| 
 
 
 
 天国というものを垣間見れるようになって。
 それが眠りと連結するようになって。
 けれど。
 目覚めた瞬間、ダイスキなゾロがオレのことを抱えてくれてて。
 しかも、笑っててくれると。
 そここそが、天国じゃないか、って思う。
 
 ゾロが、強めのキスを置土産に、ティピから出て行っても尚。オレはくすくすと笑ったまま、ラグに懐いたままでいた。
 しっかりと眠ったから、体力は随分と回復していた。
 
 「…幸せ」
 すりすり、とラグにまで頬擦りして、とっくに覚えた違和感を思い出す。
 んー…いっぱい愛してもらっちゃったね、オレ。
 にゃはは、と笑いながら、放置してあるバッグに手を伸ばす。
 カラカラ、と中を掻き混ぜて、取り出すのは平らなケースに入った塗り薬。
 ほんとうは、眠る前にしたほうがいいんだけどねえ。
 「そこまで体力、あるわけないしね」
 めいっぱい愛されたいから、体力の限界まで求めたくなる。
 だから、これは目覚めてからするルティーンだ。
 
 「少し辛い時には使いなさい」
 そう言って手渡してくれた兄弟子。
 ううん……感謝デス。
 シーヴァを使ったときは、あの液体自体にイロイロと効能があるからいいんだけど。
 最後、…思いっきり、しちゃったし。
 後で痛い目会うのはヤだしね。
 やっとかないと。
 
 いつも、これをする時はドキドキする。
 なんでだろう、…ああ、わかった。
 いっぱい愛されちゃったってことが、ぶわあ、と感慨として溢れちゃうからだ。
 また次も、いっぱい愛されたいって思うから、…はやく静めたいって思うわけだし。
 
 するする、と穿いていたスウェットを脱いだ。
 下着も一緒に、脱ぎ捨てて。
 ぱか、と小気味良い音を立てて、小さな平らな缶を開ける。
 象牙色の、軟膏。少し薔薇の匂いがする。
 そうっと右の人指し指で表面を撫でて、掬い取り。
 は、と一つ息を吐いてから、そうっと押し当てた。
 「…つめた、」
 
 左手で開いて、右の指を少し押し入れて。
 くぅ、と勝手に閉まろうとするのに笑って、薬を塗り拡げていく。
 ゾロにされてたら…ぞくぞくがとまんないだろうに。
 「…はー…腕、ちょっと辛い…」
 自分でやる分には、不自然な体位に、溜め息が出るくらいだ。
 
 ゆっくりと温度で溶けて、馴染んでいくのを指先が感じ取る。
 襞の外と中の境目に多めに擂り込んでから、ゆっくりと指を引き抜いた。
 「…四足のケモノだったら楽だったのかな?」
 ううううん……さすがに想像するのはヤだなあ。
 
 ヒトでよかった、と素直に思える瞬間。
 オス同士でも、ゾロと愛し合える。
 心でも、身体でも。
 「…にゃは」
 んーキモチヨカッタネ。
 ゾロとするのは、とてもスキ。
 後が大変でも、ちっとも気にならないくらい。
 「幸せだよう…」
 こっそりと呟いて、噛み締めてみる。
 
 指先を、小さなタオルで拭いてから、ついでに着替えようと立ち上がる。
 下着を穿いて、デニムを穿いて。
 寝巻き代わりに着ていたTシャツは、洗濯しておいたものと取り替えて。
 
 「よし!朝ごはんだ!」
 そう半ば自分に言いながら、ティピから足を踏み出した。
 「…昼だねえ」
 真上よりずれた太陽が、キラキラと輝いていた。
 ゾロ、食べれるかな?食べれるよね、多分。
 オナカ、空いてるかなあ…?
 
 
 
 
 next
 back
 
 
 |