Kitty cat, do you wanna eat a delicious treat?
ゾロの目が、間近で煌いた。
どこか、気分を変えるような、そんな口調で綴られたコトバ。
考える間も無く、返事が舌先から零れ出る。
「Yes, I do」
アナタがくれるゴチソウなら、オレはなんだって食べるよ。

くすくすと。漏れる笑いのままに答えたら。
ふい、と抱き上げられて、ベッドルームに連れて行かれた。
ストン、とマットレスの上に置かれ、座り込んで。まわしたままの腕に力を入れて、ゾロに口付ける。

にゃお。早くチョーダイ?
笑って囁くと、ゾロは。
何度か唇を啄んで。く、と頭を抱えたまま、体重を寄せてきた。
マットレスに背中が着いて、ゾロを見上げていると。
「目覚まし、電源切っちまえ」
に、って笑った。
「向こうに、置いてきちゃった」
「フウン?ま、どうせ聞こえないだろ。丁度イイ」
「…ウン」

ぺろり、と唇を舐められた。
ふふ、と笑って、その舌を追いかけて、舌先で舐める。
そのままゆったりと絡ませて、ゾロの舌に僅かに残るワインの味を味わった。
ゾロが、オレの着ているシャツの中に手を滑り込ませてきた。
その掌が齎す感触にうっとりとしながら、オレはスニーカーを蹴り落とす。
ぱらぱら、と釦を外されて、曝された空気の冷たさに、小さく震える。
ゾロもくくっと笑いながら、ゴトン、と音を立てて靴を脱ぎ捨てていた。
んん、早くもっとアナタが欲しい。
ゾロのシャツのボタンに、手を掛けた。
しゃらん、と滑り落ちたタグが、涼しい音を立てた。

もっと口付けを深くしながら、シャツを完全に肌蹴させられ。するりと肩から落として、抜き去られた。
腕を伸ばし、ゾロのシャツも落とす。
「ん…」
触れ合う素肌。熱くて。
ゾロがオレを抱く腕に力を込めた。
オレはゾロの首にしがみ付いて、もっと口付けを味わう。

アナタが欲しいよ。あんなに毎晩、アナタに抱かれてるのに。
アナタにあんなに満たされてるのに、まだ、もっと、欲しいよ。
全身で告げる。
隠せない想い。隠したくない本音。
アナタが欲しい。
尽きる事のない気持ちが、溢れ出す。

ゾロの大きな掌が、ハダカの表面を滑っていく。
腕がどこかに伸ばされて、何かを取り出したのを、動作から知る。
んん、と少しくぐもった、甘い声。鼻から抜けるような音。オレの声。
もっと欲しい、はやく欲しい、と強請る。
ゾロの広い背中、掌で辿った。
さらさらとした感触、熱い体温。
くらりと眩暈がして、オレの身体は蕩け始める。
ゾロが触れていった場所から、ポツンポツンと熱くなっていき。
舌先だけが触れ合っているような口付けに変わっていく。

ふいに鼻腔に届いた、なにかのニオイ。
少し甘く、爽やかなハーヴのアロマ。
…なんだろう?まるっきり知らないニオイじゃない。
一瞬意識が、それに引き込まれている間に、デニムを引き下ろされた。
硬めの生地が滑る感触に、ふあ、と喘いだ。
うっすらと目を開けると。
ゾロは人差し指を小さなビンの入り口に当てて、軽く上下反転させていた。
中の金色っぽい液体が零れ伝って、ゾロの指を濡らしていく。

こくり、と鳴った喉に気付いたのか、視線に気付いたのか。
唇が頤に、さらりと触れてきた。
オイルっぽい何かに濡れた手指が伸ばされた。唇の間近に。
舌を伸ばして、ぺろりと舐めてみた。
ああ、これは。
「…セント・ジョーンズ・ワートと…コーンオイル、かなぁ?」
ああ、でも、それだけじゃないなあ?なんだろう?

記憶と味を照合し始める思考を止めるように。
唇に塗り拡げるみたいに、ゾロの指先がなぞっていく。
とろり、とした感触に、ぞくり、と震えた。
ゾロが手を離して。そのままその指を自分でもぺろ、と舐めた。
あまり量は残ってないみたいだったけど。

…これがシーヴァ?
舌先に残った味を、吟味する。
微かに甘く、香ばしい味。
ゾロがふ、と目許で僅かに笑って
それから、耳元にそうっと口付けをくれた。

「舐めるモノじゃないらしい」
そう言ったゾロを見上げる。
「じゃあ、それ、どうするの…?」
首元を舌が這っていって。
熱く濡れた感触にフ、と泡だった皮膚を。きゅ、と啄まれて、息を呑んだ。
もう片方の腕は、露わになっている腰を辿っていく。
「…っ」

ぽうっと熱が脳に届いて。
思考がす、と入れ替わる。
考えることを止められて、代わりに感じなさい、と脳が命令を下す。
く、と身体を軽く持ち上げられて。浮き上がっている鎖骨の窪みに、硬い歯の感触。
「…ふ」
ひくん、と身体が跳ねる中。
つら、とゾロの唇が、胸の中心まで降りてくる。

ゾロの背中をさらりと撫でる。
片手は腰を辿るのを止めて。変わりにオレの脚を持ち上げて、開かせて。
「味見の気分は?」
するする、と肌を撫で上げていく。
「ワカンナイ…けど、ワルイモノじゃ、ない…」
肌を何箇所も吸い上げられながら告げられたコトバに答えを返す。
特に返事を待ってたわけじゃないみたいだったけど。

は、あ、と熱く潤み始めた息を吐いた。
サイドランプに照らされたウッドの壁が、一瞬ぐらりと揺れた。
く、と膝が掴まれて、引き上げられるのを感じる。
これから貰える快楽に、勝手に身体が震える。
「…ゾ、ロ…」
肌の表面を、ゾロの舌先がまるで愉しんでいるみたいにゆっくりと、滑り落ちていく。
「ふ…ッ」

く、とゾロの背中を辿る指に、力を入れた。
モット、キモチヨクシテ。
言葉が吐息となって零れていく。
く、と時折、ゾロの牙が肌の表面をなぞっていく。
細かに震えるオレの指の感触に、小さく、くく、と喉奥で笑っていた。

緩く快楽を求めて立ち上がっているオレの昂ぶりに、ゾロの指が触れた。
また濡らされていた指先、撫でるように添えられて。
「ふ、ぁ…」
ひくん、と腰が跳ねた。
快楽が、助走を始める。
ゾロの手指はそのまま、つる、と滑り。吐息が後を追っていったのを、目覚めた皮膚が感じ取る。
ひく、と腰が勝手に揺れる。
体温が、フツ、と上昇したのを感じた。




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