口付けを深くしたまま、くたりと弛緩した身体を抱き寄せた。
熱を帯び始めていた肌を掌に感じながら。
「ヘタクソ」とからかう程度に拙い口付け方に、変わらず笑い出したくなるような、抱きしめたくなるような衝動が掠める。
片足、回させるようにしながら半身を引き起こさせた。
首の後ろに回された腕はそれでも外されることはなく。
自分が何を言ったのかこのバカネコは半分も理解していないのじゃないか、とふと思った。
わらった。
膝上に引き上げるようにし、口付けをゆっくりと解く。
まあ、いまさら思い付きを取りやめにする気など、ゼロだけどな。
「―――サンジ、」
腰の線を手で辿りながら名前を呼ぶ。
「んな?」
「リネン、そこにあるの取れ」
「…なう」
蕩けた声に笑いを抑える。
手だけを動かして背後にあるソレを取っていた。
あぁ、だから。変なところ、雑なネコだなオマエ。
「横着ネコ、」
なにを?とでも言いた気に目をあげたサンジの、なだらかな線を描くヒップラインを手で軽く押しつぶす。
「ふあ、」
熱を持った吐息が頬を掠めていった。
「持ってろよ、それ」
「ん、」
こくん、と頷いていた。
ああ。着替え。―――いるな。
片腕を伸ばし、脱ぎちらかしたモノを手繰り寄せる。
「これも、」
サンジに持たせ。鎖骨に歯を立てた。
「んあ、」
ふにゃり、と笑っていた。
その笑みをみつめたまま、抱き上げてティピの外へと出れば、一層滝音が近かった。
ゾロの首にしがみ付いたまま、なんだか服とかいっぱい、抱え込んだ。
そのまま、ふい、と幕が捲られて。
「…まぶしーよう」
当に上がった太陽が、真っ青な空にぽかん、って浮かんでた。
「目、瞑ってろ」
「あう」
笑いを含んだゾロに言われるがまま、目を瞑って、ゾロの首元に顔を埋めた。
素肌に当たる風は、温かく。
熱を含んだ大気が、気持ちよかった。
「…んん」
なんでだろ、ふわふわが収まんないよう。
はふん、って息を吐いた。
水音、近づいてくる。
遠く、鳥が囀る声。
そのまんまの音が、そのまんま頭に入り込んでイメージを残していく。
「どこに―――あぁ、あれか」
ゾロの声、やわらかい。
そのことに何よりも嬉しくなる。
ゾロがすたすた、歩いている。
オレはコアラみたいに、素直に抱きついたままだ。
「一瞬立て。できるか…?」
「んにゃ…立つの?…ちょっとまって」
水辺の、岩の側、降ろされそうになったから、先に持っていた荷物を乾いたトコロに放り投げた。
それから、するん、とゾロから降りる。
ふにゃんふにゃんだにゃあ、って思ってたんだけど。身体は結構平気みたいで。
オレは熱くなり始めた岩肌の温度を感じていた。
ゾロがリネンだけ拾い上げて。それを岩の上に広げた。
すい、と手を取られて、その上に座らされる。
「…くうき、おいしーね」
ふい、とゾロを見上げた。
ゾロ、見慣れた青を穿いてた。
…でにむ?…いつ穿いたのかにゃあ?
す、と視線を降ろした。
オレの肌は、焼けた肌色だ。
…にゃ?
「オマエの方が美味い」
とん、と頤を上げられて、すい、とゾロの唇が掠めていった。
「…うみゃい?…みゃあん」
ふにゃあ、ってまた笑いが込み上げていった。
んーなんだろ、このふわふわ感…?
ちゃぽん、って水音がした。
ゾロが屈んで、何かを濡らしていた。…クロス?
