Sunday, August 4 at Very Early Morning
レッドが、急かすように前を走っていた。
何度も振り返り、走れ走れ、と声をかけてくる。
今行くから待って、そう思いながら目を覚ました。

暖炉の前、ラグの上。
横には3世代目の仔犬、オークとチェスナッツがころんとお腹を出して寝ていた。
窓の外、広がる暗闇。
今、何時だろう?

「シンギン・キャット。目覚めたか?」
ジャックおじさんの声。
見上げると、手渡されたスープの入ったボウル。
「食べていきなさい」
ビーフシチュー。
くうう、とお腹が鳴った。
空腹、自覚するのは久し振りだ。
「イタダキマス」

パンと一緒に食べた。
すごく美味しかった。
内側から身体が温まる。
エネルギー、沸いてくる。
食べ終わって、空のプレートをキッチンに置いてから、差し出された服に着替えた。
厚手の長袖のシャツ。

「砂漠に戻るのだろう?惑わされぬようにな」
「…ハイ」
紙袋に入ったランチと、鍵を渡された。車、の。
どこまでも見通されている。
大好きなメディスンマン。
ぎゅう、と抱きついた。
ぽんぽん、とアタマを撫でられた。
両頬に口付けを送る。
僅かに目を細めて、おじさんが笑った。
「オマエに偉大なる霊の加護を」
「……ジャックおじさんにも」
「また会おう」
「必ず」

家の前に停めてあったチェロキーに乗り込んだ。
時刻、もうすぐ日付が変わるころ。
山の奥から、ティンバーと群れの声。
見送られる、オレの愛したヒトたちに。
暫くのお別れ。
だけど、いつでも感謝している、オレを愛してくれたことに。
オレを導いてくれたことに。
また会いにきます。
そうココロで呟いて。

車のアクセルを踏み込んで
ハイウェイに乗るルートに乗った。
スピードメータとにらめっこ。
オレの車じゃないから、捕まったらアウト。
タイムロスも困るし。
この時間、車の数は少ない。
だけど、タイムアタックをする車を狙って、隠れたところにパトカーがいるから。
チケットを切られるギリギリのスピードで飛ばす。

ここからアリゾナまで、14時間ほど。
逸る気持ちを無理矢理押さえつけて、夜のハイウェイを走る。
ゾロ……いま、どうしてるかなぁ…?





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