上げると。
「あっ、ァ……ッ」
酷く甘い声を上げて、腕を強張らせていた。
指をぴくんと跳ね上げさせて。

指で弄くっていた小さな飾りと、指と。どちらがより強い快楽をもたらすのだろう？
ふい、と浮かんだ疑問、即座に行動に移す。
小さな粒をきゅう、と摘み上げてみる。
「あ！あ、ぅッ」
くう、と唇を噛み締めていた。
きゅう、と指先を3本ほど纏めて吸い上げると。
「う、あ、アァッ…」
声を上げていた。

ふぅん？
首を左右に振って…ああ、リネンが涼やかな音を立てている。
笑って口を手から離す。
「サァンジ、」
チガウだろ、イヤ、じゃねーだろ？
「は、ぁー――」
喉がひくりとしていた。

掌を、胸から脇へとずらし、脇腹をさらさらと撫でる。
「ん、―――く、」
すい、と引き上げたサンジの濡れた手の甲に口付けを落とす。
サンジの口から息が零れ落ちる。
「……ッ、ぁ」
「サンジ、」
名前を呼んで、もう一度、今度は指先に唇を押し当てる。
サンジが深く息を呑みこみ、ゆらりと蒼を覗かせていた。
笑いかけると、サンジがじぃっと見詰めてきて。
濡れた指でゆっくりと唇を辿ってきた。
「ゾ、ろ…、」
甘く掠れた声を聴きながら、そうっと身体を浮かせて、腹に一つ口付けを落としてから、脇腹へと唇をずらしていく。

くう、と吸い上げてから、サンジの片足を片腕に抱え込んだ。
そのまま掌で、サンジの足の表面をそうっと辿り始める。
「ぞ、ろ…っ、ぁ、」
目を閉じたサンジの脇腹から腰へと舌を這わせる。
手はそのまま、きれいなカーヴに沿って脚を辿り降りる。
「―――っふ、ぅ、」

サンジの抱えた足の爪先が、くう、とカールし。
反対側が、くう、とリネンを引き摺っていった。
手がリネンを引き絞っていくのを横目に、腰骨を吸い上げる。
「美味い、」
「お、まえ―――だけ…っ」
何処か必死で、けれど酷く小さなサンジの声。抑えられて揺れていた。
「ン。オレだけ、な」

美味い、と言ったのがオレだけなのか。
サンジを喰えるのが、オレだけなのか。
どちらの意味かわからなかったが、要はサンジにとってオレが特別である、ってことだよな。

ふぃ、と笑みが勝手に零れた。
その息にさえ感じたのか、サンジの身体がまたふるっと震えていた。
「ん、っく、――――ぁ」
抱え上げた脚の裏を、掌でゆっくりと辿る。
「サンジ、」
湧き上がる愛しさを込めて名を呼ぶ。

「あ、んン…っ」
甘いばかりのサンジの声が耳に届く。
ぞ、ろぉっ、と涙声になりかかってる声が、素直に嬉しい。
する、と身体を動かして、淡い金の草むらの横を舌で辿り落ちる。
そしてまだリネンに預けていた反対側の脚も抱え上げた。
「―――ぁ、っ」

揺れない様に腕で押さえ、脚の付け根を強く吸い上げる。
「あ、ああ…ッ」
サンジの腰が目の前で捩れていった。
肩まで強張っているのか、さらにリネンが引き絞られる。
「いーい声。もっと、な？」
もっとオレに聴かせろよな。

つう、とサンジの固く立ち上がったものを、零れた蜜が辿り落ちるのが見えた。
美味そうなソレにはわざと触れずに。湧き上がる笑みを零してから、唇で抱え上げたサンジの脚を辿り始める。
ゆっくりと、時間をかけて。
時折吸い上げながら。



「―――あ、―――ゾ、ッろ…っ」
ゆっくりと唇で辿られて。抱え込まれたままのアシが跳ねかけた。
妙にはっきりと零れたモノが伝っていく感覚がゆれっぱなしの脳に運ばれて。
喘いだ。
伝い降りる唇を神経が追いかけて、触れた。ぱし、と何かが弾ける。身体のどこか。
「サンジ、」

抱え上げられたままの膝裏を舌先がぺろり、と舐めていった。
抜け出そうと、身体が勝手に強張りかける。
「――――っ」
息が途中で詰まって。
「美味い、」
声、聞いて。
ちが……、聞かされて。
ほんとうに、美味い、と思ってるって知らされて。
押し上げられっぱなしの感覚が逃げ場を探して、また体温が上がる。
「んぁ、―――ァ、」

背中が浮いていった。
掌の熱、熱いのにさらりとなじんでいくそれにアシを折られて。
「まぁだ我慢できっか？」
浮かび上がった膝の容を舌が舐めとって。
薄い唇から長く伸びた赤が、押し当てられていくのを見て。

見てたら、眩暈がするかと思った、目を開けていられなくなる。
「あ、ぁあッ」
抑えられたままの側のアシも自由になんざ、ならなくて。膝の裏側、指先に押し撫でられ続けて。
喉奥から熱いばかりの息を押し出して。

「う、ぁ」
腕で目元を覆った。
「まだ頑張るか、」
笑い声交じり、と耳が捕らえるより先に、熱い息がアシを掠めていき、また、熱が高まる。
舌先が膝から降りていくのを追って、足先まで強張る。
「は、―――ぁう、んん」

細かく跳ね上がる下肢と無関係に声は先を強請って。
アシを掴まれている力がくううっと強められていくのをため息を零して追う。
ぜったい、だれにも触れられたくねぇ箇所、腱の辺りに唇が遊んで。
息を呑んだ。
吸い上げられて。鳴いて。

「んぁう……っ」
アシ先から背骨を辿って首の後ろまで痺れが抜けていく。
血の中に、炭酸の気泡が混ざって絶え間なく弾けてるかと。
けど、それは。
「サンジ、」
宥めるように、低い、あまい声。泣けそうなくらい滅多に呼ばれない口調で名前を綴られたなら。
収まるどころか、沸き立つ。

くう、と引き上げられる感覚がどこか遠くから届いて。
ぱしり、とまた意識が跳ね上がる。
――――な、…に？
ふ、と熱い息を感じて。
知覚する前に。
か、かと……？なん―――

濡れた熱さを直に覚えさせられて。
「アぁッ…あ！」
遊びじゃなくて、アシが跳ね上がった。
「サンジ、」
感情そのままに呼ばれる。お、まえ…楽しいの？

「―――っは、う、」
ぎゅうう、と。腰奥が重くなって。
なんとかしてぇ、けど。
意識の外で跳ねかけるのを押さえつけられて足裏のカーブ、吸い上げるみたいにされて。

腕を目の上に押し付けた。
「美味いな、サンジ」
や、――――も。呼ぶ…、な。
とまらな―――
「―――アぁんっ、」

とんでもねぇ、と。ぐらぐらの意識のどっかで。
飛び出してった嬌声。
全身が震える。
熱い中に、つま先を含まれて。
また、鳴いた。




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