とぽぽ、って音がして、ゾロがそのクロスを緩く絞ったみたいだ。
たぽん、たぽん、と音がするソレ、胸のところまで上げられた。
「…うにゃっ、」
ぽた、っと冷たい雫が胸の辺りに垂れて、ひくん、と身体が跳ねた。
その後を、熱くて柔らかいゾロの舌が追いかけていった。
ぶる、と身体が粟立つ。
水が垂れ落ちるクロスが少し動いて。肩口から胸まで、濡らされながら下りてくる。
「ふあ…、」
冷たい水、熱い身体の表面を突き抜けて、しみこんでくるみたいだ。
温度差を理解しようと頭が回りかけた時、ゾロの舌が口の中に滑り込んできた。
「ふ、ぅ、」
てろり、と舌を合わせて、啄むように唇を動かす。
く、と舌を絡み取られ、それが柔らかく吸い上げられる。
甘噛みされて、ぞく、と熱が身体の中心を走った。
決して遠のいていなかった快楽が、あちこちで身体に火を付けて回る。
一瞬冷えた肌は、直ぐに熱を取り戻して、中の奥の方だけ、冷たかった感覚の鋭さだけを覚えてる。
上顎、舌先でなぞられて、くう、と自然に仰け反る。
肩から腕にかけて、冷たい布で拭われて、クウ、と喉を鳴らした。
する、とゾロの舌が抜けていって。開きっぱなしの顎から反った首元まで、てろり、と舐めていったのを感じる。
「ふ、うン…ッ」
ふわ、と身体から抜けそうになる力。
それとは別のものが、背中をピンと立たせる。
かり、と時折歯を立てられて、ぐう、と背中が反る。
リネンをぎゅう、と握ると。ゾロがす、と身体を落としていって、ぺろっとお腹のところを舐められた。
「ん、んンッ、」
きゅ、と随分と温まったクロスが、脇腹から腰あたりまで辿っていった。
濡れた肌、乾いた空気に当てられて。
すう、とそこだけ一瞬、涼しくなる。
する、と辿り落ちる雫の跡をいくつも作りながら、ゾロが何度も身体の表面を濡れたクロスで拭っていく感触に、肌を粟立たせた。
ゾロが、それとは別に、身体の色々なところに歯を立てたり、舐めたり。
時には臍に舌を差し入れたりしながら、どうやら遊んでいるみたいだった。
その度に、勝手に嬌声が口から零れ落ちていって。
オレはふにゃんふにゃんに笑ったまま、ゾロがくれる感触をあじわうのだった。
「まだ、陽に焼けたままだな、」
カリ、と鎖骨を噛まれて、はあ、と息を吐いた。
くにゃん、と身体から力が抜けて、後ろに落ちてしまいそうになる。
「縋っておけよ、ちゃんと」
く、と足を開かれて。す、とゾロの身体が間に入ってきた。
笑ってるゾロの声に、目を開けてみる。
「まだ、眩しいか?」
相変わらず、くぐもったフィルタはかかっていたけど。
「…きらきらしてる…」
優しい目に、うっとりと笑った。
腕を伸ばして、片手をゾロの首にかけた。
ゾロはふ、と笑って。腿にちゅ、と口付けていった。
「んあっ…」
膝のあたりまで、濡れたクロスが内腿を撫で下ろしていって、びく、と身体が跳ねた。
反対にキスは外側を遡って、足の付け根辺りまで上がってきた。
熱いカラダ、冷たく濡れたクロス、熱い舌先、冷たく冷える肌。
膝下から踵まで、何度も水で濡らされて。
肌が濡れいく感覚に、何度もカラダが快楽に跳ねる。
「あ、ああ、は、ぁん…っ、」
に、ってゾロがオレを見上げて笑っていた。
そしてそのまま、赤い舌が伸ばされて。
ひくん、と揺れてる、垂れた雫に濡れた中心を、舐めていった。
「ん、ふゥン…ッ」
ぎり、とゾロの背中に爪を立てる。
唇が、じんわりと周りを食んでいった。
「ふ、くゥンっ、」
背中を着けない不安定さに、カラダが跳ねては揺れる。
びちゃ、と濡れたクロスが、反対の足を濡らした。
びく、と感じた瞬間に体全部が跳ねた。
ちゅる、と音が聴こえて。零れてる蜜、吸われて舐め取られてるのを感じる。
「ん、うン、っ、」
く、と腿に添えられてた指先に、力が込められたのを感じ取る。
「んあっ、」
クラクラとする頭、快楽に溺れ始める。
グラ、と身体全体が後ろに倒れそうになって、反射的に上体を起こした。
「は、ぁうっ、」
キラキラと眩しい世界、閉じた瞼の向こうに広がる。
滝壷に落ちる水音、身体に響いてくるように満ちる。
それでも、身体全体で感じるのは、ゾロのこと。
ゾロ以外のこと、ゾロがくれる快楽以外のもの。全部、素通りしていく。
くう、と片足、岩にかけさせられた。
引き上げられて、身体がぐら、と揺れる。
「ぞぉろ…っ」
はふん、と息を吐き出して、ゾロの名前を口にする。
半分笑った声が、「ナンだよ?」って言った。
そして、くう、と足の付け根に、鋭い牙が潜り込んできたのを感じて、びくり、と。また跳ねた。
優しく穿たれたソレに、呼び起こされた快楽が電流みたいに走っていって。
「くゥンっ、」
きゅう、って身体中が反応した。
「…きもちいいよう、」
多分、言葉、形作れてたと思う。自信、ないけど。
そうっと瞼、開いた。
揺れる視界の向こう。水飛沫に濡れたゾロが、きらきらしていた。
うっとりと、笑みを浮べた。
「ぞ、ろは…キモチイイ…?」
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