魔女の寄越したクスリは。即効性があり過ぎる分、厄介だ。
身体の方が先にネを上げる。普段ならばやり過ごせる程度の催眠効果でも、元々が身体が本調子などではないから
クスリなんぞ飲むのだから。
テキメン過ぎる。
勝手に上がりそうな熱を見越して、タブレットを飲み込んだなら、あっさりその後の意識が無い。
戻ってきていたサンジが、おれの首元にカオを埋めて。微かな寝息を立てていた。

目を覚ましたなら、薄い革を通して外の明るさが感じ取れた。
熱はあれからあがる事は無かったらしい。
肌にあたる金色に顔を埋めてみる。
―――起きねェな。

それでも、ちいさく微笑を浮かべた気配がした。
それに、今は例外的におれは『安眠枕』 にされてはいなかった。
フウン?珍しいこともあるもんだな?

お互いに、キリが無い、ってのも。
「―――ま、しょうがねェか…?」
小さく口に出してから、半ば苦笑した。
そして、陽がジュウブン上がりすぎていることも思い出した。

サンジ、と。名前を呼んだ。
「…ぞぉ…ろ、」
何の疑いも持たない笑みを浮かべているのを目にする。
半ばどころか、まだ相当眠りに片足を突っ込んでいるのが如実。
そんな様子に勝手に笑いが零れた。
「眼が覚めた。オマエは?」
まだ眠るのか、と続ける。髪に唇を落とした。
「ん…?んー…おきる、」

ゆっくりと覚醒し、ぱか、と音がしそうな勢いで蒼が覗いたが。まだ物柔らかな笑みが浮かんでいた。
そして、囁きが伸ばされた両腕と一緒に意識に入り込んできた。
「kiss me,」
やわらかに、音節がすべて甘く彩られているソレに。また笑みが浮かぶ。
その形を刻んだままで、口付けた。

頬をかるく撫でるようにすれば、いっそう柔らかく啄ばんでくるのに今度こそ笑い声が抑えきれずに洩れた。
「とんでもねェな、オマエ?」
「どして…?」
ふんわりとわらってくる蒼を覗き込む。
「おれがあまやかしちまったのか、元からがアマッタレだったのか、微妙なところだな」
「んー…」
クスクスと機嫌の良い笑いで返される。
「あまくておいしいなら、どっちでもいいよ、」
「―――確かに」

最後に一度、僅かに強く唇を重ねてから身体を浮かせた。
「また性懲りもなく抱く前におれは起きる」
「ン」
クスクスと嬉しそうな笑い声を背に。
起き上がってから適当に着替えを掴んでティピを出た。
とうに昼を過ぎたらしい太陽の位置だ。

――――よく寝た。
寝覚めも、非常にヨロシイよな。




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