Friday, June 29
ぐっすりと、眠った。
ぱかり、と自然に目が覚めて。最初に思ったのはそれだった。
昨日、結局寝たのは何時だったんだろ?
……イッパイ、蕩けたのは…知ってるけど、…何回弾けたかなんて、覚えてない。
今身体が容作ってるのが不思議なくらい、身体中が蜜で溢れた。
それだけは、…知ってる。
バイト、し始めてからは、ゾロは…きっとセーヴしててくれたんだろう。
そういえば、…もういい加減、起きてなきゃいけない時間な気がするんだけど…。
…って、目覚まし!鳴るわけないよッ!!!
あっち置きっぱなしにしちゃったし!!!
さぁ、っと頭から血が降りていった。
「…お、きなきゃ…ッ」
う、わ。バイト、あああ、すっかり遅刻してる時間帯だよッ!!!
「起きるのか?」
「うわぁ!」
ゾ、ゾ、ゾロ?
起きてたの?
上体だけ起こして、ゾロを見る。
「心臓、すげえ勢いだぞ」
落ち着いたゾロの声。とても冷静だ。
「だって、バイト、遅刻してるッ!」
「落ち着けって」
「ちこ…え?」
ゾロがくく、って笑って。
ベッドから抜け出そうとしていた身体を引っ張られる。腕、少し冷たい手が掴んで。
「でも、落ち着いてる場合じゃないんだけど?」
あああ、せめて電話くらい入れないと…!
「ブリジットの携帯に朝デンワした」
とさん、と半分ゾロの上に乗る勢いで、引き寄せられた。
「…え?」
何時の間に?オレ、気付かなかったよ?
「ブリジットにモーニングコールをした」
「…ゾロ、番号知ってたの?」
ぱちくり、と瞬きを一つ。
もーにんぐこーる、って何時だろう?
そう思ったならば。
「愛してる、といえば、ダーリン私もよ、と言われた」
真面目なゾロの声。
「…ブリジッドに?」
「あァ」
ぱちくり、瞬きを追加。
「愛してるの?」
「女にはそういう挨拶だろう、朝は」
「…あ、そうか」
す、と笑ったゾロに、笑顔を向けた。
セトも言ってたっけ。
オンナノコへの朝の挨拶。
オハヨウ、ベイビィ、愛してるよ。今日もキレイだね、ステキだよ?
…オレは、使ったこと、無いけど。
「寝てもいない女に言うのは初めてだったが、まあいい。機嫌が良くなったところで、昨夜外で流星群を明け方まで
見ていたからオマエが風邪をひいた、と伝えて」
「…風邪?」
…あ、ゾロってば。
…オレのお休み、取ったんだ。
くす、と笑った。
「うん、それで?」
「オマエにきちんとコートを着せなかったらダメだろう、と諭された。」
「あはははははは!!!」
くたり、と身体の力を抜いて、ゾロの上に身体を伸ばす。
「あァ、きちんと抱いてはいたけどな、と期待通りの応えを言って、」
「うあ!」
…ああ、「抱く」は、「両腕で抱く」の抱く、だよね…?
「ブリジットがキスをやたらとデンワ越しに、オマエとおれに、と寄越したぜ?」
「…わあ」
に、と笑ったゾロの眼が光った。
「…バレてる?」
「さぁ?」
このゾロの顔、絶対バレてるぜ、って言ってるよね。
さらん、って言ってるけど。
する、とオレを抱き込んでいた手が滑って。
背中の窪み、触れられる感触。
「…っ」
ふる、と肌が震えて、小さく息を呑んだ。
「ぞ、ろ…?」
「だから、慌てなくて良い」
うん、そーか、それなら。
ああ、でも、びっくりしたヨ。
ほう、と息を吐いた。
「遅刻したかと思った…」
「目覚ましを切っておけ、って言ったじゃないか?」
ゆる、と窪みから手が動いて、背中を滑り落ちていった。
耳の下、キスをされる。
「ああ…もしかして」
ゾロは、昨日から…?
「ン?」
じぃ、とゾロの目を覗きこむ。
「オレをいっぱい、食べてくれるつもりだったの…?」
まだ目に光が残ってる。
どこか嬉しそうな、イタズラっぽい光が。
「カワイイ仔ネコにエサをやったら、キャットニップだったらしい」
「…ふはっ!」
キャットニップって…!!!
「いくら遊んでもまだ足りない、と鳴くから、せいぜい朝まで一緒に遊んでやったさ」
小さな白っぽい花を思い浮かべていたら。
ゾロが、なんだかトンデモナイことをさらりと言って。
きゅ、と唇に落とされる、短いキス。
くす、と笑って、ああ、そうか…朝までイッパイ、愛されたのか、と仄かに思い出していたところに。
く、とヒップに手を当てられた。
「ふは…っ」
しっかりと寝たのに。
身体がひくりと反応しだす。
…しっかりと寝たから、反応できるのかな?
