「でもホント。この後ヒナとポーラはどうするの?」
サンドラが笑いながら言っていた。
「あら。知り合いになれたんだし、どこか私たちだけででかけましょうよ」
ポーラがにっこりとして応えた。
「どうせだったら豪快にディナーも?」
「いいわねぇ」
「でもボク、この国だとまだお酒が飲めないんだ」
にこやかに同意したヒナに、タカフミが顔を顰める。
「日本だと飲めるのに、こっちじゃ飲めないなんてヘン」
「プティ、レストランには御姉さん達がいっしょだから入れるわ」
ちゃんと手を繋いどいてあげる、って言って、ヒナが笑っていた。
「ここで誰もアタシがマイナーだって疑わないところが、哀しいところだわね」
サンドラがけらけらと笑った。

「オトコマエだな」
にかり、とゾロが隣で笑った。
「えーえ。オトコノコよりオンナノコによりハイスクール・プロムのダンス申し込まれたわよ」
にぃ、とサンドラがヒラヒラ、と手をはためかせた。
「ボクはサンドラみたいな人がスキだよ」
にこお、とタカフミが笑っていた。
「アタシもタカフミみたいなオトコノコはスキよ」
なでなで、とタカフミの黒髪をサンドラが撫でた。
「「でも恋じゃないんだよねえ」」
と二人が申し合わせたように、笑った。
「それがジンセイだわ!」
ヒナが、手をソラへ伸ばして、けらけらと笑った。

「ねえ?サンジ。アナタはラッキーな頑張り屋サンね」
すい、とヒナの目線がオレに当てられた。柔らかな笑みでオレを見る。
「頑張り屋サンなのよ、まず」
ポーラが低めの声でさらりと言った。
「頑固なんだよ」
そうゾロが言って、オレの髪をくしゃん、と握った。
「…にゃあ」
なんて言葉にしていいのか解らなくて。
湧き上がるままに、笑みを浮べた。
「まぁ、幸せそう。さっきまでコネコちゃんだったのに」
さらり、と耳元を、ゾロの指先が撫でていった。手を離す瞬間に。
サンドラが苦笑気味に言うのが、少し遠くで聴こえた。
僅かなくすぐったさが、ずっと耳元に留まる。

「じゃあ、そろそろ退散させてもらう」
ゾロがとても穏やかに四人に告げた。
「うん。もう行った方がいいね」
そうタカフミが同意した。
「……そうね。これ以上、この場を狂喜の暴風域に巻き込まないうちにね」
サンドラの言葉に、はっとする。
見回すと、カフェの中。
ざわざわ、と僅かに賑やいでいたものの、緊張と…よくわからないキラキラの視線で埋まっていた。
…これは、セトと一緒に買物に行ってた時にもよく出会った目だ。
………ううん、これはなんなんだろう?

「じゃあ、また。会えて楽しかったよ」
そうゾロが言って、タカフミの髪をくしゃんと撫で。
サンドラ、ヒナ、ポーラの順に、頬にキスをしていった。
「今度は一緒に遊ぼうね、ジョーン」
タカフミが笑って言った。
「ナイト・クラビングとかね」
サンドラがウィンクしていた。
「あぁ、期待してる」
ゾロがにっこりとしていた。
「ダーリン!デンワしてね」
ヒナがゾロの首を捕まえて、さらんと唇にキスしていた。
「わかったよ、」
ゾロが苦笑気味で応える。
「標本になる前にまた来てね」
ポーラが、に、と笑っていた。
「うるせェ」
ゾロが、とす、とポーラの額を小突いていた。
笑った。

「じゃあ、サンジ。ホリディ明けたら、またよろしく」
「うん、タカフミも。今度パズル、一緒にやろうね」
パン、と手を打ち合わせた。
「サンジ、今度たっぷりと惚気を聞かせてね」
「あはは!!サンドラ、本当に聞きたいの?」
「ううん、そこは複雑なんだけど。まあ、幸せベイビィのお話は好きだしね」
ぎゅ、と抱き合って、頬にキス、キス。
「ちゃんと登校日に帰ってこないと、踏み倒すからね、代金」
バチン、とウィンクが飛んできた。
サンドラの、ジョーク。
「了解」
笑って身体を離した。

