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 「あ、ねえ。ゾロも見ないと。アナタ宛てになってる」
 へぇ?って。面白がってるカオになった、ゾロ。
 一緒にモニタを見る。
 件名、Dear My Brother's Beloved Darling。
 親愛なる弟の最愛の恋人へ。
 …うっはあ。セト、すっごい件名だなあ!!
 
 ダブルクリックでファイルを展開。
 モニタに合わせた最大のサイズでメールが開いた。
 そこには、オフの日、どこかのカフェで。着心地よさそうな服を纏ったセトが、目をキラキラさせて舌を突き出していた。
 そして真ん中、すこしぼやけてるのは……セトの中指!?
 斜め下、走り書き。
 …ペインタか何かで書いたのかな?殴り書きに近い書体で、メッセージ。
 『躾直すぞ、オトウト』
 
 ゾロが隣で笑い始めていた。
 ……なんだか、アニキ…柄悪い?
 「上品なプリンシパルだな……!!」
 「…アニキ、オトコマエだからなあ」
 くくく、と凄く楽しそうにゾロが笑ってる。
 「けど、オレ、アニキがこんな顔するの、初めて見た気がする…」
 …ああ、でも。
 3件隣の家に住んでる、プロスキーヤーのリチャードさんは。
 オレに会う度に、セトを見習っちゃダメだぞ、って笑って言ってたっけ。
 
 「―――ふぅん?好みのカオだな、女だったら。」
 ゾロが笑いを少し抑えて、そう言っていた。
 …そうなんだ?あ、けど。それだとどうなんだろう?
 「じゃあオレは…?」
 そうしたら、ゾロは。軽い口調で歌う様に、"Baby, you are my prettiest star,"だって言った。
 ベイビィ、キミがおれの一番キレイな星だよ、だってサ。
 …オレみたいな顔したオンナノコ、って意味で訊いたんだけど。
 …って…キレイ?キレイなの?…まぁ、いいけど。
 
 ふにゃ、と笑ったオレを、ゾロがぎゅう、と抱きしめた。
 そして、同時に鳴らされたベルに応えるために、廊下に歩いていく。
 視線をモニタに戻す。
 それにしても。
 「…セト。いったいこの写真、誰に撮って貰ったの?」
 誰だか知らないけれど、きっとセトのいい友達なんだろうな。
 セトのポーズはともかく、とてもキレイな写真だった。
 
 スクロールすると、オレにもメッセージがあった。
 『ベイビィ、噛み付いてやんな。オニイチャンが許可します』だって。
 あははははは!もう、セトってば。
 もうオレ噛み付いちゃってるよう、何度も。
 あとは、Love you,  Seth xxx、ってサインがあって。
 I love you too, my dear brother、そう心で応えてから、笑ってメールを閉じて、他のを開ける。
 
 ダンテ、明日はラムズの練習があるから、グラウンドに来れば12−5は確実にそこにいる、と。
 うんうん、ランチ後くらいにグラウンドに行けば会えるんだね?オッケイ。
 サンドラ、メインキャンパスのカフェかホールにいるから、探してね、だって。
 オッケイ。会えるといいね。
 
 メーラを閉じると同時に、ダイニングの方からかちゃかちゃとテーブルをセッティングしている音が微かに聞こえてきた。
 それが静かになって、ワゴンがカラカラと廊下を動く音。
 続いて、ドアが閉じられた音。
 ルームサーヴィスが来た音だね、あれは。
 セットアップが早いのは、いいことだ、ってマミィが前に言ってたっけ。
 
 プログラムを終了させていると、ゾロがドア口まで来ていた。
 「仕度が出来たらしいから、来い」
 「オーケイ」
 ちょいちょい、と手招きされて。ノートを閉じて、ゾロに向かって歩いていく。
 到達。
 
 「あ、ねえ、ゾロ?」
 捕まえて、ゾロの首に緩く手を回した。
 うん?って言って、ダイニングの方に促すゾロの首筋に、かぷん、と噛み付いた。
 「痛ェぞ」
 ゾロがそう言って、少し笑った。
 「あのね?セトがオレにメッセージくれたの」
 「あぁ、なんて…?」
 「"Give him a bite. I give you the permission."」
 
 項を撫で上げられて、うっとりとなる。
 セトからのメッセージを教えてから、噛み痕をぺろりと舐めた。
 「I'll bite you back later, darling」
 そう言いながら、さらさらと髪を撫でられた。
 そして、テーブルに着くよう、促される。
 ダーリン、後で噛み返してさしあげよう、って…そういう問題なのかなあ?
 くすくすと笑って、テーブルに着いた。
 ああ、なんか。元気出てきたぞう!
 
 
 
 
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