…ペルさん、手ごわそうだけど。…オレ、彼が嫌いじゃないし。
まぁ、なんとかなるでショ。
持久戦だってオオケイだ。
「あー、サンジ」
受け入れてくれないんだったら、諦めてくれるのを待つって手もあるネ。
オレは負けないもんね〜、って。
「んな?」
ハイ、ゾロ、ナンデショウ?

「ヤツの手口を一つ教えてやろう」
「ヤツってペルさん?」
「あぁ、そう」
ゾロがに、って笑ってた。
「うん、教えて!」
「オマエの親、そうだなまずハハオヤ辺り。完全に手前の味方につけるぞ」
「…うん。そうかも。マミィ、4日前に電話かかってきてた時。声だけでぽうってなってた少しだけ」
でもマミィはダディをイッパイ愛してるから。ダディさえオレの味方でいてくれれば乗り越えられるかな?
「気がついたらオマエの周り。ヤツの新派で一杯だろうぜ」

「…ねえねえ。サンドラがペルさんの声聞いたら。"タラシ〜ッ"って大笑いすると思わない?」
想像してみた。マミィぷらすママ・リディがペルさんのシンパになってる姿。…うう、アリエソウかも。
ゾロが、ハハッって笑い出してた。
…それって同意かなあ。うはは。
「否定の余地はないな、それ」
「…でもね?オレ、マミィに対するキリフダ持ってるから、平気だと思う」
"マミィがダディに恋してるように、オレも恋してるから止めてもムダだってわかるでショ?"
にっこりしてるゾロに笑いかける。

「他はどんな手でくるかなあ?」
ワクワク。さぁどうやってペルさんを攻略しようかなあ?
「自分で経験しろ。まぁ、5−6回も殺意が湧く頃には手も読めるだろ」
オレ、ペルさんの気持ち解ったから、まだ殺意覚えて無いけど。
…ゾロが言うくらいだから、相当手厳しそうダ。
ゾロがにっこり、ってキレイな笑みを浮べてた。
……ゾロってば。ばしばし殺意覚えてきたんだな、カレに。
「…っく〜!オレ、まじで!頑張っちゃう!!!」
なんだろう、ワクワク、ドキドキ。
「だな、オマエも諦めないんだろう?おれを」
「ウン!!モチロン!!諦めるワケないよ!!」
もうぜえったいソレは無い。
気温の上昇と共に、メラメラと湧いてくるファイト。
ムテキな気分。
握り拳でガッツだ!!

「ペルさん、オレに構ってくれるかなあ?」
それだけが心配だ。
「さあな?アレはアレで忙しい」
オレがコレだけヤル気満々なのに。相手にされなかったら哀しいもんなぁ。
「…ヒマな時に、遊んでもらおうっと」
す、とイジワルな笑みを浮べたゾロに、にひゃ、と笑いかける。
「ゾロ、見ててね。オレ、きっとペルさんを落としてみせるから!!」
「勝負にならねぇよ、」
「ヘコタレナイもん」
くくく、ってゾロが笑ってた。
…にゃは。オレ、アナタの笑ってる顔、大好き。

サイアがぶるっと頭を一度振った。
微かに聞こえ始める、水音。
あと2マイルほどかな。
ああ、木で遮られてるから、そんなにはないか。
賑やかに囀り始めた鳥たちの声が頭上から聴こえる。
森が目覚めに入っていた。
「…あともうちょっとで着くよ、ゾロ」

滝壷に落ちる水音。
木々を縫って聴こえてくる。
力強い、ワクワクするような音。
「音がする、」
「ウン」
サイアとファルも、水音に励まされるように、足を僅かに速めていた。
ゾロの眼差し、音のする方に向けられる。
面白そうだ、って顔に書いてある。
…よかった。

どんどんと近づく音。
「競争、」
「…負けないよう?」
すい、って前方を指差していたゾロに笑いかけた。
「オーケイ、勝負だな」
意味を理解したサイアが、ぶるる、って頭を僅かに振ってた。
武者震い。
に、ってゾロが笑った。
ファルが、ガッ、て後ろ足を一度鳴らした。
次の瞬間、ファルが飛び出していった。
「あ!ずるッ!!」
サイアにトンと踵で合図する。
「ハンデだ!」
サイアも待ってました、とばかりに走り出した。
「……うはははは!!」

高く生えた木の間を縫って。
川縁、草地に飛び出す。
目の前、水が煌いていた。
目に入る、キャニオンのトップから勢い良く滑り落ちてくる水。
跳ね上がってる水しぶきが風に乗ってここまで届く。

滝の真下は、深くて広めに水が広がっている。
そこから、ほぼ平らな大地の窪めに沿って、意外と狭い幅の川が流れていく。
キラキラと煌く水面。
岩のごつごつした向こう側は、森になっている。
ダッシュ、サイアがファルと並ぶ。
身体を低めて、空気抵抗を少なくして。
大きくなる水音。
真横だと、大声じゃないと声が聴こえなくなる。
空気に混じる甘い水。
ふわ、と感じる、エネルギー・フロゥ。
ここはもう、パワースポット内だ。




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