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 とん、と柔らかな口付けを返されて、またふわ、と体温が上がった。
 目を閉じる。
 「思い返したら眠れないくらい、熱くなっちまえ、」
 耳元、囁きが落とされた。
 「ウン、」
 ぎゅう、とゾロに抱きついた。
 
 耳の少し下の所に、鼻先を埋める。
 「もっと、溶かして」
 少し丸まった骨のところを舌先で舐めた。
 「もっと、ゾロで、オレを埋めて、」
 声は囁きにしかならない。
 「そしたら、」
 そうしたら。
 オレは時間をかけて、ゾロがくれたものを飲み込んで。
 全部それをオレのものにしていくから。
 細胞の一つ一つに、染み渡らせて。
 
 きゅう、ときつく抱きしめられた。
 熱くなった身体を少しずらして、離れていた身体をもっと密着させる。
 ゾロが一瞬目を閉じて、ゆっくり息を吐いた。
 「あいしているよ、」
 少し身体を離されて、グリーンアイズがオレの視線を絡め取った。
 囁き声、甘くやさしいソレ、空気をそっと震わせて伝わってきた。
 笑って、手でゾロの頬を撫でた。
 「オレも、愛してるよ、ゾロ、アナタだけ」
 アナタだけに、オレの全部をあげる。何度でも。
 「際限が、無いね」
 ゾロがゆっくりと目許で笑った。
 「良い傾向だな、」
 軽い口調、けれどどこまでも甘い声に、笑った。
 
 「サンジ、」
 「なぁに、ゾロ?」
 さら、と頬を撫でるゾロの手の感触に、一瞬目を伏せる。
 それからまた、ゾロの眼に視線を合わせた。
 「オマエ、野生児なだけに」
 「…ん?」
 くう、とゾロの口の端が吊り上がったのが見えた。
 …なんだろう?
 「ベッドより外での方が素直っていうのも、考え物だぞ?」
 そうゾロのからかうような声が聴こえてきた。
 「…んん、そうなのかな?」
 外にいた方が、素直、なのかな?
 「身体が」
 に、って笑ったゾロの胸の上に、ごちん、とオデコを当てた。
 「あぁ、訂正。身体も、か」
 「…うわあ!」
 
 きゅう、ってゾロにまた抱きしめられた。
 ゾロが笑い出す振動が、身体を伝ってきて。
 低い笑い声が、空気を揺らした。
 ぎゅう、ってまたゾロにしがみ付いて、オレも笑った。
 そっか、オレ外の方が素直なのかな?
 どうだろう、あ、でも。
 それは聖域だから、かもしれない。
 まるで巣穴にいるような安心感。
 んん、そっか。素直か。
 だったら…。
 
 ひとしきり笑い終えてから、そっと身体をゾロから離した。
 寝そべるゾロを見下ろすようにして、ゆっくりとTシャツの裾に手をかけた。
 オモシロソウ、って顔をしているゾロに笑いかけた。
 「ゾロ、」
 す、と眉を引き上げた。返事の代わりかな?
 「じゃあ、ゾロは。オレが多分、もっとも素に近い今のオレを、覚えてて」
 Tシャツを、するん、と脱ぎ去った。
 少し遠くに放る。
 デニムのボタンに手をかけて、フライボタンを全部外した。
 硬い生地から、膝半立ちのまま、抜け出す。
 下着、下着を脱ぐのって、なんだか微妙な気分だなあ。
 そんなことを思いながら、やっぱりストンと落として脱いだ。
 シャツと同じところにデニムと一緒に放る。
 
 ゾロの身体を跨いで、片手を取った。
 指先に口付けてから、そうっと舌を伸ばした。
 二本ばかり、口に含んでから、ちゅく、と音を立てて抜き出す。
 その手を、自分の心臓の上に置いた。
 上から両手を重ねて、ゾロを見下ろす。
 「"オレ"を全部、アナタにあげる」
 といっても、もう全部アナタのだけど。
 
 「今ゾロの眼の前にある総てが、多分"オレ"の全部だよ、ゾロ」
 全部、アナタのだから。余すところなく食べていってね。
 す、とゾロの眼が、強い光を弾いた。
 「なあ……?」
 「うん?」
 ふ、とゾロの表情が、いつものからかうような、面白がるようなものに戻っていった。
 「サンジ、」
 「なぁに?」
 僅かに首を傾けたゾロに、同じ方向に首を傾げてみた。
 「オマエな……?」
 「うん?」
 「服着てる方がソソラレル」
 「……………あれま」
 
 あはは!と笑い始めたゾロに、ううむ、と唸ってみた。
 うううん、そうなのかな?
 ううううううん、じゃあえっとどうしよう?
 「あまりに自然だ、ソレ。おまえさ、ああ、こうしよう」
 「うにゃ?」
 ゲラゲラ笑い出したゾロを、じ、っと上から見下ろす。
 ぱちくり。
 ううん、笑わせるはずじゃなかったんだけどにゃー。
 「家にいる時は、裸でいろよ。で、おれが帰ってきたらまた服着せてから脱がすから」
 「…は?」
 
 はは!ってまだ笑っているゾロの提案を、一瞬考える。
 家でずっと裸?
 それはいままでにチャレンジしたことない事柄だにゃあ。
 「オマエ、マジで野生児だったんだな」
 笑顔全開のゾロの腹に乗っかったまま、うーん、と唸る。
 「………服、そのうち着るのが面倒になりそうな予感がするなあ、その生活だと」
 それってヒトとしてはヤバいよねえ?
 「ダメだね、言っただろ。おれは脱がす方が好きなんだよ」
 
 「んー…じゃもう一回着ようか?」
 する、とウェストに熱い掌の感触。
 「バカ言え、」
 「にゃ?」
 とん、と引き寄せられて、ゾロの胸の上に上体を倒した。
 「食わせてもらう、余す所なく」
 
 
 
 
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