Saturday, July 14,
ざあああああ、と意識の向こう側の涼やかな音で目が覚めた。
雨。まだかなり激しく降っているみたいだ。
ふわふわ、船に浮かんでいるような眠りから覚醒した。
ふ、と小さく息を吐いた。

寝る前、ゾロが歌を歌ってくれた。やさしい声で。
ぐっすりと眠った後でも。ふわふわ、幸せな気分は、まだ残ってる。
抱き込まれている、ゾロの腕の中。温かい場所。
そうっと掌を伸ばして頬に触れた。
ゆっくりとまだ眠っているゾロの頬を撫で下ろす。

ゾロ、起きてるのかな?…どうだろ?
…まだもうちょっと寝ててね…?

そうっと身体を擡げて、ゾロを見下ろす。
額に口付ける。
…そういえば、オレがこうやってゾロのパーツを見ていくのは、初めてだ。
眉毛に沿って唇を這わせた。
目尻、口付けて、そのまま頬骨を辿る。
しっかり通った鼻の筋、鼻先で触れ合う。
唇、ゆっくりと指で撫でて、形をなぞって。
肌蹴たシーツを、そうっと降ろしていく。
キレイに象られた筋肉、滑らかな肌。
指三本で、下唇を撫で下ろすと、僅かに捲れた。
キレイな歯並び…オレを食べるソレ。
ゾクゾクする。

頤の先、到達。ゆっくりと喉仏を通過させる。
胸筋の筋に沿って降ろす。掌、ゆっくりと表面を辿る。
は…あ。…どうしよう…?
胸がキュウキュウいってる…。
こくり、と息を呑んで、そうっと皮膚を味わう。

…オレの左側、ゾロの右胸のところ…僅かに色が違うところを発見。
…随分と、細かく縫い合わされたような痕。
上手く隠してるけど…ああ、これは。
「………」
そうっと指先で痕をなぞる。
呟き、音にならない。祈り、偉大なる霊に、ゾロを守るものに感謝をする。

オレにゾロを愛するチャンスをくれて、ありがとう。
そうっと口付ける。銃痕。
きっと痛かっただろう。そして、回復するのに時間がかかったのだろう。
けれど、…生きていてくれて、ありがとう。
アナタが諦めなかったから、オレはアナタに愛することを教えてもらえた。
「I love you」
心臓の上、口付けを落とす。
掌で銃痕を抑えた。その上から口付けをもう一つ。
「I love you so much」
泣きたくなるような、笑いたくなるような、むず痒いような気持ちで告げる。

…もどかしさ。
ゾロが…オレを全部食ってしまいたいと言った気持ち…解った気がする。
割れた腹筋に沿って手を這わせた。
その後を追って、口付けで辿っていく。
時折、啄んで。時折、舐め上げて。
 
…真ん中の窪み。
命を繋いでいた場所。口付ける。
…そういえば、ゾロの家族の話って、聞かないなぁ…?
…ゾロを形作ったDNAは、どんなのだったんだろう?
…先を残してあげられなくて、ゴメンナサイ。
だけど…オレだけでいい、って言ってくれた。
だから…みんな、全部、オレの。
残さず、全部食べるから…そうやって繋ぐから、それで許してね?

腰骨の方に唇をずらした。
あむ、と柔らかくしゃぶりつく。
そうっとさらにシーツを降ろしていく。
僅かにシーツを引っ掛けさせたものを、指先で辿る。

…ゾロは。
オレのを、とても美味しそうに食べるけど。
…オレ、まだ食べたことないや。
…オイシイのかなぁ?
…オイシイよねえ?
食べても…いいのかなぁ?
…食べてみても…いいのかなぁ?
…こういうのって、訊いたほうがいいのかなぁ?
…でも…どうなんだろうねぇ?

寝起きで血液が巡っているソレを、ゆっくりと握ってみた。
それは初めてじゃないけど…。
こくり、と喉が鳴った。
…食べてみたい。
どんな味がするのかなぁ?
ゾロは、オレのは甘いっていうけど…。
ゆっくりと腰骨から腹にかけて、啄んでいく。
そうっと毛を掌で押さえ込んでみた。
…なんか、…オイシソウ…。
…そういえば、まじまじと見るのは、初めてだ。
…いただきまーす。




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