ポーラに向き合う。
「今度から、アーチーの所に寄ったら、オレにも声をかけてね?」
「そうね、もうトモダチだし」
に、と笑ったポーラに、じゃあ友達のハグ、と言って両腕を回した。
「これでやっと仔ネコを攫いに来たピュ―マと思われないわ、」
ポーラがにこりと笑って、ぎゅう、とハグを返してくれた。
「オレ、そんなに仔猫っぽいの?」
笑ってポーラの頬にも、キス、キス。
「ポーラはどっちかっていうと、ジャガーみたいだとボクは思う」
「同感」
タカフミの言葉に、サンドラが笑っているのが聴こえた。

「プレシャス!クイーンにキスは?」
ヒナの言葉に、黙れオマエは、ってゾロが言っていた。
笑ってポーラから離れて、ヒナをハグする。
「ステキなクィーンだね、ヒナ」
やっぱり頬に、キスを二つ。
「ウフフ。毎週末はヒナとデートよこれから」
「うわあ!」
「命令です、」
笑ってぎゅう、と抱きしめた腕に力を込めた。
にっこお、と笑って、ヒナがオレの唇にキスを落とした。
「返してあげる、」
そうっとヒナが囁いて。にこ、と笑った。
「ウン、ありがとう」
ヒナに、にこお、と笑いかける。
「ヒナと知り合えてよかった」
ホントに。ステキな人で、オレは嬉しいよ。
「ふふ。新学期にね」
きゅう、と抱きしめられた。
「ウン、また会おうね?」
「もちろん。ダーリンにいっしょにデンワしましょ」
けろ、とヒナが笑った。
「だぁめ」
「んもう、ケチ!」
笑ってヒナから離れた。
「うん。ケチみたい、オレ」
にひゃあ、って笑うと。

「あーあーあー、そこで原子爆弾並のインパクト値を持つ微笑みを垂れ流してないで。さっさと行きなよ、もう!!」
にこにこと笑うヒナの後ろから、シッシとサンドラがアッチイケ、の仕種をした。
「サンドラ、意味が解らないよ!」
とん、とゾロに肩を押されて促されて、みんなに手を振りながら笑った。
「サンジ、またね」
「ジョーンもな!」
ゾロがサングラスをかけ直して、みんなに、バイ、と手をひらんと振って、歩き出した。
「バイバイ。9月に会おうね」
そう言って、四人に手を振ってから、ゾロに並んで歩き出す。

ざわざわ、としたカフェの中を抜けて、夏の陽射しに眩しい屋外に出た。
く、とゾロが横で伸びをしていた。

笑って、こてん、とゾロの肩に額を一瞬だけ押し当てた。
「ねぇ、ゾロ?」
「ん、」
小さな声で囁く。
「大好き」

さらさら、って髪を撫でられた。
ふわふわ、と笑う。
「これから、デート、だよね?」
「そう。いつだったか、チビが言ったろう?オマエのことドレスアップさせてディナーに連れて行く、って」
「…ジョーン」
うん、そう言ってたね。
ゾロがオレを見て言った。口の端、笑みが刻まれていた。
「うん、楽しみにしてる」
ふにゃん、と笑った。
…オレは、本当にラッキーだ。
ジョーンとゾロに、愛して貰っている。

「一旦ボールダーに戻ってから、買い物だな?」
「ウン。おっけい」
ふわふわ、と止め処もなく笑みが零れていく。
「閑だったから、思いついた。さっさとチェックアウトも済ませちまおう」
「うん!」
嬉しい。楽しみだよう!
「Brown Palaceに部屋はもう取ってある。ドライヴついでにデンヴァ―まで戻ってからディナーだな」
「うわあお!リッチだね?」
ふふ、と笑った。
「セキュリティは、カネで買えるんだ」
「じゃあ、目一杯楽しめるね!!」
にゃあ!嬉しくて、走り出したい気分だ。

「あぁ、そういうこと。おれは、オマエをどう料理するかがタノシミだな」
くるり、とゾロに振向いて。
に、としているゾロに笑いかける。
「うん。期待してる」





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