すっかりゾロを受け入れることに慣れた場所が。きゅ、と疼いた。
「でも、ゾロ…?」
「―――ン?」
イヌハッカの効用は、頭痛と不眠の解消、胃腸障害の減少、解熱と、それから風邪症状の改善って言われてたと
思うんだけど…?
きゅ、とヒップに当たる指、少しだけ力が込められて。
言葉を綴りながら、ふる、と身体を震わせた。
「あぁ、シーヴァには確かに入ってないけどな、」
「…シーヴァって…」
「"高級キャットフード"。クリスタルの皿に乗って出てくる」
「だぁから、ソレは…!」
あはは、と笑って、ゾロを見下ろした。
「ねぇ、ゾロ?」
少し笑いを浮べたゾロの頬に手を添えた。
やわらかく抱きしめられて、すり、とゾロの頬に頬を寄せる。
…そういえば、昨日も同じこと、してなかったっけ…?
ふ、とゾロの耳が目に入った。
美味しそうだ、と思ったこと。
どうにもガマンできずに、口に含んでみたこと。
思い出した。
「確かに…オレは美味しく食べたよね?アナタを」
「喰ってたな、」
こくり、と喉を鳴らす。
「…そういう作用がある薬なの?」
「あァ」
さら、と答えが返ってきて、項を撫でられて。
「…ねえ、それって…まだ持続してるのかな…?」
体温が上がる。
く、と首元に、ゾロが顔を埋めた。
「相変わらず、美味そうな匂いはシテルけどな」
「…にゃあ…」
美味そうって言われるのはスキだ。
それって、もっと食べてくれるってことでしょ?
ぺろり、とゾロの耳朶を舐めた。
仄かに冷たいダイヤモンドと、プラチナ。
ツメタイっていうのが味になってて、笑った。
ゾロの熱い舌先が、そろ、と首筋を擽って。
「ふふッ」
更に笑い声を漏らす。
舌全体を使って、ゾロの耳をもう一度舐め上げる。
柔らかな産毛の感触に、ぞわ、と餓えを覚える。
ちょっぴり冷たい、ゾロの柔らかな耳の肉。
記憶の通りに美味しいなぁ。
する、とヒップで遊んでいた手が。肉を少しだけ割るように動いて。つ、と奥まで撫でていった。
敏感になった襞を柔らかく通過していったその感触に。
「ふあ…ぅンっ」
ゾクゾクゾク、と快楽が背中を駆け上る。
「声も、美味いな」
「ンン…」
かぷん、とゾロの耳朶を口に含んだ。
く、と吸われて、僅かな痛み、首筋のところに感じた。
小さな痕が、きっと残されたんだろう。
「ンん…ッ」
舌先でゾロのピアスをなぞる。
ゆる、と僅かに項を撫で上げられて。後頭部から髪に差し込まれるゾロの大きな手。
ちゅる、とゾロの耳朶を吸い込む。
くちゅくちゅ、と吸い上げるのが、なんとも楽しい。
夢中になっていたら、く、と髪を引かれた。
ちゅぽん、と音を立ててゾロの耳朶を離した。
そのままく、と顔を引き寄せられて、口付けの距離。
「リカルドにもきょうはヤスミをやったんだった」
「…ええ?」
…うわぁ…ゾロってば、何時の間に???
「リカルド、なにか言ってた…?」
「わかった、と」
「そっかぁ」
「面白い男だな、アイツも」
うわあ…きっと。リカルドは、気付いてるだろうなあ。
ゾロとオレが…こうやって一緒にいる関係だってこと。
…ふふ、なんだか。
嬉しくなるね、こうやっていることを、どんどん受け入れてもらってるみたいで。
「うん。リカルド、ステキだよねぇ」
下唇で、ゾロの唇をなぞる。
乾いた感触に、ぞくり、と熱が上がるのを感じる。
「アルトゥロと一緒に葬式に出てくれるそうだ」
「…葬式?」
…なんでまた、お葬式?
「あぁ、オレの」
「ゾロの?…出て、それでどうするの?」
軽く唇を噛まれて。
ほんの少しだけキリ、と痛んだ胸を、あやされる。
「弔辞を一緒に読むらしい。"哀れ、オオカミはネコに食い殺されました"」
「……ふ、ははっ!!」
ハハ、と笑ったゾロに、ぎゅうっと抱きついた。
それって…!
「アイシテルヨ、」
「うん、ゾロ」
茶化したように言ったゾロに、ふふ、と笑いを納めて答え。
また寄せられた唇が、甘い口付けを落としていったのを、受け止める。
I love you too, Zoro.
吐息に言葉を潜ませた。
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