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 車で、目の前に立ちはだかるみたいに広がるグランド・キャニオンを目指して突っ走った。
 砂が背後で濛々と立ち上り。ザザザザザザと鳴る砂は、大雨が降ってるみたいで耳に心地よかった。
 途中から、整備された道路に入って。観光スポットになっている場所を通り抜けた。
 ホテルなどが整備されているエリアを抜けて、一般人が立ち入り禁止になっている場所まで車を進めた。
 そこで、リトル・ベアに頼んで手配しておいてもらった馬二頭に乗り換えて。
 馬の分の水と食料、それとランチが入ったバッグを背負って。
 険しい岩肌の間を縫う様に、コロラド川目指して、降りていった。
 時には何時間もかかってしか行けない場所にあるけれど。ヒミツの道路を使って、キャニオンの奥の方まで進んだから。
 12時半ごろに家を出たにも関わらず。3時には、コロラド川の側に、着いていた。
 
 馬に乗り換えて、本当は、山のトレッキングが出来るか心配だったけれど。リトル・ベアが手配してくれた馬は、最高の二頭で。
 西部劇みたいだねぇ、てジョーンが周りの景色の感想を述べられるくらいには、安定したライドを提供してくれた。
 コロラド川自体は、かなり流れが急で。リバーラフティングなどが盛んに行われるような場所だったから。
 実際には、コロラド川の本流からは外れた、流れが穏やかになっている場所を選んできた。
 そこは、トレッキングを楽しむ観光客は、オフリミットになっていて。ワラパイ族の人たちだけが、こっそり水浴びなどを
 楽しむポイントになっている。
 そこは、岩がなだらかになっている場所で。そこに行き着くまでは、随分とアップダウンの厳しい場所を通ってきたの
 だけれども。そこだけは、平らになっていて、水の流れも穏やかだ。
 
 最初に馬から下りて、水を飲ませてやり。
 それから、ジョーンと一緒に、馬にリンゴと人参を上げた。日陰に馬を繋いでおいて。
 ランチを食べる支度をしていると、ジョーンは馬の鼻面に額をくっつけて、なにかをいいながら笑っていた。
 多分、ありがとう、お疲れ様って、言っているのだろう。
 それから、軽くサンドウィッチを摘んで。
 お腹がパンパンにならない様に気を付けて、食事を終えてから、少し日陰で昼寝して。
 それから、まだまだ暑い太陽の下、冷たい水に飛び込んだ。
 水かさは、腹のちょっと上ぐらいまでしかないけれど、大きな岩がごろごろしていないので。
 比較的、泳ぎやすい場所ではあった。
 
 冷たいって、大喜びで泳ぐジョーンと、一緒になって川魚を探したり。キラキラ光る石を拾っては投げたりして。
 十分に水と戯れてから、陸に上がった。
 ここまで来るのに時間がかかっているから、もっと遊びたいというかと思ったけれど。
 帰りは岩山を登らなければいけないし。あまり遅くなると、馬が不安がるので。
 まだまだ泳げるな、というぐらいの体力を残して、帰途に着いた。
 
 車をパーキングさせてもらった場所には、5時半ぐらいに帰り着いて。
 馬に十分お礼を言ってから、待っていてくれた馬の飼主に二頭を返した。
 車で帰る途中、残りのサンドウィッチを摘んで、夕飯までのつなぎにして。
 日が傾き始めた砂漠をガンガンに飛ばして、家に帰り着いた。
 帰る途中、晩御飯が何がいいか訊いて。一番得意なの、なんて答えが返ってきたから。
 何にしようか、思いっきり迷ってしまった。
 
 それじゃあ、昨日はシーフードだったから、今日は肉がいいかなって考えて。
 チキンライスとビーンズのスープを作ることにした。
 「オムライスのほうがイイ?」
 「ん?どっちが自信あるの?」
 にぃって笑ったジョーンに。
 「どっちも美味しく作れる自信はあるよう。けど、オムライスの方が、もう一手間加わるネ」
 「じゃあ、そっち。」
 「了解」
 「よきに計らえ。」
 にーっこりと笑ったジョーンに、ぷくくって笑い返して。
 更にあはははは、って笑い出したジョーンに、はぎゅう、って抱きついてみた。
 「うわ!前みないと」
 「ダイジョウブ」
 慌てたジョーンに、してやったり、って笑って。
 それから、オムライスにする卵を泡立てるのに専念した。
 頬にキスがチョンと音を立ててされた。
 
 思い通りに出来上がった料理。食卓に並べて。
 午後の遠足の感想を話し合いながら、晩御飯を食べた。
 その後、残っていたサクランボを抱えて、ポーチに出て。
 種の飛ばしあいをしようかと考えたけれど、暗すぎて距離が測れないと諦めた。
 その代わり、落ちてきそうに煌く星を見ながら、デザートを終えて。
 変わりばんこにシャワーを浴びて、さっぱりし終えた。
 
 
 
 
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