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 Thursday, August 1
 ゴハンを食べて、眠って。
 朝が来て、朝食。
 ママ・リディがオートミールとフルーツサラダを持って上がってきてくれた。
 飲み物にはアップル・ジュース。
 「サンジさん、…まぁまぁ、お痩せになって」
 「ママ・リディ、泣いちゃだめだってば」
 トレイをひとまず脇に置いて。
 エプロンの端で目元を拭ったママ・リディにハグ。
 
 「ママ・リディのゴハン食べて、元気になるから」
 「ええ、ええ。それでこそわたしのサンジさんです」
 きゅう、って抱きしめられた。
 小さい頃、森で思うようにハントできず、敢え無く帰ってきたときのように。
 「お一人で食べられますか?」
 「ウン。大丈夫、ちゃんと食べるから」
 「わかりました」
 
 大きな身体がベッドルームから消えた。
 一人残される、懐かしい自分の部屋。
 ゆっくりとすりつぶすように噛みながら、時間をかけて平らげた。
 水分も、全部摂取して。
 トレイを大きなベッドの横に置いて、そのまま横になる。
 目を瞑っても、眠らない。
 胃が動き出しているのがわかった、正常に。
 エネルギー、染み渡っていく。
 
 一人で寝転がるなんて……久し振りだ。
 思えば、ゾロに愛してもらうようになってから、ずっとずっと、ゾロの腕の中にいた。
 ぴったりとくっついて眠って。
 
 寂しい。
 一人でいると、落ち着かない。
 これから、慣れなきゃいけないんだろうな、少しずつ。
 ゾロと再会できても…オレは大学があるし。
 ゾロだって、そうそう毎日オレと一緒にいれるわけないんだし。
 ああ、だけど。
 今はゾロの腕が恋しい。
 ゾロの首元に鼻先を埋めて、きゅう、って抱き込まれながら眠りたい。
 
 寂しい。
 なんでオレ、ゾロの側を離れたんだろう?
 なんでオレ、ずっとゾロにしがみついていなかったんだろう?
 …ドクタに診てもらってる間はともかく。
 悔しい。
 ゾロから引き離された。
 
 ゾロ。
 狙われてた。
 ずっとずっと、…ああ、だから。アリゾナのあの家になら、引き篭もっててもいい、ってことだったんだ。
 最初から、すぐに帰りたがっていたゾロ。
 ピーチ・スプリングスの駐車場で、公衆電話で電話していたゾロ。
 …オレとゾロの先が繋がったのは、多分あの場所だ。
 
 ゾロを、オレの側に置いておいてもいいっていったのに、今更引き離すなんてズルいね、ペルさん?
 もうダメだよ。
 オレは決めたんだから。
 ゾロ、愛するオレのゾロ。
 手放さない、頼まれたって。
 次に怪我しても、もう取り乱さないようにしなきゃ。
 オレがゾロの弱味にならないようにしなきゃ。
 
 …不思議と。
 ゾロを狙った殺意には、あまりショックを受けてない。
 そういえば、さんざんゾロが言ってたっけ。
 運命がゾロを捕まえに来る可能性があるって。
 
 だったら、なんでオレはこんなに取り乱したんだろうね?
 ゾロが死にかけたから…?
 それもある。
 ゾロへのキモチ、誰とも分かち合えなかったから?
 それもそうだね。
 だけど。
 オレとゾロ以外の意思が、オレたちを引き離そうとしたこと。
 ペルさんが、オレとゾロを引き離そうとしたこと。
 それが、とてもショックだった…のかもしれないね。
 
 そういえば、オレ。
 ゾロにバイバイ、ってキスもしてない。
 ますますダメじゃん。
 うん、ペルさん、間違えたネ。
 これじゃあ、うん、オレ、納得しないね。
 ペルさんの、ゾロを思う気持ち、よく解るけど。
 ゴメンネ、オレ、引き下がらないよ。
 
 うん、今になっても。ゾロへの愛ばっかり、湧いてくる。
 蓋をしたら、間欠泉みたいに、吹き上がってしまうかもしれないね。
 にゃはは。
 オレってば、何を迷ってたんだろう?
 こんなにゾロを愛してるのに。
 諦められるわけ、ないじゃんね。
 やってみるだけ、ムダじゃんね。
 
 うわ、なんだろう、どんどんムテキな気分。
 今なら、ゾロの仇だって食ってしまえそうなカンジ。
 フフフン、ゾロがいなかったら。
 変わりにオレがハントしちゃおっかな。
 
 怒り狂うだろうなぁ、エモノの横取り。
 怒ってるゾロも、かっこいいんだろうなあ。
 でも、やっぱり。
 笑ってる顔がスキ。
 眠ってる顔もスキだけど。
 …オレを抱いてくれてる時の、チョット苦しそうな顔もスキ。
 
 うーん、どうしよう?
 こんなにゾロをスキでどうしよう?
 早くゾロに会いたい。
 早くゾロに会いたい。会わなきゃ。
 会ってゾロに言わなきゃ。
 愛してる、って。
 ずっとゾロを愛してる、って。
 やっぱり、大切なメッセージだから。
 オレがゾロに言わなきゃね?
 
 うん。オナカ、少し落ち着いたね?
 じゃあ、最初は足のストレッチ。
 ゆっくりと、伸ばしていこう。
 筋肉、目覚めさせて。
 山を越えていくんだから、ちゃんと復活させとかないと。
 途中でヘバッたら、計画が水の泡。
 よぉし。ガンバルぞう!
 妨害工作なんかに負けてたまるか!!
 
 
 
 
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