水さえも温むかと錯覚する。
腕に抱いたものに。奪い取る吐息に。分け合う熱と情動に。

息を飲む音が耳もとで聞こえた。
肩に縋がる指がきつくツメを立てた。
どこまでも熱の塗りこめられた吐息だけが切れ切れに耳に届く。自分の鼓動と。
水の中、達したサンジの腿が滑り跳ねた様に魚を思い出した。

耳に、滝音が戻り。
開かれ受け入れられている奥に注ぎ込む。撓る背を抱きしめ。
短い声を聞いた。
「うんんっ、」

短い、けれど。
悦楽の最中で掠れ細くなったソレに。ざわり、と聴覚が悦ぶ。
表面が冷え切り、ふつりと滾る熱が肌の一枚下に隠されている。腕を回し抱きしめ、静かに身体を浮かせた。
水面が揺れる。

預けられた身体を腕で支えてみた。
埋めていた自身をゆっくりと熱から引き剥がすにつれ、水の冷たさが戻ってくるのに、少しばかりわらった。
腕に、縋られる。指の震え。
「すこし、我慢しろ」
「ン…、」
くったりと俯いている耳もとに声を落とす。

意識が、境目にある声が返された。
全部、手放していた方がラクなんじゃないか、と一瞬掠めたがショウガナイ。
拓かれていた場所に触れれば、サンジの身体がそれでもわずかにきくりと揺れ。
頬骨の上辺りに唇で触れた。
締め付けられるのと同じに、僅かに零れ出てくるものが水の中に紛れていく。
唇で食むようにし、奥まで潜り込ませた。
「んん…っ、」
あまさと、含羞。
溶け合わされた声に、ふとアイジョウを意識する。
ゆっくりと頬に口付けながら、閉じきらない場所をひろげさせ熱の名残りを拭いとった。

水から上がり、身体を乾かし。
午後の陽射しに苦笑する。
「ほら、上くらい自分で着ろ」
Tシャツを頭に被せて、金色を手で掻き混ぜた。
「ン…、」
ほやり、と目を合わせられる。
見るに耐えない遅さだ、それじゃあ。

「―――わかったよ」
雑にコットンを引き下ろし。
「ほら、腕」
「…は、い」
ばさり、と薄手のシャツを拡げ、腕を通させる。
重そうな四肢の動きだ。
ボタンを一つだけおざなりに留めている、……らしい。

「―――あぁあ、もう」
貸せ、と手を払い除け。
半ばまで留めていく。
バカネコは、ふにゃけて笑い顔だ。
「ブラシはどこだよ、ついでにブラッシングでもしてやろうか」
「いい…それより…ねむ…ぃ」
ボタンを留め終え、サンジの頤を指先で弾いた。
「ジョウダンだ、」

きゅう、と抱きついてきた身体を引き上げる。
木陰までいってもう寝ちまおう。
なんだか、みょうに。
――――疲れた。




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