鼓動を、取り込めるほど近くに感じた。
緩やかに熱を帯びていく肌と、閉ざされる時間がわずかずつ長くなる瞳と。
掌に零れる吐息。
予想していたよりも、さらり、と金色の液体が指の間を流れ。
触れている、腕に抱いているサンジの。全身の神経が自分にだけ向けられていることも同時に感じられた。
ふわり、と微かに芳香が漂う。重すぎず、甘すぎないソレ。
先に舌先に乗せたときには、特に際立つほどの何物も感じられなかった。
わざとらしい甘さも、刺激も何も。
肌に唇で触れて、ふ、と意識の別の場所が「そりゃぁ、連中の作る物だからな」と静かに納得する。
また別の場所で、いま自分の背を辿る手、尽きることがないかと思えるほどの微かな餓えを引き出すのを自覚する。
「…んん、ぞ、ろ…」
とろり、とその輪郭をあまく無くした声に、ざわりと感覚が波立つ。
リネンの微かに捩れる音が耳に届く。
濡れた手指を緩く昂ぶり始めた容に添わせ、体温と同じほどになった香油をさらりと馴染ませるように撫でつける。
「んん…ッ」
先を強請るように添えられていた指先が、く、と背に潜り込むのを感じ。軽く肌を啄ばみ、薄い痕を散らしていった。
甘くなっていく吐息につられ、鼓動が上がった。
取り込む空気さえも、体温と同化していくほどの吐息に薄く笑って。く、と一層塗りこめるように愛撫する。
「キモチ…イイよぉ…」
胸元、舌で唇で味わい。
すこし舌足らずな発音に、イトオシさ、としか言い様の無い感情が揺れる。
じわり、と濡れ零れ指を伝っていく熱と。
腕の中でふわりとまた温度を上げる身体と、何よりもオマエを形作るすべてを喰っちまえたならどんなに良いだろうと。
引き寄せた膝横、きつく口付け思う。
「あ、ァ…」
ひくり、と手の中のものが脈動を伝える。
とろん、と。蒼が滴り落ちるかと思うほど蕩けた眼差しが向けられた。
受けとめながら、じわり、と唇を引き降ろして食んだ。
「は…あ、ン…っ」
手指での愛撫は続けながら。僅かずつ降ろし、ときおり薄く噛み。
笑み、嬉しそうなそれを浮かべて。サンジがじっとみていた。
「美味い、」
ぺろりと舌を長く伸ばし、足奥までしなやかな線を辿る。
「…ふあ…あぅ、」
浮き出た腱を唇で挟み、その容も舌を押し当てて辿る。
手は濡れた音を零し。
喉が、吐息を洩らし喘ぐ度に、ゆら、と瞳が揺れていた。
目線、下腹部に投げて。おれをまだ見ているのか。
開いた指の間に舌先で触れ、唇で触れながら声にした。
なんだよ、と。
わざと音を漏らして、舐め上げた。
アナタに食べられて、ウレシイ。
弾む息に乗せて言っていた。
そうして、とろりと笑みを刷いたまま瞳をゆっくりと閉ざしていた。
つるりと先を唇で愛撫する。
慣れてしまった動作で香油を片手で掌に零し指先へと流し。
ぴくん、と背中が反らされた。
その線を、渇いた掌でなぞる。背骨。そして薄く浮き上がる筋を味わう。
甘い嬌声が漏れ。
背に置かれていた手が滑り落ちたのを感じた。
「おれだけじゃない。オマエもおれを食えよ」
唇を浮かせ、音にする。
仔ネコチャン、と付けたし。薄くわらった
「たべる…」
ふわ、とサンジが笑い。
ゆび、ちょうだい。
少し乾いた、淡く欲情を滲ませた声が音に乗せた。
悦ぶことに素直なカラダを腕に抱く。
慣れない快楽に少しずつ拓かれていき、新しいウタを紡ぎ。
存分に食っていい。オマエに遣るから。
ぱつり、とリネンに香油が伝い落ちる、雫。
「遣るよ、」
サンジの眼が。煌めいた。
それを見つめながら、最奥に触れる。つるり、とした質感に指先が滑り。
そのまま、じわりと塗り込める。
指先の触れるところ余さず。
「フ…く、…ゥん」
乾いた薄い皮フもその内と同じほど熱く潤うほどに。
拡げ、伝わる震えに飢える、オマエに。
内の熱にまた、体温が上がる。
塗り拡げる動きを味わうように、締め付けてくる潤んだ熱。
弛緩してやわらかく頬が笑みを刻み。
その頬に、触れたいと強く願った。
けれどそれは、噛み千切りたいという衝動に近い、と。知っている。
きり、と足の付け根。軽く穿ち。
「ふぁ、」
喘ぎ、それでも笑みを残したまま。
出て行こうとする手指を何度も締め付けてくるサンジに。
限度が無いほどに飢える自分を自覚する。
充たされたと思っても、すぐに餓える。
渇く。
濡らした手指で溶けるほどに熱を持つ内を拡げ、引き上げ。
渇いた舌は零れ続ける蜜を幾度でも引き出し。
上がる嬌声に、ぞくり、と。
背筋が粟立つ。
オマエを充たしてやりたい、
おれの飢えを宥めてくれ、
渇く、オマエの在ることに。
サンジ。
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